スピリッツとはどんなお酒? 種類、度数、飲み方【入門編】

スピリッツとはどんなお酒? 種類、度数、飲み方【入門編】
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スピリッツとは、ジンやラム、ウォッカ、テキーラなど、おもにカクテルベースとして活躍する蒸溜酒のこと。広義では焼酎なども含まれます。今回は、スピリッツの種類や歴史、製法、アルコール度数、4大スピリッツの特徴、飲み方などの基本情報を紹介します。

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スピリッツは世界各地で昔から造られているお酒で、幅広い人たちに多彩な飲み方でたのしまれています。

スピリッツの定義は世界と日本で違う

スピリッツの定義は世界と日本で違う

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まずは、広義のスピリッツと、日本のスピリッツの定義を押さえておきましょう。

広義のスピリッツ

世界的には、蒸溜技術を用いて造られる蒸溜酒全般を「スピリッツ」と呼びます。おもなスピリッツの種類に、ウォッカやジン、ラム(ラム酒)、テキーラ、ウイスキー、ブランデー、焼酎、泡盛、ソジュ、アクアビット、アラック、グラッパ、キルシュバッサーなどがあります。

日本におけるスピリッツの定義

日本の酒税法では、「ウイスキーやブランデー、焼酎、原料用アルコールを除く、エキス分が2度未満のもの」をスピリッツと定義しています。

酒税法におけるエキス分とは、酒類を加熱・蒸発させて、100ミリリットル中に残った成分のグラム数(含有量)のことを指し、その大部分は糖分となっています。

広義ではウイスキーやブランデー、焼酎も同じ蒸溜酒に分類されますが、日本ではスピリッツからは除外され、独立した分類となっています。

蒸溜酒のなかでも、ウイスキーやブランデー、焼酎などの定義に当てはまらないものは、スピリッツに分類されることがあります。与那国島だけで製造されている「花酒」などはその一例です。

スピリッツの製法とアルコール度数

スピリッツの製法とアルコール度数

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スピリッツは、原料に酵母を加え、アルコール発酵させたもろみを蒸溜して造ります。「蒸溜」とは、複数の成分が混ざった液体に熱を加え、沸点の違いを利用して特定の成分だけを分離させる操作のこと。この蒸溜技術を使って、アルコール分のみを抽出したお酒が蒸溜酒、すなわちスピリッツです。

アルコールは水よりも沸点が低く、早く沸騰して気化します。その蒸気を冷却することで、純度の高いアルコールが得られます。スピリッツのアルコール度数が高いのはこのためなのです。

なお、ウォッカやラム、ジン、テキーラに代表される市販のスピリッツのアルコール度数は、高いもので90%を超えるものもありますが、多くは40~50%前後に調整されています。

スピリッツの歴史と名前の由来

テキーラなどのスピリッツを造る古い蒸溜機

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スピリッツ(蒸溜酒)の発祥地は明確にはわかっていませんが、古代メソポタミア(現在のイラク周辺)といわれています。メソポタミア文明の古代遺跡テペ・ガウラからは、紀元前3500年ころに造られた蒸溜器が出土しています。

蒸溜技術がヨーロッパに伝わると、イスラム錬金術とともに発達して、各地でスピリッツが造られるようになっていきました。また、インドや東南アジアにも伝播して、日本でも泡盛や焼酎が造られるようになりました。

ちなみに、蒸溜したお酒を「スピリッツ」と呼ぶようになった理由には、さまざまな説があります。英語の「スピリット(spirit)」には「精神」や「魂」「精霊」などの意味がありますが、その複数形のスピリッツがなぜ蒸溜酒全体を指すようになったのでしょう。

一説には、スピリッツに精霊の一種である「酒の精」という意味があるからといわれています。高温で熱して造られるアルコール度数の高いスピリッツは、しばしば「火の酒」と称されますが、火の酒には精霊が宿っていると考えられたのかもしれません。

世界4大スピリッツの歴史と特徴

世界4大スピリッツの歴史と特徴

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スピリッツの代表格ウォッカ、ラム、ジン、テキーラは、「世界4大スピリッツ」と称されます。この4種について調べてみると、それぞれに生まれた地域の文化や、原料に使われている物産の特色が色濃く表れていることに気づきます。

ここでは4大スピリッツとの歴史や特徴について見ていきます。

ウォッカ(ウオツカ)

ウォッカはロシアやポーランド原産

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ロシアやポーランドなどを原産とするウォッカは、トウモロコシや大麦、小麦、ライ麦などの穀類やジャガイモなどの芋類を原料としていますが、その生産が盛んになったのは、ジャガイモやトウモロコシなど、寒冷地や痩せた土地でも育てやすい作物の栽培が広まってからといわれています。

