100年ぶりに大都会に蘇った酒蔵 〜東京港醸造〜

100年ぶりに大都会に蘇った酒蔵  〜東京港醸造〜

東京23区内唯一の酒蔵として注目を集める「東京港醸造(みなとじょうぞう)」。前身の「若松屋」は江戸時代、東京都港区芝に造り酒屋として創業したものの、明治時代に後継者問題等の理由から一度酒造業を廃業。しかし、一念発起した七代目によって同じ地で酒造りが復活。酒蔵を蘇らせるまでのお話をうかがいました。

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銘柄名は江戸無血開城にちなんで「江戸開城」と命名した。

4階建てビルを酒蔵に改装

東京港醸造の酒蔵は、齋藤さんが住居としていた敷地22坪の4階建のビルを改装。酒造りの工程に合わせて階下に降りていく、作業効率を考えた構造です。

酒米を蒸す甑(こしき)は、4階の屋根のあるベランダに設置。麹室も同じく4階にあり、熱を生むものを最上階へ。
3階には仕込タンクの一部と分析室と事務室を置き、2階には仕込タンクと搾り機、1階は火入れ作業や貯蔵、出荷作業を行うスペース。
重たい醪(もろみ)の移動は床に穴を開け、ホースを通して階下へ移動させるなど工夫が凝らされています。

酒米を蒸す甑。4階のベランダで蒸気が立ち上ります。

(寺澤さん)小さな酒蔵でコンパクトに仕込む造りは、台場のミニブリュワリーでの9年間の取り組みが生かされていて、また、それ以前の京都時代に、逆に大規模な仕込みで酒造りをしていたことも、製造や運営の面でとても役立ちました。これまでの自分の経験値を基に、今の酒造りのベースができあがりました。

1年を通して酒を造る四季醸造で、週に一度仕込みを行い、小ぶりのタンクで年間50回仕込んでいますが、一つひとつ丁寧に観察しながら酒造りをしています。
「自分が麹だったら、あるいは酒母だったら、どんな環境が望ましいか」を考えて、微生物の立場を常に意識していますが、これは酒造りの上でとても大切なことです。
毎回の仕込みでタンクの中がどんな状態かを把握することは、すべて自分の知識になります。経験値が増えるのは酒造りにおいてとても幸せなことなんです。

コンパクトなサイズの麹室は動きやすい設計に。

酵母は数種類を使い分けているが、どの協会酵母よりも古く発見された「yedo酵母、tokyo酵母」を使用することも。

都心で生まれた「東京の地酒」

20年前に初めて抱いた酒蔵復活の夢が実現して4年目。酒蔵としての経営も軌道に乗り、存続してく見通しがたったと齋藤さんは穏やかに語ります。

(齋藤さん)最初はいろいろな人たちから、「絶対に採算が合わないから酒蔵なんてやめた方がいい」といわれていましたが、お陰さまで継続していけそうです(笑)。
「東京の地酒」として、個人や企業のお土産品としての反響も大きくうれしい限りです。

酒造りのことはすべて寺澤に任せてきましたが、彼は本当に知識が豊富で努力家。私は経営者としての今後の自分の成長は、寺澤を応援することだと思っています。
彼は、自分が培った醸造技術や、コンパクトなブリュワリーの設備をパッケージ化していく夢があるので、その実現を見守りたいですね。

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