ウイスキーの種類を徹底解説!原料や熟成樽で変わる呼び名と味わい

ウイスキーの種類を徹底解説!原料や熟成樽で変わる呼び名と味わい
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ウイスキーは種類が豊富なお酒。分け方が多く、初心者にはちょっと難しく感じることも。この記事では「原料」「熟成樽」「ブレンド」「産地」などによって変わる呼び名や特徴について、わかりやすく解説します。

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そもそもウイスキーとは?

そもそもウイスキーとは?

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ウイスキーの細かい定義は国によって異なりますが、一般的には以下の3つの条件を満たすことで「ウイスキー」と名乗ることができます。

◇ 原料に大麦やライ麦、トウモロコシといった穀類を使っていること
◇ 糖化、発酵、蒸溜を行って造った「蒸溜酒」であること
◇ 木製の樽に貯蔵して、熟成させていること

ウイスキーは蒸溜して造られる、アルコール度数の高いお酒です。もろみを加熱してエタノールを蒸発させ、その蒸気を冷やして液体に戻すという蒸溜を行うと、濃縮されたアルコール分が得られます。そのため、多くの場合、瓶詰め前に加水してアルコール度数は調整されているものの、市販のウイスキーの平均的なアルコール度数は40度前後と高くなっています。

なお、ウイスキーのほか、ブランデー、焼酎、ウォッカ、ジン、ラム、テキーラなども蒸溜酒に分類されます。

ウイスキーの香りや味わいに影響を与える5つの要素とは

ウイスキーの香りや味わいに影響を与える5つの要素とは

たのしいお酒.jp編集部

ウイスキーの香りや味わいに影響を与えるおもな要素は、水、原料、ピート、蒸溜、樽熟成の5つです。それぞれどのような作用をもたらすのか、確認しましょう。

ウイスキー造りに使われる水のことを「仕込み水」といいます。仕込み水は、ウイスキーの味わいに大きく影響を与える要素。ミネラルがバランスよく含まれている水で仕込むと、酵母の働きが活発になるといわれています。
また硬水や軟水といった水質によっても個性が変わってきます。そのため、蒸溜所を新設する際には、理想的な水源(取水地)を探すことからスタートすることが多いようです。

原料

原料の種類や質、収穫地などもウイスキーの個性に関係する要素です。モルトウイスキーは大麦を発芽させた大麦麦芽(モルト)、グレーンウイスキーやバーボンは、トウモロコシや小麦、大麦、ライ麦などを原料に造られます。
同じ種類のウイスキーでも、使用する原料が異なれば香りや味わいは違ってきます。

ピート

ピートとは、モルトウイスキーの原料であるモルト造りの工程で、大麦麦芽を乾燥させるのに使われる泥炭のこと。ピートの産地や使用量、焚き込む時間などによって、ウイスキーに付与されるピート香が変わってきます。
大麦麦芽を乾燥させるのに使う燃料はピートだけには限りませんし、ピートをまったく使わない場合もあります。ただ、ピートが身近だったスコットランドと、スコッチウイスキーに源流をもつジャパニーズウイスキーはピートを使うのが一般的です。

蒸溜

蒸溜機の種類や形状によっても味わいは違ってきます。
一般に、単式蒸溜機(ポットスチル)で蒸溜すると原料の風味が色濃く残る複雑な味わいに、連続式蒸溜機で蒸溜するとライトでクリアな味わいになりやすいといわれています。

熟成樽(カスク)

ウイスキーは熟成樽に貯蔵して、長期熟成させることで完成に近づきます。熟成させている間にウイスキーが琥珀色に色づくとともに、樽由来の風味が付与されるため、熟成樽選びはウイスキー造りのなかでもとくに重要な要素といえます。
樽の材質や、樽の内側の焦がし具合、もともと詰められていたお酒の種類などにこだわることで、多彩なウイスキーが生み出されています。

