吟醸酒は、華やかな香りとすっきりとした味わいが特徴の特定名称酒

吟醸酒は、華やかな香りとすっきりとした味わいが特徴の特定名称酒
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吟醸酒とは、精米歩合60パーセント以下の米を吟醸造りで醸した、日本酒の「特定名称酒」のひとつ。今回は「吟醸」の読み方や意味、吟醸酒の定義、味わいや香りの特徴、大吟醸酒や純米吟醸酒、本醸造酒との違い、飲み方や保存方法、おすすめ銘柄を紹介します。

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まずは吟醸酒のプロフィールからみていきましょう。

吟醸酒は「特定名称酒」のひとつ! 「吟醸」の意味や読み方は?

吟醸酒のプロフィール

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吟醸酒は、果実を想わせる華やかな香りとすっきりとした味わいが特徴の日本酒(清酒)で、国税庁が告示した「清酒の製法品質表示基準」(以下「表示基準」も同じ)の要件を満たす「特定名称酒(特定名称の清酒)」です。

吟醸酒の「吟醸」は、文字どおり、吟味した原料を使ってていねいに醸造するという意味を持つ言葉で、「ぎんじょう」と読みます。

吟醸酒には原料や造る方法に決まりがあるの? ポイントは「精米歩合」と「吟醸造り」

表示基準に定められた吟醸酒の原料と製法

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「清酒の製法品質表示基準」に定められている「特定名称酒」の吟醸酒の要件を詳しくみていきましょう。

「特定名称酒」の吟醸酒の要件

「特定名称酒」とは、上述のとおり国税庁が告示した「清酒の製法品質表示基準」の要件を満たす場合にのみ表示することができる、吟醸酒・純米酒・本醸造酒および大吟醸酒・純米吟醸酒・純米大吟醸酒・特別純米酒・特別本醸造酒の総称です。

「表示基準」で定められている吟醸酒の要件は次のようになっています。

◇「清酒の製法品質表示基準」の吟醸酒の要件
精米歩合60%以下の白米、米こうじ及び水、又はこれらと醸造アルコールを原料とし、吟味して製造した清酒で、固有の香味及び色沢が良好なもの
(国税庁告示「清酒の製法品質表示基準」より引用)

原料には「精米歩合60%以下の白米」「米こうじ」「水」「醸造アルコール」の4つが挙げられ、製法については「吟味して製造(=「吟醸造り」により製造)」とあります。

また、以下のような「特定名称酒」に共通する要件もあります。

◇「白米」:3等以上に格づけされた玄米又はこれに相当する玄米を精米したもの
◇「米こうじ」のもととなる「こうじ
米」の使用割合:「白米」の重量の15パーセント以上
◇「醸造アルコール」の使用重量:白米の重量の10パーセントを超えない

(以上、国税庁告示「清酒の製法品質表示基準」を要約)

このうちのどれかひとつでも欠けると「吟醸酒」と表示できなくなります。一方、特定名称を名乗るかどうかは任意なので、要件をすべて満たしていてもあえて「吟醸酒」と表示していないお酒もあります。

吟醸酒ならではの味わいにかかわる精米歩合

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吟醸酒は精米歩合60パーセント以下、大吟醸酒なら50パーセント以下! よく磨いた米を使うとすっきりした味わいになるわけは?

「表示基準」に定められた吟醸酒の要件うち、香りや味わいに大きくかかわるのは「精米歩合」と「吟醸造り」です。

吟醸酒の特徴であるすっきりとした味わいには「精米歩合」が関連してきます。

「精米歩合」とは、玄米を外側から削って精米したあと、残った米の割合がどのくらいかをパーセンテージで表したもの。その数値が低いほど、雑味の成分が多い米の外側がよく削られていることを意味します。

「表示基準」で規定されている吟醸酒の「精米歩合」は60パーセント以下。つまり、外側を4割以上削った米で造られているため、雑味の少ない飲み口のお酒になることが多いのです。

