国内外からの注目が高まる「北海道産ワイン」 独自性にあふれ、個性輝くワイナリーの魅力に迫る <前編>

国内外からの注目が高まる「北海道産ワイン」 独自性にあふれ、個性輝くワイナリーの魅力に迫る <前編>

食の王国・北海道で、ここ数年新たな名産品として注目を集めているのが“北海道産ワイン”。 かつては「寒すぎてブドウが育たない」ともいわれましたが、栽培方法を研究し、醸造技術の進歩のもと高品質なワインが生まれるようになりました。今では日本を代表する一大ワイン産地となった北海道のワイナリーを、2回の連載に渡ってご紹介します。

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かつて千歳市農協が倉庫として使用していた、札幌軟石を使った石蔵のワイナリー。

かつて千歳市農協が倉庫として使用していた、札幌軟石を使った石蔵のワイナリー。

新千歳空港にほど近い千歳市内にある「千歳ワイナリー」は、1988年に、山梨県の中央葡萄酒株式会社の第2ワイナリーとして誕生しました。

千歳市は国内でも北海道でのみ栽培されている果実「ハスカップ」の名産地であることから、ハスカップを使用した醸造酒の製造に力を入れたいと考え、山梨県勝沼町(現・甲州市)で古くからワイン造りを行っていた中央葡萄酒が、千歳市農協からハスカップ酒造りの加工を受託し、製造を始めたのがはじまりです。
その後、ワインの製造も開始し、93年からは余市町の契約畑でブドウの栽培も始めました。

木村農園との出逢い、ピノ・ノワールへの挑戦

ボトルには「KIMURA VINEYARD」(木村農園)の文字。右は2016年の「プライベートリザーブ」。

ボトルには「KIMURA VINEYARD」(木村農園)の文字。右は2016年の「プライベートリザーブ」。

当時社長を務めていた三澤茂計さんは、フランス・ブルゴーニュの銘酒を生むブドウ品種「ピノ・ノワール」の栽培を、山梨とは地理的な条件が異なる寒冷地の北海道で挑戦してみたいと思い、日本のピノ・ノワール栽培の第一人者である、余市町の「木村農園」の木村忠さんと出会い、取り組み始めました。しかし、なかなか簡単には満足のいくブドウ造りができず、何年も試行錯誤を繰り返したそうです。

「父でもある先代社長のピノ・ノワールへの思いはとても深いものがあります。それだけに、なんとしても成功させたかったのでしょう。木村さんとは強い信頼関係のもと、共に苦難を乗り越え、諦めずに夢を持ち続けました。二人の努力が実り、現在、千歳ワイナリーでは、木村農園産のピノ・ノワールとケルナーの二つのブドウ品種のワインを、メインブランド「北ワイン」として販売しています」と語るのは、現在社長を務める三澤計史さん。

「白ワインのケルナーは、アロマティックな香りの特長を生かし、北海道のイメージと一致するような清涼感や爽やかさを表現しています。酸がある状態で糖分が上がってくるので、甘口もとてもよい味で評判です。一方、赤ワインのピノ・ノワールは、やわらかさやエレガントなニュアンスが素晴らしく、渋味、酸味もバランスがよい。今では樹齢が、15年、25年、35年のものが揃いました。2012年からは、樽熟成中のバレルテイスティング(官能検査)の結果から優れた数樽を選抜して造る「プライベートリザーブ」の展開を開始し、北海道産のピノ・ノワールが持つ可能性に挑戦しています」。

「ピノ・ノワール」を越える黒ブドウには出逢ったことがないと話す三澤計史社長。「今後もこの奥深いブドウを極めていきたいですね」。

「ピノ・ノワール」を越える黒ブドウには出逢ったことがないと話す三澤計史社長。「今後もこの奥深いブドウを極めていきたいですね」。

地元の名産「ハスカップ」への思い

千歳ワイナリーの開設のきっかけとなったハスカップのお酒。

千歳ワイナリーの開設のきっかけとなったハスカップのお酒。

千歳ワイナリーの開設のきっかけとなったハスカップのお酒は、引き続き現在も「フルーツワイン」として販売しており、瓶内で二次発酵させて仕上げた「ハスカップスパークリング」は、美しい色調とクリーミーな口当たりで評判を呼んでいます。

ワイナリーのある千歳市が大切にし続けてきたハスカップは、“地域の方々にとって大切な農産物”と語る三澤社長。
今後も誇りを持っておいしいお酒にしていきたいと話しています。

千歳産のハスカップのみを使用した「ハスカップスパークリング」は色合いが鮮やか。

千歳産のハスカップのみを使用した「ハスカップスパークリング」は色合いが鮮やか。

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