<J-CRAFT SAKE蔵元探訪その⑤>京都府京都市・増田徳兵衛商店 “にごり酒”と“古酒”の元祖
2018年春に誕生、飲食店で料理とともにたのしめる“生酒(なまざけ)”ブランド『J-CRAFT SAKE』。発泡タイプでフルーティーな特別純米酒をエントリーした「増田徳兵衛商店」を、フードジャーナリストの里井真由美さんとともに訪ねました。
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見た目より、ずしりと重い砲弾。新政府軍が放ったものでしょうか…。
『本朝食鑑』は、江戸時代・元禄年間に発行されたと記録されています。
家屋の中にある“枡”をかたどった、増田徳兵衛商店の紋。
溌剌とした「にごり酒」を産み出した“元祖”
『月の桂 大極上中汲(だいこくじょうなかくみ)にごり酒』から、「にごり酒」の歴史が始まりました。
増田徳兵衛商店と言えば「にごり酒」。今でこそ「にごり酒」は数多く見かけますが、それらのパイオニアとなったのが、13代目が世に送り出した『月の桂 大極上中汲(だいこくじょうなかくみ)にごり酒』。東京オリンピックが開催された1964年のことでした。
きっかけとなったのは、醸造学の世界的権威である故坂口謹一郎博士(東大名誉教授)のすすめ。古くから伝わる酒造りの手法をヒントに、先代と杜氏によって全国の蔵元に先駆けて開発されました。こうして誕生した「にごり酒」に、博士は“元祖”のお墨付きを与えたそうです。
いわゆる「どぶろく」と混同されやすいのですが、「どぶろく」は醪を絞らずに詰めたもの。「にごり酒」は粗目の笊で漉した“清酒”であり、爽やかな酸味が特徴。醪の発酵途中で瓶詰めしているため、シャンパーニュと同じく瓶内で二次発酵が行われ、発泡しているのも持ち味で、まさにお米のシャンパーニュです!
「わずかに残った醪が沈殿しているのを見て、つい瓶を振ってしまった結果、栓が飛ぶとか吹きこぼれるなどのアクシデントも少なくなく、発売当時はクレーム対応でかなり苦労したみたいです」と社長は苦笑。瓶は立てて保管。酵母の活動を抑えるためにしっかり冷やしてから、少しずつ栓を開閉して、ガスを逃がしてやるのが「にごり酒」と向き合うコツだとか。
故坂口博士の言葉が、造り蔵の事務所の壁に残されています。
女性たちを魅了する進化系の『吃驚仰天(びっくりぎょうてん)』。
「低アルコールタイプで味わいにはスッキリ感。愛らしいラベルと合わせて、女子会の主役間違いなしですね」。