現在親しまれているウォッカの原型は、19世紀初頭のロシアにおいて白樺炭でろ過する製法が考案され、19世紀後半に連続式蒸溜機が導入されたことで生まれました。

ウォッカの味わいは、一般的に無味無臭でクセが少ないクリアな味わいが特徴ですが、白樺炭の質やろ過にかける時間などによって、味わいに違いが出てくるといわれています。

ラム(ラム酒)

ラムはカリブ海周辺国の特産品

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キューバをはじめカリブ海周辺で生まれたラムは、地域の特産品であるサトウキビを原料に造られます。

ラムの誕生には2つの説があります。ひとつは、16世紀初頭にプエルトリコを征服したスペインの探検家、ファン・ポンセ・デ・レオンの一隊のなかに蒸溜技術を持つ者がいて、ラムを造ったという説。

もうひとつは、17世紀初頭にカリブ海東部のバルバドス島に移住してきたイギリス人が造ったという説です。ちなみにバルバドスには、世界最古といわれる1703年創業のラム蒸溜所もあります。

ラムは、サトウキビ由来の甘い香りをたのしめるお酒で、熟成期間の長さによって「ホワイトラム」「ダークラム」「ゴールドラム」の3タイプに分けられます。「ホワイトラム」は、無色透明のライトな味わいが特徴。「ゴールドラム」は、薄い琥珀色をしていて、樽由来のバニラの香りも感じられます。「ダークラム」は濃い琥珀色で、コクのある濃厚な味わいが魅力です。

ジン

ジュニパーベリーとブルージン

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ジンは、トウモロコシやライ麦などの穀類で造った蒸溜酒に、ねずの実(ジュニパーベリー)など「ボタニカル」と呼ばれる香草・薬草などで風味づけしたお酒です。

ジンは、もともと薬用酒として重宝されていましたが、1660年、オランダの医学教授シルヴィウス博士がジュニパーベリーをスピリッツに漬け、蒸溜してできた薬酒(ジュニエーブル/のちのイェネーファ)を開発。その効用にとどまらず、さわやかな風味と味わいを持つお酒としても注目を集め、各地に広まっていきました。

ジンは製法の違いによっていくつかのタイプに分けられます。ポピュラーなのは「ロンドン・ドライ・ジン」という種類。ジュニパーベリーをはじめとしたボタニカル由来の華やかな香りと、クリアでドライな味わいが大きな特徴です。また近年人気のクラフトジンでは、多彩なボタニカルの組み合わせによって生まれた個性あふれる風味をたのしめます。

テキーラ

メキシコのアガベ畑

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メキシコ生まれのテキーラは、この地域の特産品である「アガヴェ・アスール・テキラーナ・ウェーバー(ブルーアガヴェ)」と呼ばれる竜舌蘭(りゅうぜつらん)を原料としています。

テキーラは、18世紀半ばにメキシコ西北のシエラマドレ山脈で起きた山火事で、甘い芳香を漂わせる焦げた竜舌蘭を見つけたことから生まれたといわれています。

テキーラの種類は原料の使用割合によって2つに分かれます。竜舌蘭100%で造られた「100%アガヴェテキーラ(プレミアムテキーラ)」は原料本来の香りや味わいが特徴。竜舌蘭の使用量が51%以上の「ミクストテキーラ」はサトウキビ由来の糖蜜などが加えられ、飲みやすく調整されています。

また、テキーラは熟成期間の短い順から「ブランコ(シルバー)」⇒「レポサド」⇒「アネホ」⇒「エクストラ・アネホ」と呼称が規定されていて、一般的に熟成が進むほど色合いは濃くなり、味わいはまろやかで深みを増していきます。

4大スピリッツはカクテルのベースに最適!

ジントニック

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4大スピリッツはカクテルのベースとして親しまれています。ここでは、4大カクテルで作る定番カクテルを紹介していきます。

ウォッカベースのカクテル

ミントとライムを飾ったモスコミュール

Brent Hofacker/ Shutterstock.com

ウォッカベースの定番カクテルのなかから、人気の3カクテルを紹介します。

モスコミュール

材料はウォッカ、ライムジュース、ジンジャーエール。1941年にアメリカで生まれたカクテルで、当初はジンジャービアという清涼飲料が使われていました。

スクリュードライバー

材料はウォッカ、オレンジジュース。1940年代にイランの油田で働くアメリカ人技師が、ネジ回し(スクリュードライバー)で材料を混ぜて作ったことから命名されたといわれています。

ソルティドッグ

材料はウォッカ、グレープフルーツジュース。19世紀末のイギリスで生まれたジンベースのカクテル「ソルティ・ドッグ・コリンズ」を、20世紀半ばころにアメリカ人がウォッカベースにアレンジしたカクテルです。

ラムベースのカクテル

ラムベースのモヒートはさわやかなカクテル

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ラムは製法の異なる多彩な種類がありますが、無色透明のホワイトラムを使った定番カクテルを紹介します。

