黒千代香(くろぢょか)に魅せられて、鹿児島のつくり手たちに会いに行く(後編)

黒千代香(くろぢょか)に魅せられて、鹿児島のつくり手たちに会いに行く(後編)

黒千代香(くろぢょか)は、鹿児島で古くから愛され、飲まれ続けてきた焼酎をたのしむための酒器です。その美しさに魅かれて、この酒器の製作に力を注ぐ4つの窯元を訪ねました。そのうちの2つの窯元を紹介した前編に続き、後編では、残る2つの窯元を紹介します。

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「黒千代香を使って焼酎をたのしむ文化を残していきたい」と語る隆文さん。

「黒千代香を使って焼酎をたのしむ文化を残していきたい」と語る隆文さん。

「長太郎焼本窯」で、5年間の修行時代を過ごした隆文さんにとって、「黒千代香」はとくに思い入れの深い酒器だとか。

「あの頃は、共に作業をする職人さんたちと、毎日のように黒千代香づくりに励んでいました。ろくろを挽く人、口や耳、足をつける人、釉薬をかける人など、多くの人の手が加わって、美しい酒器として仕上げられていく。それを間近で見てきた一人として、いまも黒千代香をつくり続けていますし、黒千代香を使って焼酎をたのしむという文化を残していきたいと思っています」と熱く語ってくださいました。

来客がある時には、数日前から焼酎を水で割って仕込んでおいて、黒千代香を使って人肌に温めて振る舞うというのが、鹿児島流のおもてなし。また、一日の仕事を終えた自分へのご褒美として、明日へのエネルギー源として、焼酎をいただくという文化もあります。

「一日を締めくくる一杯は、黒千代香を使って手酌でいただきたいですね」と隆文さん。そして、焼酎に合わせるおすすめの料理は、地鶏刺し。「玉ねぎとにんにく、しょうがを添えて味わってみてください」。

現在、隆文さんは、NPO法人「西郷隆盛公奉賛会」の理事長を務め、郷土鹿児島の歴史・文化・伝統の研究にも力を注いでいます。南洲翁・西郷隆盛公の月命日には、南洲神社の清掃活動を実施。隆文さんも、必ず参加しているそうです。

日置南洲窯
〒899-3101
鹿児島県日置市日吉町日置5679
TEL:099-292-3477

苗代川焼を受け継ぐ覚悟と情熱「荒木陶窯」

数多くの作品が展示された「荒木陶窯」の商品ギャラリー。黒千代香をはじめ、湯のみや皿、茶道具など、多種多様な器を展示されていますので、お気に入りの一品を見つけることができます。

数多くの作品が展示された「荒木陶窯」の商品ギャラリー。黒千代香をはじめ、湯のみや皿、茶道具など、多種多様な器を展示されていますので、お気に入りの一品を見つけることができます。

父のすすめで、彫刻家・柳原義達氏に師事

400年以上の歴史を受け継ぐ「荒木陶窯」は、多くの窯元が立ち並ぶ日置市の美山地区にあります。

400年以上の歴史を受け継ぐ「荒木陶窯」は、多くの窯元が立ち並ぶ日置市の美山地区にあります。

薩摩焼は、16世紀末に朝鮮半島から渡来した陶工たちが、その技術を薩摩藩内の各地に広めたことを起源としています。そんな陶工たちの一人、朴平意(ぱくへいい)氏が苗代川(現在の美山)に窯を築き、製陶をはじめたことから、この地で焼かれる陶器は「苗代川焼」と呼ばれてきました。

荒木家は朴家の末裔にあたり、「荒木陶窯」は苗代川焼伝統の技と心を現代に伝えています。そして今回、2000年に朴家15代を襲名した荒木秀樹さんに話を聞くことができました。

朴家14代・荒木幹二郎氏の長男として生まれた秀樹さんは、幼い頃からろくろを挽く幹二郎氏の背中を見て育ちました。「数々の受賞歴を持ち『現代の名工』にも選ばれた父を、すごい人だと思い、尊敬していました」と秀樹さん。

中学・高校と柔道に打ち込んできた秀樹さんですが、高校を卒業したら家業を継ごうと考えていたそう。そんな秀樹さんに、幹二郎氏は「息子を大学にやるのが夢だった。あの道標シリーズ※で有名な柳原義達先生のところに弟子入りできないか?」と望みを伝えました。秀樹さんは、その望みを叶えようと受験の準備を始め、めでたく、柳原先生が教える日本大学芸術学部彫刻科に入学することになったのです。
※道標シリーズ:鴉や鳩を題材とした柳原義達氏による一連の作品を「道標シリーズ」と呼んでいます。

東京で過ごした6年間(大学卒業後、研究課程に進む)は、秀樹さんにとってかけがえのない貴重な時間だったとか。「柳原先生をはじめ多くの彫刻家の先生方の指導を受け、彫刻家をめざす先輩たちからも多くを学ぶことができました。あの時代がなかったら、いまの自分はなかった。そう思えるほどに、考え方や生き方の幅が広がった時期でした」。

すっかり彫刻の魅力に取りつかれ、このまま帰らずに彫刻を続けたいと思ったこともあったそうです。それでも、幹二郎氏の元に戻り、家業を継ぐ意志を固めたのは、彫刻を真剣に学んだことで、幹二郎氏の仕事やその作品の価値が、ようやく理解できるようになったからだと言います。

苗代川焼の伝統を受け継ぎ、新しい伝統を創り出す

実際に、ろくろを挽く姿を見せていただきました。「ろくろは一気に引き上げる」という言葉通りに、わずか数分で、かたちが整えられていきました。

実際に、ろくろを挽く姿を見せていただきました。「ろくろは一気に引き上げる」という言葉通りに、わずか数分で、かたちが整えられていきました。

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