中国酒のおいしい飲み方【紅酒(アンチュウ)編】

「紅酒(アンチュウ)」は、日本ではあまり聞きなじみのないお酒ですが、台湾や中国広東省の温暖な気候のなか、「紅麹菌(ベニコウジキン)」を使って造られる醸造酒のことです。ここでは、そんな知る人ぞ知る「紅酒」について紹介します。
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紅酒とは紅麹菌から造られる中国・台湾の醸造酒

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紅酒は、台湾や中国広東省などで造られる醸造酒のことで、別名を「紅露酒(ホンルゥチュウ)」ともいいます。基本的には醸造酒ですが、製造過程で蒸溜酒を加えることから一種の混成酒ともいえます。その名称のとおり、独特な色合いが特徴のお酒です。
紅酒は、蒸したモチ米に紅麹(ベニコウジ)と水を加えて発酵させ、米から造った蒸溜酒を加えて熟成します。アルコール度数は、15~20%前後と醸造酒としては比較的高いものが多く、やや酸味のあるさわやかな味わいが魅力です。
紅麹とは、蒸し米に「モナスカス」という特殊なカビを生やしたもので、現地では「アンカ」とも呼ばれます。この菌は成熟すると鮮紅色の色素を分泌するため、醸造直後は酒色が深紅色となることから紅酒と呼ばれるようになったとのこと。
中国では、紅麹は消化を助け、血行をよくする漢方薬として古典医学書にも記載されているそうです。紅酒が好んで飲まれるのも、そうした健康効果への期待があるからかもしれません。
「紅」酒なのに黄金色をしているのはなぜ?

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紅酒は、紅麹のはたらきによって製造直後は赤色なのが特徴で、その鮮やかな紅色が縁起よいとされ、お祝いの席などに使われるそうです。しかし、当初は赤い紅酒も、1~2年間の貯蔵によって次第に黄金色へと変化していきます。なかでも8年以上貯蔵された古酒は「老紅酒(ラオアンチュウ)」と呼ばれて珍重されています。このように時間とともに、色合いが変わっていくというのも、なんだか神秘的ではないでしょうか。
ちなみに、みなさんは日本にも紅酒に似たお酒があることを知っていますか? それは、近年新潟県で開発され話題となっている「あかい酒」です。この清酒には、紅酒と同じく紅麹が使用されています。機会があれば、ぜひ試してみてください。
紅酒のもうひとつの意味って? 赤ワインを「紅酒」と呼ぶことも

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紅酒は、中国では赤ワインのことを指す場合もあるので注意が必要です。中国では、赤ワインは海外から輸入されるだけでなく、国内でも生産されており、多くの人に飲まれています。
そのため、とくに西洋料理店などでメニューに載っている「紅酒」は、赤ワインを意味する場合があります。
醸造酒の紅酒を頼んだつもりが、赤ワインが出てきたら困りものです。製造直後の紅酒は、色も赤ワインに似ていて混同しやすいため、間違えそうなときには「赤葡萄酒」といえばよいでしょう。
ちなみに、中国の蒸溜酒を意味する「白酒(パイチュウ)」という呼称も、白ワインを意味する場合があります。こうした混同を避けたいときには、同様に「白葡萄酒」といえば間違いがありません。
赤から黄金色へと変化する独特の酒色が個性的な紅酒。日本では珍しいお酒なので、お店で見かけたときには、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
