正月に飲む日本酒「お屠蘇(とそ)」とは? その歴史や作法を知ろう

正月に飲む日本酒「お屠蘇(とそ)」とは? その歴史や作法を知ろう
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正月に家族の無病息災を願って飲む「お屠蘇(とそ)」。名前は聞いたことがあっても、どんなお酒でどのような作法で飲むものなのか、知らない人も多いのではないでしょうか。今回は正月ならではの日本のお酒「お屠蘇」について、歴史や作り方、飲む際の作法について紹介します。

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正月などの祝い事には日本酒がつきもの

正月などの祝い事には日本酒がつきもの

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日本にはおめでたい日に日本酒を飲む「祝い酒」の風習がある

正月には、多くの家で家族や親戚が集まり、新しい一年の始まりを祝います。おせち料理やお雑煮などとともに、普段より少し高級な日本酒をたのしむ人も多いのではないでしょうか。

古くから神事において神々への供え物として用いられてきた日本酒は、日本の文化のなかでさまざまな儀式や行事に欠かせない存在です。そのため、正月以外にも、お祭りや結婚式、記念日などのめでたい日に、「祝い酒」として日本酒を飲む風習が根づいています。

「御神酒(おみき)」や「鏡開き」など、正月の儀式に日本酒は欠かせない

正月には、普段とは異なる特別な日本酒を飲む機会が多くあります。そのひとつが、初詣の際に神社で振る舞われる「御神酒」です。神前に供えられた「御神酒」には神霊が宿るといわれ、参拝者はこれをいただくことで無病息災などを祈願します。

また、正月には、酒樽の蓋を割り、酒を振る舞う神事である「鏡開き」も行われます。複数の人が酒樽を囲み、木槌などで蓋を叩き割る場面を見たことがある人もいるのではないでしょうか。

なお、「鏡開き」という名前は、かつて酒樽の蓋が「鏡」と呼ばれていたことに由来するそうで、年始にお供えした鏡餅を割って食べる「鏡開き」の風習とはまた別の儀式となっています。


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正月に飲む日本のお酒「お屠蘇(とそ)」とはどんなお酒?

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正月の「お屠蘇」は日本酒やみりんに生薬を漬け込んだ薬草酒

正月に家庭で飲むお酒として忘れてはならないのが、「お屠蘇」です。「お屠蘇」とは、日本酒やみりんに「屠蘇散(とそさん)」や「屠蘇延命散(とそえんめいさん)」と呼ばれる生薬を漬け込んだ薬草酒のこと。(酒税法上の清酒とは異なります。)

「屠蘇散」の中身は、山椒(さんしょう)や 白朮(びゃくじゅつ)、桔梗(ききょう)、肉桂(にっけい)、防風(ぼうふう)などで、漢方薬として効能があるとされる生薬が5~10種類程度配合されています。

「お屠蘇」の歴史と「屠蘇」の意味

「お屠蘇」を飲む風習は、平安時代に唐(中国)から伝わったもので、宮廷の正月行事で飲まれるようになり、江戸時代になって一般市民に広まったといわれています。

この「屠蘇」という名前には、「蘇(そ)と呼ばれる悪鬼を屠(ほふ)る」という意味があるとする説や、「屠(=邪気を払う)」と「蘇(=蘇らせる)」の漢字の由来から、「邪気を払い生気を蘇らせる」という意味があるとする説などがあります。

いずれにせよ、無病息災の願いを込めて元旦に飲まれる特別なお酒であることに違いありません。

正月に飲む「お屠蘇」は自宅でかんたんに作れる

「お屠蘇」は、じつは自宅でかんたんに作ることができます。必要な材料は「屠蘇散」と本みりん、日本酒の3つだけです。

「屠蘇散」は、年末ごろになると薬局やスーパーなどの店頭に並ぶほか、近年ではネット通販でも取り扱っています。価格も1包200円程度からと、手軽に購入することができます。みりんは、塩分が含まれている料理用のみりんではなく、本みりんを使用します。日本酒についてはとくに決まりはないため、好みのものを用意するとよいでしょう。

材料を用意したら、日本酒と本みりんを合計300ミリリットル程度になるように容器に量り入れます。半々よりも日本酒の割合が多いと淡麗な味わいに、本みりんの割合が多いと甘口の味わいになるため、好みに応じて調整しましょう。このなかに5~8時間程度を目安に「屠蘇散」1包を浸し、抽出後に取り出せば、「お屠蘇」の完成です。

正月に日本酒を飲むときの作法や注意点

正月に日本酒を飲むときの作法や注意点

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正月に「お屠蘇」を飲む際の正式な作法(しきたり)とは

正月に飲む「お屠蘇」には作法があります。細かな作法は地域や家庭によって異なりますが、一般的な流れを知っておくとよいでしょう。まず、「お屠蘇」を飲むための事前準備から紹介します。

【「お屠蘇」用の容器を準備】
酒を入れて注ぐための道具である「銚子(ちょうし)」、大中小3種類の「盃(さかずき)」、盃を置く「盃台(さかずきだい)」、これら一式を載せる「屠蘇台(とそだい)」からなる「屠蘇器(とそき)」を使用するのが正式な作法です。「屠蘇器」がない場合は、なるべく正月らしい酒器で代用します。

【「お屠蘇」を飲む前にすべきこと】
お屠蘇を飲む前に、まずは「若水(わかみず)」と呼ばれる元日の朝一番に汲んだ水で手を清めます。そして、神棚や仏壇を拝み、家族に新年のあいさつをします。なお、「お屠蘇」は食事の前に飲むのがルールのため、先におせち料理などを食べないようにしましょう。

「お屠蘇」の正式な飲み方

「お屠蘇」を飲む際は、家族全員が東の方角を向き、年の若い順に飲んでいきます。まずは最年長者が最年少者に注ぎ、次からは飲んだ人が次の人に注ぐようにします。年少者から飲むことには、若者の生気を年長者に伝えるという意味と、毒見の意味が込められているのだとか。

順番がきたら、「一人これを飲めば一家苦しみなく、一家これを飲めば一里病なし」という言葉を唱えながら飲みます。「屠蘇器」の3つの盃を使う場合、それぞれの盃に少しずつ注いで一杯ずつ飲みますが、ひとつの酒器で飲む場合は、盃に注いだら飲み干すという動作を3回繰り返します。

なお、厄年の人は家族の力を分けてもらって厄を払うため、最後に飲むことになっています。

めでたい正月の宴席でも、未成年者は飲酒を避けよう

正月には人が集まり、日本酒を飲む機会が増えますが、たとえ「御神酒」や「お屠蘇」であってもアルコールを含むお酒です。未成年者やアルコールが飲めない人は“飲む真似”をして、おめでたい雰囲気だけを味わいましょう。

ただ、「お屠蘇」については、作る過程で日本酒やみりんを煮沸してアルコール分を飛ばすこともできるため、未成年者やアルコールを飲めない人のためにノンアルコールの「お屠蘇」を作るのも一案です。


正月に飲む「お屠蘇」は、日本酒とみりんに複数の生薬を漬け込んだ薬草酒であり、自宅でもかんたんに作ることができます。元旦に家族皆で無病息災を願う「お屠蘇」を飲めば、素晴らしい一年を迎えられそうですね。

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