有名歌人も愛飲した酒を醸す、山梨・萬屋醸造店が生み出した 「生冷 KIREI あまくち、するする」

有名歌人も愛飲した酒を醸す、山梨・萬屋醸造店が生み出した 「生冷 KIREI あまくち、するする」

日本を代表する有名な歌人が宿泊し、以来、こよなく愛飲した酒を醸す山梨・萬屋醸造店。地元で育まれた酒米と名水を仕込み水に、酒造り歴50年以上のベテラン杜氏が熟練の技で醸した「生冷 KIREI あまくち、するする」とは・・・?

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蔵に入社して26年、酒造り歴は57年

長きにわたり萬屋醸造店の製造の責任者である杜氏を務めているのは、田中浩さん。現在75歳、酒造り歴57年になる大ベテランです。地元、長野県諏訪市の高校を卒業後、長野や岐阜、甲府などの酒蔵に務め、26年前から萬屋醸造店で杜氏として酒造りを行っています。

夏場は地元の諏訪でセロリの栽培を行い、冬になると酒を造る生活を50年以上続けていますが、実際の年齢よりも若々しく見える元気なお姿。それもそのはず、若い頃はフルマラソンの大会によく出場されたアスリートでもあり、自己最高タイムは2時間35分の記録を保持しているそうです。「酒造りとマラソンには、どんなにツラくても、途中であきらめず、最後までがんばって走り抜いてゴールしなくてはならないという共通点があります。一言でいうなら『忍耐と努力』でしょうかね(笑)」。

淡麗な仕上げが特長の諏訪杜氏として、長年にわたり酒造りを行ってきましたが、新たな酵母の開発や、日本酒の持つ香りの多様化、飲み手のニーズに合わせた酒質の構成など、50年以上携わってきた中で、酒造りには時代と共にさまざまな変化があったとか。さらに、「長くやってきても、目に見えない微生物の世界を相手にしていく難しさはいつも感じています」と、大ベテランの経歴を持ちながらも、つねに真摯に酒造りと向き合っている様子が印象的でした。

夏はセロリの栽培、冬は日本酒造りに励む田中杜氏。

夏はセロリの栽培、冬は日本酒造りに励む田中杜氏。

地元の農家と結成した「酒米造り協議会」

酒蔵は、2町の合併によって2010年に発足した富士川町にありますが、もともとこの場所は“増穂町”という地名でした。文字通り、山梨県の中でも米どころとして知られ、現在も棚田を中心とした米作りが盛んに行われています。萬屋醸造店では、平成23年に地元の富士川町とその近郊の約10軒の農家と“酒米造り協議会”を結成。酒造りに使用する8~9割の酒米の栽培を委託し、現在は約5品種の酒米を仕入れています。

酒米「玉栄」への思い

酒米の中で、萬屋醸造店が特に力を入れているのが「玉栄(たまさかえ)」。おもに滋賀県で栽培されている酒米ですが、かつての社長が滋賀の農家と契約栽培を行い、その後、地元の増穂町(当時)でも栽培を開始しました。以前は長野県の酒造好適米「美山錦」も栽培していましたが、標高が低い増穂町には向かず。滋賀県で契約栽培を依頼していた「玉栄」なら、地理的な条件も合うことなどから地元で積極的に栽培を行い、以来、萬屋醸造店でもっとも使用量の多い酒米となりました。
「玉栄は原料処理(洗米や浸漬、蒸し米にする工程など)もしやすく、また、玉栄にしか出せない“キレ味”もあり、とても信頼しています。うちのお酒には欠かせない酒米です」と、田中杜氏は語ります。

精米は外部に委託せず、自社で行う萬屋醸造店ですが、山梨県内の酒蔵で自家精米をするのはわずか2蔵。契約栽培の酒米を、日本酒にするまでしっかり自社で管理するこだわりの強さが感じられます。

蔵内に設置されている精米機。

蔵内に設置されている精米機。

山梨の自然の恵みが生きた「あまくち、するする」

この春、新発売された「生冷 KIREI あまくち、するする」は、麹米に山梨県産の「玉栄」、掛米に同じく山梨県産の「あさひの夢」を使用し、南アルプス山系の水を仕込み水に使用して醸された、山梨県産の米と水にこだわって生まれた美酒。

「日本酒にとって大きな影響を及ぼす水がどんな水質なのかは、非常に重要です」と語る田中杜氏。萬屋醸造店が酒造りに使用している水は、名水として名高い「白州」と同じ系列の南アルプス山系の水で、極めて鉄分が少ないのが大きな特長です。
日本酒を造るうえで、水に含まれる「鉄分」は、色や味わいを悪くしてしまうため有害となる成分。できるだけ鉄分の含有量が少ない水が求められており、まさに理想的な仕込み水を使用しています。

「酵母は、華やかな香りと吟醸香を生み出す2種類をブレンドしました。また、通常の純米酒などよりも低温でじっくりと日数をかけて発酵させ、飲み口がやさしい印象のお酒に仕上げています。」と田中杜氏。

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