ホップとは? ビール好きなら知っておきたいホップの基礎知識

ホップとは? ビール好きなら知っておきたいホップの基礎知識
出典 : Vova Shevchuk / Shutterstock.com

ホップはビールの苦味や香りのもととなる、ビール造りに欠かせない主原料のひとつ。とはいえ、ホップがどんな植物で、どんな成分を有しているかなど、詳しく説明できる人は少ないかもしれません。ここでは、ホップがビールに与える影響や、ホップの種類などについて、詳しく説明していきます。

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ホップとは、ビールの苦味や爽快な香りのもと

ホップとは、ビールの苦味や爽快な香りのもと

Viacheslav Rubel/ Shutterstock.com

ホップは麦芽や水と並ぶビールの主原料のひとつ。どんな種類のホップを、どれだけの量、どんなタイミングで投入するかによって、ビールの味わいが大きく変化します。その意味では、ビールの味や香りを決定づける、“ビールの魂”ともいえるでしょう。

そもそもホップとは、アサ科カラハナソウ属のツル性の多年生植物です。涼しくて乾燥した地域で栽培され、おもな産地としてはドイツやアメリカ、チェコ、中国などが挙げられますが、近年ではニュージーランド産のホップも注目を集めています。
日本では、明治の初期に北海道で栽培が始められました。5月初旬に芽を出し、らせん状にツルを巻きながら成長し、収穫期となる8~9月には7メートルほどの高さに成長します。
ホップは雄株と雌株が別々に育ちますが、ビール造りに用いられるのは、このうち未授精の雌株。松かさのような球状の形から「球花(きゅうか)」と呼ばれます。

ビール造りにおけるホップの代表的な役割は、ビール特有の苦味と爽快な香りを与えること。ビール造りの工程は、まず麦芽を砕いてお湯で分解し、麦汁(ばくじゅう)を得ることから始まりますが、そこにホップを加えて煮込むことで、ビールにホップ由来の苦味や香りが与えられるのです。

ホップの成分と、ホップがビールにもたらすもの

ホップの成分と、ホップがビールにもたらすもの

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ホップはビールに苦味や香りを与えるために用いられますが、その役割を担うのが、球花に含まれる「ルプリン」と呼ばれる器官です。
球花の断面を見ると、松かさ状に重なる「包」と呼ばれる部分のつけ根に、黄色い部分が見られますが、これがルプリンです。

ホップがもつ苦味のもととなるのが、このルプリンに多く含まれる「アルファ酸」と呼ばれる成分です。アルファ酸自体には、それほどの苦味はありませんが、熱することで「イソアルファ酸」に変化すると、爽快な苦味を発するようになります。
ちなみに、ビールの苦味の指標にIBU(インターナショナル・ビター・ユニット)がありますが、これはアルファ酸の濃度を示したもの。イソアルファ酸となるアルファ酸が多ければ多いほど、ビールの苦味も増すということです。
また、イソアルファ酸にはビールの泡を形成する役割もあり、泡もちをよくするためにも欠かせない存在です。

一方、ホップの成分のなかで、香りのもととなるのが精油(エッセンシャルオイル)です。ホップの精油にはミルセンやフムレンといった成分が含まれていて、これらがビール独特の爽快な香りを生み出します。
精油の成分や含有量は、ホップの種類によって異なりますが、いずれも熱に弱く、麦汁の煮込みはじめから投入すると、香りが飛んでしまいます。このため、香りづけのためのホップは煮沸工程の後半から終盤にかけて投入されます。

なお、ホップの成分には雑菌を抑制する作用もあり、ビールの品質保持にも大きな役割を果たしています。この他にも、利尿作用や食欲増進作用、消化促進作用なども期待できるといわれていて、こうした役割の数々から、ビール造りにおいていかに重要な存在かがわかるというものです。

ホップを使ったビールの歴史

ホップを使ったビールの歴史

Vaclav Mach/ Shutterstock.com

ホップはこれまで述べてきたように、ビール造りにおいて欠かせない重要な原料ですが、じつは、ビールが誕生した当初から使用されていたわけではありません。
ビール造りにホップを使用するのが主流となったのは、ヨーロッパでは中世の終わりとされる15世紀以降のこと。ビールの起源は紀元前3000年頃といわれていますから、その長い歴史から見れば、ごく最近のことといえるでしょう。