「ウイスキーの種類」といっても、その分け方はさまざま

ウイスキーの種類は、原料はもちろん、ブレンドや産地など、切り口によって分け方はさまざまです。ここでは、ウイスキーの「原料」「熟成樽(カスク)」「ブレンド」「産地」それぞれの切り口による呼び名の違いや特徴を、詳しく説明していきます。

原料によって違うウイスキーの呼び名と味わいの特徴

原料によって違うウイスキーの呼び名と味わいの特徴

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まずは、原料によって違うウイスキーの呼び名と、それぞれの特徴を見ていきましょう。

モルトウイスキー

モルトウイスキーは、国によって定義が異なりますが、一般的には大麦麦芽(モルト)を原料に、単式蒸溜機を用いて造られます。

世界5大ウイスキーでいうと、スコッチウイスキーやアイリッシュウイスキー、ジャパニーズウイスキーでのモルトウイスキーはモルト100%で造る必要がありますが、アメリカンウイスキーでは原料の51%以上にモルトが使われていればモルトウイスキーとなります。またカナディアンウイスキーには、モルトウイスキーという定義はありません。

グレーンウイスキー

グレーンウイスキーは、トウモロコシやライ麦、小麦などの穀類を主原料に、糖化酵素として大麦麦芽を加え、連続式蒸溜機で蒸溜して造られます。

グレーンウイスキーは軽やかでクセの少ない、穏やかなウイスキーになる場合が多いので、「サイレント(寡黙な)スピリッツ」とも呼ばれます。これに対して個性の強いモルトウイスキーは、「ラウド(声高な)スピリッツ」と呼ばれています。

ブレンデッドウイスキー:モルトウイスキーとグレーンウイスキーを組み合わせるウイスキー

モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドしたものが、ブレンデッドウイスキーです。原料は、大麦麦芽のほか、トウモロコシやライ麦、小麦などの穀類となります。

製法は、複数の蒸溜所のモルトウイスキーをブレンドしたところへ、グレーンウイスキーを加えて造るのが一般的。熟練のブレンダーが、豊富な経験と知識をもとに卓越した技術を集結して造るため、属人的な面があるウイスキーともいえます。

ライウイスキー

ライウイスキーはライ麦を原料としたウイスキーで、おもにアメリカやカナダで造られています。いずれの国でも、原料の51%以上がライ麦であることと定義されていますが、製法にはそれぞれ別の規定が設けられていることもあり、両国のライウイスキーはまったく異なる表情を持っています。

またアメリカでは、ライウイスキーはそのまま瓶詰めされて販売されていますが、ブレンデッドウイスキーが主流のカナダでは、おもにフレーバリングウイスキーとして用いられています。

コーンウイスキー

コーンウイスキーは、トウモロコシを主原料とするウイスキーで、おもにアメリカで造られています。コーンウイスキーと認められるには、原料の80%以上にトウモロコシを使用するという定義に従う必要があります。

一般に、コーンウイスキーの熟成期間には決まりがないため、多くは樽熟成させずに出荷されます。熟成していないコーンウイスキーは、強いアルコール感のあとに、コーン由来の甘味がダイレクトに感じられるのが特徴です。もっとも近年は、樽熟成させた穏やかなタイプのコーンウイスキーも登場しています。

ウイスキー造りの決め手とも言われる熟成樽(カスク)とは

ウイスキー造りの決め手とも言われる熟成樽(カスク)とは

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「カスク」とは、ウイスキーを貯蔵し、熟成させるために使う木樽のこと。カスクに貯蔵・熟成されることで琥珀色に色づき、豊かな香味やコク、まろやかさが生まれます。
ここではカスクの材料となる木(木材)や、過去に貯蔵していたお酒に注目して、主なカスクの種類とその特徴を紹介します。