ちなみに大吟醸酒の場合、規定されている精米歩合は50パーセント以下。米を惜しみなく半分以上も削って造られることから、よりクリアな味わいの、高価なお酒になる傾向があります。

吟醸酒の香りの決め手となる吟醸造り

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「吟醸造り」で生み出されるフルーティーで華やかな香り

吟醸酒のもうひとつの大きな特徴であるフルーティーで華やかな香りは、吟醸酒専用の優良酵母を使い、「吟醸造り」を行うことなどで生み出されるもので、「吟香(ぎんか/ぎんこう)」あるいは「吟醸香(ぎんじょうか)」と呼ばれています。

「吟醸造り」とはどんな製法なのか、国税庁のホームページに次のような説明があります。

「吟醸造りとは、吟味して醸造することをいい、伝統的に、よりよく精米した白米を低温でゆっくり発酵させ、かすの割合を高くして、特有な芳香(吟香)を有するように醸造することをいいます」

出典 https://www.nta.go.jp

(東京国税局「日本酒(清酒)に関するもの」より引用)

酵母が生きていられるぎりぎりの温度といわれる10度前後の低温で、じっくり発酵させると、酵母はストレスを受け、吟香のもととなる酢酸イソアミルやカプロン酸エチルといった香気成分を生成します。
「吟醸造り」はこういった酵母の特性を十二分に活かした製法なのです。

吟醸酒と純米吟醸酒の違いは?

吟醸酒と純米吟醸酒の違い

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国税庁の「表示基準」上では、吟醸酒と純米吟醸酒との違いは「醸造アルコール」が含まれているかいないかのみです。まずは「醸造アルコール」の役割からみていきます。

吟醸酒に含まれていて純米吟醸酒には含まれていない醸造アルコールとは

「醸造アルコール」とは一般的に、糖蜜(廃糖蜜)などを原料とし、甲類焼酎(連続式蒸溜焼酎)と同じような製法で造られる高純度の発酵アルコールのこと。合成アルコールなどの化学製品は含まれていません。

「醸造アルコール」は、酒質を劣化させる乳酸菌「火落ち菌」の増殖を抑えるほか、香味の調整のため用いられるもので、「特定名称酒」では吟醸酒のほか、大吟醸酒・本醸造酒・特別本醸造酒に含まれています。

吟醸酒と純米吟醸酒の味わいの違い

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吟醸酒と純米吟醸酒の味わいの違いは?

「醸造アルコール」は、もろみに適量添加すると味わいがすっきりとし香り高くなるため、吟醸酒の雑味がなく飲みやすい味わいや華やかな吟香をより引き立てます。

一方「醸造アルコール」を添加していない純米吟醸酒には、ほどよい吟香とともに、純米酒系ならではの原料米の旨味やコクがたのしめる商品が多いようです。

吟醸酒と本醸造酒の違いは、精米歩合や造りにあり

吟醸酒と本醸造酒の違い

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吟醸酒と本醸造酒は、ともに「醸造アルコール」が含まれている特定名称酒ですが、「精米歩合」と造り方に違いがあります。

「精米歩合」については、吟醸酒が60パーセント以下なのに対し、本醸造酒は70パーセント以下となっています。

造り方については、吟醸酒が華やかな香りを生む「吟醸造り」で醸されるお酒であるのに対し、本醸造酒にはここまでの規定はありません。

こうした違いは味わいや香りにも影響します。本醸造酒は「醸造アルコール」を添加していることから、すっきりとしてキレのある淡麗辛口の味わいになりやすく、米の旨味を感じさせる一方で、香りは総じて控えめな傾向にあります。

吟醸酒のおいしい飲み方と気をつけたい保管・保存方法

吟醸酒の飲み方と保存方法

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吟醸酒にはさまざまなお酒があり、それぞれに合った飲み方がありますが、一般に冷酒や、20~25度前後の常温、そして香りがそれほど強くないものは燗酒でもおいしく飲める日本酒です。

