長野県・小諸市『中棚荘』&『ジオヒルズワイナリー』/ワインを醸し始めた老舗温泉宿の物語

長野県・小諸市『中棚荘』&『ジオヒルズワイナリー』/ワインを醸し始めた老舗温泉宿の物語

1898年に長野県小諸市で創業した温泉旅館『中棚荘(なかだなそう)』。5代目荘主の富岡正樹さんは2002年にブドウ栽培を始め、5年後に『マンズワイン』での委託醸造で『中棚シャルドネ』が誕生。さらにワインを究めるべく、2018年に『ジオヒルズワイナリー』を開所。家族で力を合わせ、ワイン醸造に取り組んでいる。

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ワインメーカーは三男の隼人さん。父の影響を受けてワイン造りの道に。

一方『中棚荘』は、長男直希さん夫妻が中心となって切り盛りしていくことに。2019年の夏に直希さんは6代目荘主に就任し、名実ともに旅館の主人となることで、富岡家のワイン造りをサポート。父の想いや背中を見て育った息子さんたちが、父の夢を家族みんなの夢としてとらえ、必ずや叶えようという熱い気持ちが伝わってきます。

さて、いちばん近くで見守ってきた女将の胸中も、やはり気になるところ。「こっそりブドウ栽培を始めた時、私に内緒でトラクターを購入して呆れてしまったのを思い出します」と洋子さん。「でも土をいじっている時の真剣な眼差しを見て、いつしか応援するようになっていましたね」とにっこり。まさに家族の絆があってこそ、ですね。

右から、醸造責任者の三男・隼人さん、富岡さん、女将の洋子さん、6代目の直希さんとお嬢さん。

宿で暮らしていたヤギのピノちゃんも、除草担当としてワイナリーをお手伝い。

“風の吹く丘”でワインを醸し、人々を迎える

『ジオヒルズワイナリー』は、小高い丘のような立地にたたずんでいます。

さて、ここからは2018年11月にオープンした『ジオヒルズワイナリー』をレポートしましょう。ベトナム語の「Gio(風)」と英語の「Hills(丘)」を組み合わせたのが、名前の由来。ベトナム語を用いたのは隼人さんがベトナムで暮らし、ベトナム人の伴侶を得ていることから。文字通り風が抜けるような丘のてっぺんに、四方を見渡せるように建てられています。

ワイナリーは2階建て。まずは1階の醸造所で富岡さんに話を伺いました。テロワールについて尋ねると、「この地は標高800mほどで、気候は冷涼。昼夜の寒暖差がはっきりしているため、酸味がしっかり残るブドウが育ちます。平均年間降雨量が985㎜と少なく、ブドウ栽培に適しているんですよ」。ちなみに土壌は強粘土質。根が張るのには時間がかかりますが、その分力強い樹に成長するそうです。

さまざまなメディアの記者が招かれた取材会に参加して、お話を聞きました。

栽培しているブドウ品種は、シャルドネ、メルロー、ピノ・ノワールを中心に、ピノ・グリ、シラー、ソーヴィニヨン・ブランと多種多彩。さらに「最近はムニエも植えています」と富岡さん。シャルドネ、ピノ・ノワールにムニエの3種が揃うとなると…。「はい。瓶内で二次発酵させるシャンパーニュ方式のスパークリングワインを造りたいと、いつも隼人と話しているんですよ」と相好を崩されました。

自社畑は3カ所に分かれていて、合わせると1.2haあるそうです。

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