国内外からの注目が高まる「北海道産ワイン」 独自性にあふれ、個性輝くワイナリーの魅力に迫る <後編>

国内外からの注目が高まる「北海道産ワイン」 独自性にあふれ、個性輝くワイナリーの魅力に迫る <後編>

食の王国・北海道で、新たな名産品として注目を集めている“北海道産ワイン”。後編では、全国のワインファンの間で注目が高まる「ドメーヌ・タカヒコ」、新規就農でワイナリーを開設して3年目となる「ドメーヌ・モン」、家族経営のワイナリーとして北海道で先駆け的存在の「山﨑ワイナリー」に伺い、さまざまなお話しを伺ってきました。

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左は「ナナ・ツ・モリ ピノ・ノワール」。右は理想的な貴腐に感染したピノ・ノワールのみで造られた「ナナ・ツ・モリ ブラン・ド・ノワール」。

左は「ナナ・ツ・モリ ピノ・ノワール」。右は理想的な貴腐に感染したピノ・ノワールのみで造られた「ナナ・ツ・モリ ブラン・ド・ノワール」。

ピノ・ノワールが栽培されているブドウ畑は、かつて7種類の果樹が植えられており、その畑の歴史を後世に伝えていきたいという思いから、ワインには「ナナ・ツ・モリ(七つ森)」と名付けられました。

一般的に認知されている「気候風土」という意味だけではなく、その土地の人や食や文化、歴史、暮らしのすべてが“テロワール(ワインの個性を決定する自然環境要因の総称)”と語る曽我さん。そこには、他の地域には決して真似することができないワインの味が生まれると語ります。

「ワインの完成形のゴールは正直ないと思いますが、イメージしているのは、子どもの頃にクワガタを獲りに行った神社やお寺の裏山で感じた、湿った樹やシダや土の匂いが漂う“自然の香り”を感じられるワイン。誰の心の中にもある、懐かしさや、どこかホッとした気持ちになれるような、スッと自然に涙が流れる、そんなワインを造りたいですね」。

全国のワインファンが注目を寄せている「ドメーヌ・タカヒコ」。
どのようなワインが生み出され続けるのかたのしみです。


ドメーヌ・タカヒコ

北海道余市郡余市町登町1395

http://www.takahiko.co.jp/index.html

「ドメーヌモン」  スノーボードとの出逢いで人生が一変、ワイン造りの道へ

「スノーボードもブドウ栽培も、ずっと自然の中にいられるので幸せです」と話す山中さん。

「スノーボードもブドウ栽培も、ずっと自然の中にいられるので幸せです」と話す山中さん。

同じ余市町登町にあるワイナリー「ドメーヌモン」の山中敦生さんは、国が行っている新規就農者研修制度を利用し、2年間、先に紹介した「ドメーヌ・タカヒコ」の曽我貴彦さんの元でブドウ栽培やワイン醸造について学び、2016年に独立しました。

茨城県出身の山中さんの人生を大きく変えたのは大学時代に始めた“スノーボード”。自然の息吹を肌で感じながら滑るたのしさに惹き込まれ、インストラクターの資格を取得。卒業後は東京の一般企業に就職するも、会社を1年で退職し、冬は北海道でインストラクター、夏はレストランに勤務する生活を始めました。

「インストラクターの仲間たちは地元の農家がほとんどだったのですが、春から秋までは農業、冬はスキー場で仕事をするスタイルでした。地域の生活感の中で自然と共に生きている姿が、大変だけどやりがいに満ちていてとても素敵で。20代の頃からいつか農業をしたいという思いがあったので、40歳を前に自分も農家になろうと決意しました」。

耕作放棄地を一から整地したブドウ畑

剪定作業中の山中さん。栽培から醸造まで、奥様とふたりで行っています。

剪定作業中の山中さん。栽培から醸造まで、奥様とふたりで行っています。

レストラン時代にワインのソムリエ資格を取得していたこともあり、規格に合わせた野菜を作る農業よりも、畑ごとの特長や個性を自由に表現できるワイン造りに惹かれ、ワイナリー開設の準備を始め、2013年に「ドメーヌタカヒコ」の門を叩き、2年間、栽培と醸造の研修を行いました。

「曽我さんには一つひとつの作業をしっかりと身に付けさせてもらい、本当にたくさんのことを教わりました。自分の中では“神”のような存在です(笑)。」

2016年に独立。日当たりのよい東向きの傾斜地が見つかり、土地を整地するところからスタート。

「20年近く耕作放棄されていたため森のような土地で、チェーンソーを使って樹を切り倒すところから始まりましたが、逆に、農薬や除草剤、化学肥料などの残留がなく、さまざまな生物が生息していて、土壌の成分的にもバランスがよかったんです」。

植えたのは、白ブドウ品種の“ピノ・グリ”。研修時に育てた“ピノ・ノワール”と同じ遺伝子を持つブドウで、北海道の野菜の持つ旨味や苦味と相性がよいワインになることから選択したそうです。

「ピノ・グリは果皮の裏側に旨味があるので、皮ごと漬ける方法でワインを造っています」。

「ピノ・グリは果皮の裏側に旨味があるので、皮ごと漬ける方法でワインを造っています」。

伸び伸びとした自然の雰囲気が伝わるワインに

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