ポイントは温度帯。味わいや香りを損なわないよう冷やしすぎや温めすぎには気をつけましょう。おすすめの温度帯は以下のとおりです。

◇冷酒の場合
花冷え(はなびえ):10度前後
涼冷え(すずびえ、すずひえ):15度前後

◇燗酒の場合
人肌燗(ひとはだかん):35度前後
ぬる燗(ぬるかん):40度前後

また、吟醸酒はデリケートなお酒です。保管・保存する際には、酒質の変化を招く紫外線・高温・空気接触・衝撃はできるかぎり避けましょう。

開封後の保存はもちろん、開封前のものも冷蔵庫での保管がおすすめです。とりわけ生酒系の吟醸酒は冷蔵庫での保管・保存が基本となります。

吟醸酒のおすすめ銘柄を紹介

全国各地の蔵元が手掛けた吟醸酒のおすすめ銘柄を紹介します。

出羽桜(でわざくら)酒造「出羽桜 桜花(おうか)吟醸酒」

山形県の出羽桜酒造が造る「出羽桜 桜花吟醸酒」

画像提供:出羽桜酒造株式会社

山形県の出羽桜酒造が醸す、フルーティーな吟醸香と爽快な味わいの吟醸酒。1980年の発売以来、ロングセラーを続けていて、マックスファクター化粧品“SK-Ⅱ”の香りサンプルに起用されたり、英国最古のワイン商で王室御用達のBB&R社が初めて扱う日本酒に採用されるなど、国内外で高く評価されています。

製造元:出羽桜酒造株式会社
公式サイトはこちら

奥の松(おくのまつ)酒造「奥の松 あだたら吟醸」

福島県の奥の松酒造が造る「奥の松 あだたら吟醸」

Payless Images / Shutterstock.com

福島県の奥の松酒造が造る、地元の名山「安達太良山(あだたらやま)」の名を冠した辛口吟醸酒。安達太良山から流れる伏流水を使用。「毎晩飲める吟醸酒」をめざして醸した逸品で、IWC2018ではチャンピオン・サケを受賞。冷酒や常温で飲むのがおすすめ。

製造元:奥の松酒造株式会社
公式サイトはこちら

磯自慢(いそじまん)酒造「磯自慢 吟醸」

静岡県の磯自慢酒造が造る「磯自慢 吟醸」

sarakazu / PIXTA(ピクスタ)

静岡県の磯自慢酒造が手掛ける定番の吟醸酒は、特A地区産「山田錦」を使用。静岡型吟醸酒の特性ともいえる、品のよいフルーティーな香り、透明感のある甘さ、優しい酸味をすべて兼ね備えています。飲み飽きせずに杯が進む食中酒にもぴったりな1本。

製造元:磯自慢酒造株式会社
公式サイトはこちら

菊水(きくすい)酒造「吟醸 生詰 無冠帝(むかんてい)」

新潟県の菊水酒造が造る「吟醸 生詰 無冠帝」

画像提供:菊水酒造株式会社

新潟県の蔵元、菊水酒造の吟醸生詰め酒。冴えたキレのなかに旨味を感じさせる旨辛タイプで、料理によく合います。生詰め酒ならではのフレッシュな吟醸香が味わい全体を引き立て、酒銘を想い起させる極上の洗練された風味を醸し出しています。

製造元:菊水酒造株式会社
公式サイトはこちら

白龍(はくりゅう)酒造「契約栽培米五百万石(ごひゃくまんごく)吟醸 白龍」

新潟県の白龍酒造が造る「契約栽培米五百万石吟醸 白龍」

出典:白龍酒造株式会社サイト

新潟県の穀倉地帯、阿賀野市に蔵を構える白龍酒造の吟醸酒。地元農家と研究を重ねて栽培した酒造好適米「五百万石」をよく磨き、越後杜氏(えちごとうじ)が丹念に醸した良酒。すっきりとした辛口の味わいと米の旨味、芳醇な香りがたのしめます。

製造元:白龍酒造株式会社
公式サイトはこちら

飲みやすく香りもよい吟醸酒は、日本酒の入門酒としてもぴったりのお酒です。いろいろ試してお気に入りの1本を見つけてくださいね。

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