最もメジャーなオーク樽

オークは世界中に数百種類あるといわれており、カスクに使われるのは、主にアメリカンホワイトオークやヨーロピアンオークです。

アメリカンホワイトオークは北米一帯に生育し、なかでもアメリカ東部からカナダにかけて多く見られます。一方のヨーロピアンオークには種類があり、コモンオーク(スパニッシュオーク)とセシルオーク(フレンチオーク)は「ヨーロッパ産の2大オーク」と呼ばれています。

アメリカンホワイトオークはバニラやココナッツのようなフレーバーを、ヨーロピアンオークのうち、コモンオークはドライフルーツのようなアロマを、セシルオークはスパイシーな香りをウイスキーにもたらすといわれています。

オリエンタルなフレーバーに仕上がるミズナラ樽

おもに日本で生育しているミズナラ(ジャパニーズオーク)で作ったカスクのこと。とりわけ北海道産の良質なミズナラを使ったカスクは希少性が高く、高級なことで知られます。

ミズナラはオークの一種ですが、アメリカンホワイトオークなどと比べると水分を吸収して漏れやすいため、樽材として使うのは難しいといわれます。ミズナラ樽で熟成させると、伽羅(きゃら)や白檀(びゃくだん)を想わせるオリエンタルな香りをまとったウイスキーに仕上がりやすくなるのが魅力で、日本を象徴するフレーバーとして世界中から注目が集まっています。

貯蔵に使われたシェリー酒によって風味が変わるシェリー樽

過去にシェリー酒を貯蔵していた古樽をシェリー樽といいます。シェリー酒は酒精強化ワイン(アルコールを添加して造るワイン)の一種で、スペインのアンダルシア州ヘレス市周辺で造られています。
シェリー樽は、ウイスキーの樽熟成のきっかけとなったカスクといわれています。近年は数量が不足していて、入手しづらくなっているようです。

バニラのような香ばしさのバーボン樽

バーボンを詰めるための樽、または過去にバーボンウイスキーを貯蔵していた古樽のことをバーボン樽(バーボンバレル)といいます。バーボンは、アメリカンウイスキーの代表格で、おもにケンタッキー州などで造られています。

バーボンの熟成は、内側を焦がしたアメリカンホワイトオークの新樽を使うことが法律で義務づけられているため、樽は1回限りの使い捨て。そこにスコッチウイスキーの造り手が目をつけ、入手困難なシェリー樽の代わりに、バーボン樽を熟成樽として使うようになったといわれています。


今では、スコッチウイスキーだけでなく、ジャパニーズウイスキーなど世界中のウイスキーの熟成樽として幅広く活用されています。

ブレンドでウイスキーの風味のバランスや味わいは洗練される

ブレンドでウイスキーの風味のバランスや味わいは洗練される

たのしいお酒.jp編集部

ウイスキー造りには、カスクで熟成して造られた原酒を混ぜ合わせるブレンドという製造工程があります。多くのウイスキーはブレンドして造られており、ブレンドの仕方によって呼び名が変わるのがウイスキーの特徴です。

ヴァッティング:同じ原料のウイスキー同士を合わせる行為

ヴァッティングとは、複数の樽で熟成させた同種類のウイスキー原酒を混ぜ合わせることを意味します。ヴァッティングをする理由は、ウイスキーの品質を均一にし、味わいを深めるためです。
単一の蒸溜所で造られたモルト原酒をヴァッティングしたものが「シングルモルト」です。シングルモルトは蒸溜所の個性が際立ったウイスキーとして人気があります。
複数の蒸溜所のモルト原酒をヴァッティングしたウイスキーは「ピュアモルトウイスキー」や「ブレンデッドモルト」などと呼ばれます。

ブレンディング:違う原料のウイスキー同士を合わせる行為

モルト原酒とグレーン原酒、など別の原料から造られたウイスキー原酒を混ぜ合わせることをブレンディングと呼びます。ブレンディングを行って造られるウイスキーがブレンデッドウイスキーです。