ホップが使われる以前、中世のビール造りでは、苦味や香りをつけるために、各種の香草や薬草、香辛料などを組み合わせた「グルート」を使用していました。グルートの配合方法は「グルート権」と呼ばれる独占販売権をもつ者だけが独占していて、大きな財源となっていました。そのことからも、グルートがいかにビールの品質や味わいを左右していたかがわかります。

それほど重視されていたグルートですが、次第にその地位をホップに奪われていきます。もともとホップが注目されたのは、その殺菌・防腐効果で、イギリスからインドにビールを運ぶ際に、ホップを大量に使用したビールが造られました。これが現在でいう「IPA(インディア・ペールエール)」です。
こうしたホップを使ったビール造りが広まるにつれて、保存性だけでなく、香りや味わい、泡もちも、グルートを用いたビールよりもすぐれていることがわかってきました。

1516年にドイツで制定された「ビール純粋令」では、「ビールは大麦、ホップ、水のみを原料とすべし」と定められています。これは、ホップがビール造りの主役のひとつであることが公式に認められたことを意味しています。
現在の日本でも、酒税法におけるビールの定義は「麦芽、ホップおよび水を原料として発酵させたもので、アルコール分が20度未満のもの」などとなっていて、ホップの存在が欠くべからざるものになっているのです。

ホップの種類は世界中で100以上!

ホップの種類は世界中で100以上!

Vaclav Mach/ Shutterstock.com

ホップは現在、世界中で100種類以上もの品種が栽培されていますが、ビール造りにおける特徴(醸造評価)によって、大きく「ファインアロマホップ」「アロマホップ」「ビターホップ」の3つに分類されます。

ファインアロマホップは穏やかな香りが特徴で、苦味もやや控えめで、上品な味わいのビールとなります。代表的な品種としては、チェコ産の「ザーツ」やドイツ産の「テトナング」があります。

アロマホップは、ファインアロマホップにくらべて強い香りが特徴です。ドイツ産の「ハラタウトラディション」や「ペルレ」、アメリカ産の「シトラ」や「カスケード」が代表的な品種です。

ビターホップは苦味の強さが特徴で、苦味成分であるアルファ酸を豊富に含んでいることから「高アルファ酸ホップ」とも呼ばれます。代表品種にはドイツ産の「マグナム」や「ヘラクレス」、アメリカ産の「ナゲット」や「コロンバス」などがあります。

近年では、ホップの多様化が進むとともに、この分類に含まれない品種も登場しています。
たとえば、日本産の「ソラチエース」はサッポロビールが開発した品種で、従来のビールにないヒノキや松、レモングラスのような個性的な香りをもたらします。また、ニュージーランド産の「ネルソン・ソーヴィン」は、まるで白ワインのような上品な香りをもたらします。

ホップが彩るクラフトビールの個性

ホップが彩るクラフトビールの個性

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ホップには多くの品種があり、それぞれが異なる個性を発揮します。このため、醸造家ごとの個性を活かしたクラフトビール造りでは、ホップ選びが大きなカギとなります
その際、ホップは1種類だけを選んで使用するのでなく、複数の品種を組み合わせることもあります。各ブルワリーでは、めざすビールの味わいを描きながら、ホップの種類や組み合わせ、量、投入するタイミングなどを試行錯誤して、独自のレシピを設計しているのです。

近年、クラフトビールの世界では、ホップを大量に使用するIPAが主流ですが、先述の「ソラチエース」や「ネルソン・ソーヴィン」をはじめ、柑橘系の香りが特徴な「シトラ」や「カスケード」、トロピカルフルーツを思わせる「アマリロ」など、独特の香りをもたらすホップが人気を集めています。

一方で、ビターホップを用いて、あえて苦味を利かしたクラフトビールも造られるなど、それぞれの個性を競い合っています。

ホップはビールの苦味や香りのもととして、ビールの味わいを決定づける重要なファクターです。ビールを飲む際は、使用されているホップの品種にも注意しながら味わってみると、より深くたのしめるのではないでしょうか。

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