うどんだけじゃない!香川の「さぬき酒」は神話にもゆかりあるお酒

うどんだけじゃない!香川の「さぬき酒」は神話にもゆかりあるお酒
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香川県といえば「讃岐うどん」が有名ですが、酒造りも古代から盛に行われている県でもあります。瀬戸内海に面し、温暖な気候に恵まれている香川県には、いったいどのような地酒があるのでしょうか。香川の地酒の特徴と、香川の代表銘柄を紹介します。

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香川の「さぬき酒」は神話にもゆかりあるお酒

香川の「さぬき酒」は神話にもゆかりあるお酒

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香川県には、古代より酒造りを行っていたと伝えられる神話があります。ここでは、その一部を紹介しましょう。

香川県は「さぬきうどん」で知られるように、かつては讃岐(さぬき)国と呼ばれていましたが、その讃岐国を治めた国造(くにのみやつこ)の祖先が、ヤマトタケルの弟である神櫛王(かみぐしおう/かんぐしおう)です。神櫛王は、十二人の王子とともに、この地で酒造りを行っていたとされています。

神櫛王とともに酒造りを行った者のなかに、ヤマトタケルの子である武殻王(たけかいこおう)がいますが、その四世孫にあたる黒丸という人は、芳醇で黒く澄んだお酒を造る名人だったとか。その酒に感銘を受けた帝は黒丸に「酒部」の姓を与えたと伝えられています。

また、奈良時代の天平年間には、神櫛王の後裔にあたる益甲黒麿という人物が、おいしいだけでなく、病人を癒し長生きさせる酒を造ったとして、同様に帝から「酒部」の姓を賜ったとの記録が残されています。

このように、香川県には、おいしい酒を造る先人の神話がいくつも残されていて、清酒発祥の地ではないかとも考えられています。

香川県独自の酒造好適米と豊かな水源

香川県独自の酒造好適米と豊かな水源

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香川県は、昔から稲作が盛んに行われている地域です。酒米の作付けも多く、香川県が独自に栽培している酒造好適米「オオセト」や、香川大学農学部によって2006年に開発された「さぬきよいまい」なども知られています。
また、近年、本格的な栽培が始まった「おいでまい」は、本来は飯米として開発された米ですが、香川県下の蔵元では、この「おいでまい」を使った日本酒造りもすすめられています。

酒造りにおいて、米と同じくらい重要なのが水です。日本で一番小さな県である香川県は、河川の本数が少なく、さらに温暖な瀬戸内海気候の恩恵を受ける代わりに、年間を通じて雨が少ない地域でもあります。
しかし、香川県には県南部に広がる讃岐山脈によって、質のよい水が得られる湧水地が存在しています。香川県内の6つの蔵元では、それぞれが醸す日本酒に合う水や、土地に縁のある水源を仕込み水にして、酒造りを行っています。

香川の人気銘柄

香川の人気銘柄

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香川県には日本酒の蔵元が6つあり、それぞれ水や米などにこだわりをもって酒造りを行っています。そのなかから、まずは代表的な5銘柄を紹介しましょう。

財田川に舞い降りた鶴の姿から名づけられた銘酒【川鶴(かわつる)】

「川鶴」は、明治24年(1891年)の創業以来、観音寺市に蔵を構える川鶴酒造が造る日本酒です。蔵の裏手に流れる財田川に鶴が舞い降りた姿にちなみ、「川鶴」と命名されました。
初代の理念である「川の流れのごとく、素直な気持ちで飲み手に感動を」という精神は、今も蔵人一人ひとりに息づいています。また、「酒造りは米作りから」というポリシーのもと、自社田園にて米作りにも注力。そうして醸されるお酒は、濃醇さと素朴さをあわせもつ、どこかほっとする味わいで、地元はもとより首都圏でも人気を博しています。

製造元:川鶴酒造株式会社
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金刀比羅宮の御神酒を造り続ける歴史ある蔵元が醸す【金陵(きんりょう)】

「金陵」を醸す西野金陵は、寛政元年(1789年)に香川県琴平で創業した由緒ある蔵元。西野金陵が醸す酒は、江戸時代から「讃岐のこんぴら酒」といわれ、金刀比羅宮の御神酒に用いられてきました。仕込み水には、中硬水の「八幡の恩湧(やはたのおんゆ)」と、軟水の「昭和井戸」を使い、清らかな雫のような日本酒を造ります。
「金陵」は、キリっとした飲み口とまろやかなコクが特徴で、心地よい余韻もたのしめると評判。2018年の全国新酒鑑評会では、「金陵 多度津蔵」と「金陵 八幡蔵」の2商品が金賞に輝きました。

製造元:西野金陵株式会社
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現代の名工の名を冠した香川を代表する銘酒【国重(くにしげ)】

「国重」は、寛政2年(1790年)創業の綾菊酒造の代表銘柄のひとつで、綾菊酒造の名誉杜氏であり、「現代の名工」にも選ばれた国重弘明氏の名を冠した日本酒です。
なかでも酒造好適米「山田錦」を精米歩合35%まで磨き上げた「大吟醸 国重」は、至極の味わいと高評価。2016年4月に高松で行われたG7情報通信大臣会合における総理大臣主催レセプションにおいて、乾杯酒に選ばれた誉れ高い日本酒です。まさに香川を代表する銘酒のひとつといえるでしょう。

製造元:綾菊酒造株式会社
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みずみずしさと熟成の深みを感じる旨口の無ろ過純米酒【金戎(きんえびす)】