モヒート

材料はホワイトラム、炭酸水、ミント、レモンやライム、砂糖。映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』が起こしたラムブームとともに、一躍人気となったキューバ生まれのカクテルです。

ピニャコラーダ

材料はラム、ココナッツミルクまたはココナッツリキュール、パイナップルジュース。プエルトリコ生まれのカクテルで、ピニャコラーダにはスペイン語で「パイナップルの茂る峠」という意味があります。

ダイキリ

材料はホワイトラム、ライムジュース、砂糖。ラムベースのカクテルの代表格で、その名前は、1898年にダイキリ鉱山でアメリカ人によって命名されたといわれています。

ジンベースのカクテル

ライムとローズマリーを添えたジントニック

DronG/ Shutterstock.com

ジンの魅力が堪能できる定番カクテル3種を紹介します。

ジントニック

材料はジン、トニックウォーター、ライム。17世紀ころに生まれた、ジンベースの定番カクテルです。

ジンバック

材料はジン、ライムジュース、ジンジャーエール。ロンドン生まれのカクテルでロンドン・バックという別名もあります。バック(buck)には雄鹿の意味があり、キックの効いた味わいのため、そう名づけられたといわれています。

マティーニ

材料はジンとベルモットのみ。19世紀半ばに生まれたカクテルで、「カクテルの王様」と呼ばれています。映画『007』の主人公ジェームズ・ボンドが愛したカクテルとしても有名です。

テキーラベースのカクテル

カクテルグラスに注がれたマルガリータ

Teri Virbickis/ Shutterstock.com

テキーラをベースに作る定番カクテルを3つ紹介します。

マルガリータ

材料はテキーラ、ホワイトキュラソー、ライムジュース、グラス用の塩。20世紀初頭に生まれたとされる、テキーラベースのカクテルの代表格です。

テキーラサンライズ

材料はテキーラ、オレンジジュース、グレナデンシロップ。ローリングストーンズなど世界の一流ミュージシャンに愛されたカクテルです。テキーラベースのカクテルのなかでは比較的アルコール度数が低めです。

パロマ

材料はテキーラ、グレープフルーツジュース、トニックウォーター、グラス用の塩。テキーラの本場メキシコで人気のあるカクテルで、パローマと呼ばれることもあります。

4大スピリッツはストレートやロックでもおいしくたのしめるお酒

ライムと塩を添えたテキーラのショット

Julia Sudnitskaya/ Shutterstock.com

ウォッカ、ラム、ジン、テキーラは、ストレートやロックでもたのしめるスピリッツです。

ウォッカのおいしい飲み方

ウォッカを冷凍庫でキンキンに冷やせば、とろみのある舌触りもたのしめます。アルコール度数が高いので瓶ごと冷やしても基本的には凍りませんが、瓶が割れる恐れもあるので、割れにくい容器に入れ替えると安心です。

ジンのおいしい飲み方

ジンはストレートでもロックでもたのしめます。クラフトジンには華やかな香りを持つものもあり、この飲み方なら魅力をダイレクトに感じられるはず。一般的には、飲む前にしっかり冷やすと、香味が引き締まってよりおいしく味わえます。

ラムのおいしい飲み方

ラムのなかでも、木樽で熟成させたゴールドラムやダークラムは常温のままストレートで。基本的には熟成させずに出荷される無色透明のホワイトラムは、ロックで飲むのがおすすめです。

テキーラのおいしい飲み方

テキーラをストレートで飲む場合は、常温のままか少し冷やして、塩やライムと一緒に味わうのが定番。もちろんロックでもたのしめます。

スピリッツを注文する際、バーで一目置かれるちょっとした秘訣

カクテルを作るバーテンダー

VitaminCo/ Shutterstock.com

スピリッツはアルコール度数が高いため、冷凍しても完全に凍ることはなく、シャーベット状になります。この状態だと、カクテルとして混ぜ合わせやすいことから、バーでは通常、スピリッツを冷凍庫でキンキンに冷やして保存していることが多いようですが、じつは、バックバーでも各種のスピリッツを常温保存しています。

そこで、スピリッツのカクテルを注文する際に、あえてバックバーにあるものを指定すると、バーテンダーや周囲の客から「おっ、この客はスピリッツの本当の味わい方を知っているな」と一目置いてもらえるんだとか。一度、試してみてはいかがでしょうか?

日本の酒税法では、ウイスキー、ブランデー、焼酎はスピリッツの分類から外れますが、広義では世界4大スピリッツのウォッカ、ジン、ラム、テキーラと同じスピリッツ。ぜひいろいろなスピリッツをたのしみながら、今回紹介した入門知識をステップに、スピリッツの奥深い世界を覗いてみてくださいね。

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