<J-CRAFT SAKE蔵元探訪その③>青森県八戸市・八戸酒類 クラシカルな酒造蔵で地元産の米を醸

今年の春に誕生、飲食店で料理とともにたのしめる“生酒(なまざけ)”ブランド『J-CRAFT SAKE』。非加熱・無濾過という難易度の高い清酒造りに取り組む蔵元を訪ねる連載で訪れたのは、風格がにじみ出る蔵を有する「八戸酒類」です。
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醸造設備のすべてが入っている蔵の建物は、前の建物が大正時代の八戸大火(1924年)によって焼失したあとに、築かれたもの。「多少のひずみは出ましたが、東日本大震災にも耐えてくれました」という蔵は、クラシックな趣で訪ねてくる人々を魅了。年季の入った木造建築ですが、どこもピカピカに磨きこまれていて、代々の蔵人たちにいかに大切にされてきたのかが伝わってきます。
もし現地に行く機会があったら、ぜひ蔵見学(要予約)に参加して、造りの学習や試飲とともに、ノスタルジックな雰囲気を味わってみてはいかがでしょう。ちなみに元は蔵の事務所であり、現在は国の登録有形文化財に指定されている建物も隣接し、郷土料理を提供するレストランとして営業中。見学の前後に立ち寄るのがおすすめです。

風雨から遮断しているのは、今でも木製の窓枠と和硝子。

黒光りする階段を昇ると、大きな古時計が待ち受けています。
青森県産の米と、敷地から汲み上げた水から醸す

手前が『華想い』。右上が『山田錦』で、左上が『華吹雪』。
青森県産の酒造好適米や、“酒米の王様”とされる『山田錦』を原材料とする『八鶴』ですが、ここでは『純米大吟醸』や『純米吟醸無ろ過生』、そして『J-CRAFT SAKE』にも使用している『華想い』を紹介しましょう。
じつは『華想い』に先駆けて『華吹雪』という耐冷性、耐病性に優れた県産品種があり、おもに純米酒に使用されているのですが、「吟醸レベルまで精米していくと割れやすいという性質があります。そこで『山田錦』と配合したところ、磨きに強い『華想い』が誕生したのです」と加藤さん。
この品種から醸された酒は、香りのバランスがとてもよく、総合的には『山田錦』に匹敵するほど、酒造米としてのポテンシャルが高いとまで評価されるようになりました。

『八鶴』の酒造りの要である「蔵井戸」。
蔵自慢の湧水は、地下100メートルから汲み上げた清冽な自然水。酒造りの邪魔となる鉄やアンモニアを含まず、適量の塩分と硬度(軽度の軟水)を有する水で造った酒は、「夏を越すと味が落ちる “秋落ち”をせずに、味が一段と冴え、より豊醇になるのが特徴です」。
また発酵の際に大きな役割を担う酵母についても、驚きの話がありました。おもに使用している『協会10号酵母』は、酸が控えめで吟醸香が高くなることで有名なのですが、じつはこの酵母の発祥蔵が、この『八鶴』だという説が有力視されているのだそうです。

文字通り地産地消が詰まった『八鶴純米吟醸無ろ過生』
伝統の造りを、後進へと継承していく
