ワインに酸化防止剤が入っている理由は?

ワインに酸化防止剤が入っている理由は?
出典 : FrimuFilms/Shutterstock.com

ワインには、ほとんどの場合「酸化防止剤」が入っています。近年、酸化防止剤も含め、食品添加物には「カラダによくない」といったマイナスイメージを抱きがちですが、実際はどうなのでしょうか? また、酸化防止剤はどうして必要なのでしょう? ワイン造りにおける酸化防止剤の役割や必要性について調べてみました。

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ワインにおける酸化防止剤の役割

ワインにおける酸化防止剤の役割

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酸化防止剤はワインの品質を安定させる

「酸化防止剤」とは、文字どおり、酸化を防止するための薬剤です。こう書くと「酸化はワインにとってよくないもの」と思いがちですが、そう単純なものではありません。
ワインはワイナリーの樽内やタンク、またワインボトルで熟成される際、微量の酸素に触れることで、色味を安定させたり、まろやかさを出したり、香りを深めたりといった効果を得ています。また、ボトルを空けて飲む前にデキャンタージュするのも、ワインを酸素に触れさせて香りを開かせることが目的のひとつです。
これらは“よい酸化”の例ですが、一方で、ワインの品質にマイナス影響を与える“悪い酸化”もあります。後者を防ぎ、ワインの品質を安定させるために、酸化防止剤が使われているのです。

酸化防止剤が防ぐのはワインの“悪い酸化”

酸化防止剤が防ぐ“悪い酸化”には、どのようなものがあるのでしょうか?
ひとつは、アルコールの酸化です。ワインに含まれるアルコールが酸素に触れると酢酸が生じますが、これが多すぎると、ワインの酸味が強くなってしまいます。もうひとつが、アセトアルデヒドの酸化です。ワインの発酵中に生じるアセトアルデヒドは、酸素に触れると青臭い香りを生みます。
このように、ワインは酸化が進みすぎることで、味や香りに悪影響が生じるもの。酸化防止剤は、こうした過度の酸化を防ぐために用いられるのです。

酸化防止剤には殺菌作用も

ワイン造りにおける酸化防止剤の役割は、酸化を防ぐことだけではありません。酸化防止剤には殺菌作用もあり、ワイン造りに好ましくない雑菌を取り除くためにも使用されています。
ワインの原料となるブドウの果皮には、発酵を促す酵母菌だけでなく、さまざまな雑菌が付着しています。これらの雑菌が繁殖すると、発酵を妨げたり、不快な臭いの原因となります。それらを防ぐのも酸化防止剤の重要な役割です。

ワインに入っている酸化防止剤の正体は?

ワインに入っている酸化防止剤の正体は?

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酸化防止剤の正体は「亜硫酸塩」

ワインに使用される酸化防止剤は、ラベルなどには「亜硫酸塩」と表示されています。亜流酸塩にもいくつかの種類がありますが、一般的なのが「二酸化硫黄」呼ばれる物質です。
字面だけを見ると、何やら物騒な薬品のようにも見えますが、じつは、ワインの醸造過程で酵母によって自然に生成される物質でもあります。また、ワインだけでなく、ドライフルーツや甘納豆、かんぴょうなど、さまざまな食品の保存料、あるいは漂白剤として幅広く利用されています。

酸化防止剤の入ったワインは頭痛の原因になる?

「酸化防止剤が入ったワインを飲むと頭が痛くなる」という説が、ネットを中心に広がっていますが、本当でしょうか?
酸化防止剤として用いられる亜硫酸塩の使用量は、日本では法律で0.035%以内に制限されていて、しかも実際の使用量は、制限値を大きく下回るケースがほとんどと言われています。
むしろ近年では、ワインやチーズ、納豆、ヨーグルトなど発酵食品全般に含まれる「アミン類」へのアレルギー反応という説が有力視されているようです。とくに、赤ワインを飲んだときだけ頭痛がする場合は、アミン類のなかでも赤ワインに多く含まれる「ヒスタミン」や「チラミン」が原因と考えられています。

