黒千代香(くろぢょか)に魅せられて、鹿児島のつくり手たちに会いに行く(前編)

黒千代香(くろぢょか)に魅せられて、鹿児島のつくり手たちに会いに行く(前編)

黒千代香(くろぢょか)は、鹿児島で古くから愛され、飲まれ続けてきた焼酎をたのしむための酒器です。黒千代香の酒器としての美しさに魅かれて、この酒器の製作に力を注ぐ陶芸家のもとを訪ねました。そして、黒千代香づくりのこだわりや技法、本場ならではの焼酎のたのしみ方について話を聞いてきました。

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青空を釉薬の色模様で再現したという「蒼碧釉」の作品。

青空を釉薬の色模様で再現したという「蒼碧釉」の作品。

長太郎焼の「黒薩摩」には、どこか土の温もりのようなものが感じられます。「それは代々、地元でとれた天然由来のものだけを使って調合してきたからでしょう」と長佑さん。長太郎焼で使う釉薬は、火山の噴出物が堆積したシラス層のうち、酸化鉄を多く含む層から採取した自然石と木灰とを混ぜ合わせてつくられます。通常よりも高い温度で時間をかけて焼き上げることで、やわらかで温かみのある作品を生み出しています。

こうして初代より受け継いだ「黒薩摩」の伝統を守りながら、長佑さんは、日展をはじめとする作品展にも精力的に出品し、数多くの受賞歴があります。貫入(白薩摩特有のヒビ)のない白磁のような作品づくりに挑んだり、自ら「蒼碧釉」と名づけたブルーの作品づくりに没頭するなど、84歳となった現在でも、自ら思い描く理想美の追求に余念がありません。

焼き物との対話ができる、心の余裕を大切に

「この歳になって、ようやく無心で製作に取り組めるようになった」と語る有山長佑さん(84歳)。

「この歳になって、ようやく無心で製作に取り組めるようになった」と語る有山長佑さん(84歳)。

「20年ほど前に、当時は谷山にあった長太郎焼本窯を、中国の大使が訪れたことがありました。短時間の滞在予定でしたが、大使は『ここは落ち着くなあ』とおっしゃって、いつまで経っても立ち上がろうとはしませんでした。彼は、焼き物との対話をたのしんでいたんでしょうね」と長佑さん。訪れる人たちが焼き物との対話によって心を落ち着かせ、ついつい長居をしてしまう。長太郎焼には、そんな力が秘められているのかもしれません。

「使えば使うほどに、光沢や渋さを増して味が出てくるところに、陶器の面白さがあります。その変化を味わうために、心を整え、余裕をもって過ごしてほしいですね。焼き物との対話とは、じつは自分自身と向き合うことなんです。黒千代香から注いだ一杯を味わいながら、少しでも心が落ち着き、豊かな気持ちになっていただけたなら、つくり手としてもそれほど誇らしいことはありません」。

高齢のため、今はもうお酒を飲むこともなくなったという長佑さんですが、定期的に開催している「飲み方会」という集まりには必ず参加しています。もちろん傍らには黒千代香を置いて、持ち寄った焼酎を温めながら、友人たちとの会話をたのしんでいるそうです。肴はキビナゴのお刺身がおすすめ。酢味噌でいただくのが鹿児島流とのことでした。

〒891-0144
鹿児島県鹿児島市下福元町2962-6
TEL:099-268-3313

330年の伝統を未来につなぐ「龍門司焼」

地元産出の土と原料を使い、登り窯で焼成するのが龍門司焼の特徴。工房に併設された売り場には、黒千代香をはじめ、湯のみや皿、茶道具など、多種多様な器を揃えています。

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龍門司焼の継承を決意し、伊勢に修行に出向く

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