2021年より稼働予定、現在NYに酒蔵を建設中 〜「獺祭」蔵元・旭酒造の新たな挑戦〜

2021年より稼働予定、現在NYに酒蔵を建設中 〜「獺祭」蔵元・旭酒造の新たな挑戦〜

国内のみならず海外にも多くのファンを持つ日本酒「獺祭」。伝統的な酒造りの常識にとらわれず、常に新たな試みにチャレンジし続けてきた旭酒造の次の挑戦は、米ニューヨーク州の酒蔵の建設。「山口の山奥の小さな酒蔵」が、東京や海外に販路を開拓してきたこれまでの歩みや今後について、桜井会長にお話をうかがいました。

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東京市場の開拓、そして海外進出へ

品質にこだわった「獺祭」を主力商品にしたものの、地元山口県ではなかなか売り上げが伸びず、桜井会長は東京市場への進出を決意します。その後、最新機械の導入など設備投資を積極的に行い、より高品質の「獺祭」を生み出すとともに、酒蔵の製造設備を拡充していき、販路をさらに海外にも広げていきました。

(桜井会長)「獺祭」は、地元ではなかなか相手にしてもらえなかったんです。残念でしたが、小さな市場で努力しても結果はでないと思い、東京に販路を開拓しました。少しずつ売り上げが伸びていき手応えを感じて、やはり、お金がまわっていて経済が動いているところで売っていこうと思いましたね。

設備投資は惜しみなく行いました。「獺祭」はすべて純米大吟醸ですが、アルコール添加をしていない純米大吟醸酒は華やかな香りを出しにくかったんです。そこで、上槽(お酒を搾る工程)に「遠心分離機」を導入して、より香りを出せるように工夫しました。
また、空調設備も新調し、温度管理を徹底して、年間を通じて酒造りを行う「四季醸造」を始めて生産量を増やしました。

約15年前に四季醸造を始め、出荷数を伸ばし続けた

東京で結果を出した次のステップとして、海外に向けて舵を切ることを決め、米国へ販路を広げることにしました。海外の業者に任せっぱなしにしてしまう従来の日本酒蔵のやり方ではなく、私が自らアメリカに渡り、お客様を相手にカタコトの英語でお酒について話をしました。

自社のお酒を知り尽くした社長である自分が、直接話をすることが大切だと思ったんです。
現地の方は「Beautifull!」といって飲んでくれたのですが、それを見て安心したのを覚えています。やはり、「おいしい酒はおいしい」と思ってもらえるのだと。

2006年頃になると、長男の一宏(現・旭酒造代表取締役社長)が入社してくれたので、しばらくニューヨークに駐在して頑張ってもらいました。試行錯誤しながらも、海外で日本酒を売る努力と工夫をいろいろと重ねました。

ジョエル・ロブションとの出会い

ニューヨークでの「獺祭」の人気の高まりを受け、さらに世界に向けて日本酒を発信していこうと、2014年、フランス・パリでレストランを開店する計画が持ち上がりましたが、事情により頓挫してしまいます。しかし、その後、世界的に有名なフランス料理の巨匠、ジョエル・ロブション氏の声がけで、2018年、パリに「獺祭・ジョエル・ロブション(Dassaï Joël Robuchon)」をオープンさせました。

(桜井会長)米国の次はヨーロッパ、食の都・パリに進出することを決め、準備を進めていたのですが、フランスの法律の問題で計画は途中でなくなってしまいました。ところが、そのプロジェクトの経緯を知ったジョエル・ロブション氏が、「自分と一緒にやろう」と声をかけてくれたんです。「獺祭に恋をした」と。そして昨年、パリ8区のフォーブル・サン=トノレ通りに共同の店舗がオープンしました。

2018年6月にグランドオープンした「獺祭・ジョエル・ロブション」

たいへん残念なことに、ロブション氏は昨年8月にがんで亡くなられたのですが、その5月に山口県岩国市にある酒蔵を見学に来てくれたんです。製造の工程を見て、「スイスの時計職人のような造り方をしているんだね」と、ここが日本酒造りの“聖地”であるというのを、彼らしい言葉で表現し、敬意を表してくれました。
その翌月、パリのお店のグランドオープンには、体調がよくないのを押して駆けつけてくれたんです。その気持ちが本当にうれしかったですね。

ロブション氏との交流を通して得たものはたくさんありますが、世界を舞台に活躍するあれほどの巨匠であっても、料理を進化させ続けていた姿にはとくに刺激を受けました。常に、“その上”を追いかけて変化しているのを毎回感じ、これはすごいことだな…と、深く考えさせられましたね。

左から旭酒造代表取締役社長の長男・一宏氏、ジョエル・ロブション氏、桜井博志会長

“旭酒造NY酒蔵プロジェクト”

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