「金戎」は、「金陵」で知られる西野金陵が造る銘柄です。香川県の酒造好適米「オオセト」や「雄町」を使って醸す「金戎」の特徴は、無ろ過で瓶囲いし、低温貯蔵して出荷すること。これにより、搾りたてのフレッシュな味わいと、熟成による深みのある味わいの両方をたのしめる日本酒に仕上がるのです。
この濃醇でみずみずしい旨味を堪能するには、冷や(=常温)や冷酒がおすすめ。食中酒にも適しているため、食事と一緒にたのしめば、食席をより華やかに彩ってくれるでしょう。

製造元:西野金陵株式会社
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蔵元の伝統と技術を活かした地元の人に愛される銘酒【綾菊(あやきく)】

「綾菊」は、「国重」で紹介した綾菊酒造の代表銘柄です。この蔵元では、“郷土を愛する心”を酒造りの原点とし、名誉杜氏である国重氏に薫陶を受けた宮家秀一杜氏を中心に、継承された伝統と技術、人と自然を大事にしながら酒造りに取り組んでいます。
香川県産の良質な酒造好適米と地元綾川の伏流水を使う「綾菊」は、奥ゆきがありつつ、すっきりと飲みやすい口当たりが特徴のお酒。日本酒初心者にもおすすめと評判で、地元を中心に多くのファンに愛されています。

製造元:綾菊酒造株式会社
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香川のそのほかの注目銘柄

香川のそのほかの注目銘柄

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香川県は蔵元の数こそ多くはありませんが、各蔵元がそれぞれのコンセプトのもとに、特徴ある酒造りに挑戦しています。香川の蔵元が送る、個性的豊かな5銘柄をピックアップします。

小豆島唯一の蔵元が手造りで醸すやさしい純米吟醸酒【ふわふわ。】

「ふわふわ。」という、かわいらしい酒名の日本酒を醸すのは、小豆島で唯一の蔵元である森國酒造です。2005年創業という新しい蔵元ですが、高松市で130年以上続いた池田酒造が前身で、日本では珍しい島仕1込みの蔵元として、小豆島の気候と豊富な湧き水を活かした酒造りをスタートさせました。
森國酒造では、手造りによる良質な酒造りを大切にし、ラベルも1本1本手作業で貼っています。そうしてできた「ふわふわ。」は、果実の香りがする穏やかでやさしい味わい。シンプルでオシャレなラベルにも注目です。

製造元:森國酒造 小豆島酒類販売株式会社
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小さな蔵元が醸す個性に満ちた無ろ過熟成の酒【悦凱陣(よろこびがいじん)】

「悦凱陣」は、明治18年(1885年)に琴平町で創業した、丸尾本店が造る日本酒です。今では希少な木製の甑(こしき)を使い、無ろ過で熟成するのが丸尾本店の酒造り。タンクごとに味が異なり、骨太で芳醇な旨味を基本としながら、年ごとに違った表情がたのしめるのが特徴です。
代表銘柄である「悦凱陣」は、個性に富んだ味わいが魅力の日本酒のため、素材の味がしっかりした料理と組み合わせてたのしむのもおすすめ。小さな蔵元ながら、グルメ漫画で紹介されたことで、一躍全国に名が広がりました。

製造元:有限会社丸尾本店
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まるでヨーグルトサワー! 女性酒造家が開発した新時代の酒【讃岐くらうでぃ(さぬきくらうでぃ)】

「讃岐くらうでぃ」は、「川鶴」で紹介した川鶴酒造の女性酒造家、藤岡美樹氏が企画・開発した注目の銘柄です。そのコンセプトは、鶏肉をニンニクなどのスパイスで味つけし、オーブンなどでじっくり焼いた、香川の郷土料理「骨付鳥」と一緒に飲んでおいしい酒。通常の3倍の麹を使って醸すことで生まれる風味は、まるでヨーグルトサワーのようにさわやかです。アルコール度数を抑えたことで、ジョッキで飲める日本酒として評判で、20代や30代のリピーターが多い、新時代の日本酒です。

製造元:川鶴酒造株式会社
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「夜を明かすほどたのしく飲んでほしい」という願いが込められた生酒【月中天(げっちゅうてん)】

「月中天」は、「金陵」「金戎」を造る、西野金陵が醸す日本酒です。印象的なその銘柄は、中国の故事「壷中天(壷を覗くと天国が見える、転じて酒を飲んでこの世の憂さを忘れるたのしみ)」を引用したもの。「月の中=夜」に「天=天国=たのしむ」ためのお酒として、夜に仲間たちと集って酒を酌み交わす宴をイメージして命名されました。
「月中天」は、香川の酒米「さぬきよいまい」を100%使用した生酒で、熟したマスカットのような香りが特徴。軽快な味わいは、肉料理にもぴったりです。

製造元:西野金陵株式会社
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ほろ酔い気分の笑みがこぼれる、香り華やかな吟醸酒【ふふふ。】

「ふふふ。」は、「ふわふわ。」を造る小豆島唯一の蔵元、森國酒造が造る吟醸酒です。55%まで磨いた広島の酒米「千本錦」を、無ろ過で仕上げる「ふふふ。」は、華やかな香りと旨味を存分に感じつつも、すっきりとしたあと口が持ち味のお酒。飲み飽きしないため、飲みすすめるうちに、「ふふふ」と笑みがこぼれそう。
森國酒造には、ほかにも純米酒「うとうと。」、本醸造「びびび。」など、独特のやわらかい語感がたのしい銘柄や、「小豆島の輝」など瀬戸内海の景色を思い起こさせる名前の銘柄がそろっています。

製造元:森國酒造 小豆島酒類販売株式会社
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伝統を引き継ぎながらも、冒険心にあふれた銘柄がそろう香川のお酒。日本酒らしい日本酒から、ライトで飲みやすい新感覚の日本酒まで幅広くたのしめます。うどんだけではなく、日本酒巡りの旅として、香川に訪れてみるのもよいですね。

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