シングルカスク:他の樽の原酒とブレンドしないウイスキー

シングルカスクとは言葉の通り、「単一の樽」から生まれるウイスキーのことを指し、造り手が選りすぐった“最高の一樽”の個性をダイレクトにたのしめるウイスキーとして、マニアの注目を集めています。
シングルカスクは、蒸溜所のプレミアムボトルとして限定販売されるのが一般的であるため、入手困難なうえに、値段もそれなりに高額です。しかし、ウイスキー愛好者にとっては、まさに垂涎の存在です。

産地によって違う味わい。世界5大ウイスキーと新興国のウイスキー

産地によって違う味わい。世界5大ウイスキーと新興国のウイスキー

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「世界5大ウイスキー」とは、スコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ、日本で生産されるウイスキーを指します。近年ではそれらに加えて、新興国のウイスキーも注目されています。それぞれの特徴を確認しましょう。

スコットランド:スコッチウイスキー

スコットランドで造られるウイスキーのことで、名実ともにウイスキーの筆頭格と呼ばれる存在です。基本的にピートを使って炊いた大麦麦芽を使用するため、スモーキーフレーバーの香るウイスキーが多いのが特徴です。

アイルランド:アイリッシュウイスキー

アイルランドで造られるウイスキーの総称。「ウイスキーの元祖」といわれるほど古い歴史を持ちます。軽く穏やかな風味で、一般的にピート香がないのが特徴。伝統的な3回蒸溜で造られる銘柄もあります。

アメリカ:アメリカンウイスキー

アメリカで造られるウイスキーの総称。夏の暑さと冬の厳しい寒さに育まれた、独特の甘味を持つのが特徴です。原料や製法の違いによって、「ライウイスキー」や「バーボンウイスキー」「コーンウイスキー」「ホイートウイスキー」「モルトウイスキー」などと細かく分類されます。

カナダ:カナディアンウイスキー

カナダで造られるウイスキーの総称で、5大ウイスキーのなかでも、とくに軽い風味と酒質を持つのが特徴です。前述のとおり、カナダではブレンデッドウイスキーが主流で、クセの少ない穏やかなタイプが多く、ハイボールやカクテルベースとしても活躍しています。

日本:ジャパニーズウイスキー

日本で造られるウイスキーの総称。豊かな自然環境のなかで造られた、原酒の多彩さが特徴です。スモーキーフレーバーがあり、味わいがソフトなウイスキーと評されることもあります。日本特有のミズナラ樽で熟成させたウイスキーは、オリエンタルな香りが魅力で、世界的にも高く評価されています。

新興産地のウイスキーにも注目

近年、ウイスキーの新興産地としてとくに注目を集めているのが、台湾、インド、フランスの3か国。それぞれの特徴をかんたんに紹介しましょう。

台湾のウイスキー

台湾では、これまでのウイスキー造りの常識を覆すような、温暖湿潤な環境下でウイスキー造りが行われています。熟成が早く進むことを逆手に取って造られる「カバラン」が世にリリースされると、その完成度の高さに世界中のウイスキー愛好家が驚かされました。

インドのウイスキー

インドでは、イギリスの植民地であった19世紀からウイスキー造りがはじまったといわれています。かつては砂糖作りで生じる廃糖蜜を原料としたウイスキーが主流でしたが、近年は「シングルモルトウイスキー」の製造も増加傾向に。なかでも「アムルット」は高く評価されています。

フランスのウイスキー

新勢力として勢いを増しているのがフランス。フランスといえばワインというイメージですが、ウイスキーの消費量が世界トップクラスのフランスでは、高い需要を受けて近年ウイスキー造りが盛んになってきています。とくに、コニャック地方で造られる「バスティーユ1789」は、ブドウの風味も感じられる1本で注目されています。

ウイスキーの種類は豊富で、それぞれに多彩な魅力があります。世界5大ウイスキーのほか、近年はさまざまな新興産地で生まれる高品質のウイスキーにも注目が集まっています。機会があればぜひ飲み比べて、産地ごとの違いをたのしんでみてはいかがでしょう。

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