酸化防止剤は高級ワインにも使われている

酸化防止剤は高級ワインにも使われている

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高級ワインにも酸化防止剤は必要

ワイン造りに酸化防止剤が必要なのは、高級ワインにおいても変わりありません。
高級ワインは、長期間かけて熟成することが一般的です。その期間中にワインの劣化を防ぎ、味わいを熟成の方向に誘導するためには、微量の亜硫酸塩が必要です。
とくに赤ワインの熟成では、亜硫酸塩がないと、赤い色合いや渋味、コクなどを与える成分が酸素の影響で沈殿してしまう恐れがあります。そうならないために、やはり適量の酸化防止剤は必要だと言えます。

「現地のワインは酸化防止剤が入っていない」という説の真偽

「フランスやイタリアなど、現地で飲むワインは、酸化防止剤を使っていないから味が違う」という話を耳にしたことがあるかもしれません。確かに、本場の雰囲気を味わいながら飲むワインは格別でしょうが、その原因が酸化防止剤とは限りません。
現在では、世界中どこでも、量の違いこそあれ、ほとんどのワインが酸化防止剤を使用しているからです。ただ、国によっては表示義務がない場合もあるため、現地でラベルを見て「こっちでは酸化防止剤を使っていない!」との誤解も生じているようです。
ちなみに、そうしたワインも日本に輸入される際には、日本の表示基準に合わせて「酸化防止剤あり」のラベルに貼り替えられます。

酸化防止剤無添加のワインが注目される理由

酸化防止剤無添加のワインが注目される理由

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酸化防止剤無添加でワインを造る方法は?

酸化防止剤はワイン造りにおいて重要な役割を果たしていますが、近年、とくに日本では「酸化防止剤無添加」を謳ったワインも見かけるようになり、食品添加物全体へのマイナスイメージもあってか、人気を博しているようです。
では、酸化防止剤なしで、どうやってワインを造っているのでしょうか? メーカーごとに違いはあるものの、ボトリング前のワインを60~70度に加熱処理したり、フィルター処理を施したり、生産現場を気密化したりと、さまざまな手法で過度の酸化や雑菌の繁殖を防止しているようです。

酸化防止剤無添加ワインの味わいは?

酸化防止剤無添加のワインは、味わいの面ではどんな違いがあるでしょう。もちろん、メーカーや銘柄にもよりますが、傾向としては甘口でフルーティーなワインや、「ボディ」で表現すれば「ライトボディ」のワインが多いようです。
「フルボディ」と呼ばれる重厚でコク深く、多くの人に評価されるワインは、やはり酸化防止剤を抜きにしては造るのは難しいそうです。
酸化防止済無添加ワインの多くは熟成向きではなく、メーカーから出荷されたら、なるべく早めに飲まれることを前提としていると考えましょう。

酸化防止剤無添加ワインとビオワイン

酸化防止剤無添加ワインとビオワイン

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ビオワインとほかのワインの違いは

最近、酸化防止剤無添加ワインと並んで健康的なイメージも手伝ってか、人気が高まりつつあるのが「ビオワイン」や「オーガニックワイン」。
化学肥料、除草剤、農薬などを一切使用せず(一部の薬品のみ例外的に認められる場合あり)、有機栽培で育てられ、認証機関に認められた畑のブドウから造られたワインだけが名乗ることを許されます。

ビオワインかどうかは酸化防止剤の有無とは無関係

酸化防止剤不使用ワインとビオワインは、そのイメージから混同されがちですが、ビオワインは酸化防止剤不使用というわけではありません。
ビオワインの認証機関には、亜硫酸塩の含有量に通常よりも少ない独自基準を設けているところもあり、ビオワインは通常のワインよりも酸化防止剤の使用を控える傾向があります。
とはいえ、あまり酸化防止剤を減らしすぎると、雑菌に汚染された低品質なワインが生まれる原因にもなりかねません。酸化防止剤の有無だけで選ぶのではなく、やはり造り手や、品質、味わいで選ぶのがワイン選びの王道と言えそうです。

酸化防止剤がワイン造りに果たす役割を理解できたでしょうか? 酸化防止剤を含む食品添加物にはマイナスイメージを抱きがちですが、厳しい基準に則り適切に造られているワインまで心配する必要はないでしょう。せっかくのワインですから、信頼できる販売店で購入して、神経質になりすぎず、その香りや味わいをたのしみたいものです。

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