ワインのエキスパート、憧れの「ソムリエ」になるには?

ワインのエキスパート、憧れの「ソムリエ」になるには?
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ワインの資格「ソムリエ」とは、ホテルやレストランでゲストの好みに合わせてワインを提案するワインのエキスパート。ワイン以外の酒類はもちろん、飲食全般の専門知識とテイスティング能力とサービススキルが求められます。ここではソムリエをはじめとするワインの資格、検定について解説します。

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ソムリエとは何をする人のこと?

ソムリエとは何をする人のこと?

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ソムリエとは、レストランやホテルなどでワインの仕入れから管理、ゲストの相談に応じたワインの選定、サーブまでを行うワインのスペシャリストのこと。ソムリエとして働くには、これらに関する専門的な知識とスキルが求められます。

日本では、おもにワインをはじめとする酒類、飲料、食全般の専門的知識とテイスティング能力、サービスの技術をもったプロフェッショナルを指します。

日本におけるソムリエの資格とは?

日本におけるソムリエの資格とは?

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ソムリエの資格を取得するには、 試験に合格する必要があります。日本で 検定を実施し、ソムリエの資格(呼称資格)の認定を行っているのは、「日本ソムリエ協会」と「全日本ソムリエ連盟」の2団体。以下で詳しくみていきましょう。

日本ソムリエ協会:J.S.A.

一般社団法人日本ソムリエ協会(JAPAN SOMMELIER ASSOCIATION 通称J.S.A.)は、ワインを中心とする飲料の普及やソムリエ接遇技術の向上、さらに公衆衛生の向上を目的とする一般社団法人です。

J.S.A.でのソムリエの呼称資格を取得するには、以下のいずれかの職務を通算3年以上経験していること、呼称資格認定試験開催年度の基準日(8月31日)にも月90時間以上の勤務をしていることなどが受験の条件に挙げられています。

◇酒類・飲料を提供する飲食サービス
◇酒類・飲料を取り扱うコンサルタント業務
◇酒類・飲料の仕入れ、管理、輸出入、流通、販売、製造、教育機関講師

一般社団法人日本ソムリエ協会

※編集部より 一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)は前身の飲料販売促進研究会(B.M.R.G.)が1969年に発足、1976年に日本ソムリエ協会と改称。日本でのワインの普及・啓蒙・教育等の中心的な団体として長く活動中です。

全日本ソムリエ連盟:ANSA

全日本ソムリエ連盟(ALL NIPPON SOMMELIER ASSOCIATION 通称ANSA)は、1997年に設立された組織です。ANSAでは知識の詰め込みではなく、実践的なトレーニングを重視したカリキュラムでソムリエの育成に注力しています。

eラーニングやオンデマンドを活用して時間や場所を選ばず学習できること、また、実務経験や現在の職業を問わずにソムリエになれることなどが大きな特徴です。あえて業種を限定せず、酒類を扱う業界への就職を目指す学生やワイン愛好家にまで裾野を広げているのもANSAならでは。

全日本ソムリエ連盟

それぞれの違いとは?

知名度が高いのはJ.S.A.ソムリエですが、それぞれ性質が異なるため、単純にどちらが優れていると断定するのはむずかしそうです。

認知度や信頼度、世界のワイン産業との繋がりなどの観点ではJ.S.A.の資格に軍配が上がります が、飲食業界の慢性的な人手不足や若い世代の育成という視点 からみると、受験条件の厳しさが気になるところ。(その分、J.S.A.ソムリエ資格取得の難易度は高く、活躍の場は拡がる)

一方ANSAのソムリエ資格は、職務経験や年数の縛りがない分、意欲次第で挑戦できますが、業界未経験の場合は即戦力とみなされない場合もあります。

それぞれの団体の資格の性質や取得要件を理解して目的にあったほうを選びたいですね。

一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)の資格

一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A.)の資格

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日本ソムリエ協会(J.S.A.)では、以下のような資格認定試験を実施しています。

「J.S.A.ソムリエ」「J.S.A.ソムリエ・エクセレンス」

ソムリエというと、レストランやホテルなどでゲストのニーズに合ったワインを提案する仕事という印象があるかもしれませんが、J.S.A.におけるソムリエの定義はもっと奥深いものです。

J.S.A.が考えるソムリエとは、飲食、ワイン、酒類、飲料の仕入れ、管理、輸出入、流通、販売、教育機関、酒類製造のいずれかに属し、ワインを中心とする酒類、飲料、食全般の専門的知識やテイスティング能力を有するプロフェッショナルのこと。J.S.A.の認定を受けた「J.S.A.ソムリエ」は、ただワインを提供するだけでなく、商品についての適切な紹介とサービスを中心に、啓蒙、普及、研究、教育を目的とした専門的なアドバイスなども行います。

「J.S.A.ソムリエ」の上位資格に、「J.S.A.ソムリエ・エクセレンス(旧シニアソムリエ)」があります。
試験を受けるためには、J.S.A.ソムリエ資格認定から3年以上、なおかつアルコール飲料を提供する飲食サービスやアルコール飲料に関するコンサルタント業務などを通算10年以上経験している必要があります。

J.S.A.ソムリエ以上にハイレベルな知識と技術を習得したJ.S.A.ソムリエ・エクセレンスは、シェフソムリエやチーフとしての資質が認められる資格です。
2021年の合格率はわずか11パーセント。まさにJ.S.A.ソムリエの上位資格にふさわしいプロフェッショナルです。

「J.S.A.ワインエキスパート」「J.S.A.ワインエキスパート・エクセレンス」

「J.S.A.ワインエキスパート」のおもな対象者はワイン愛好家です。こちらは現在の職業や過去の経験を問わず受験することができます。
職種や経験は不問といっても 試験の難易度は高く、 かなり本格的な資格です。酒類、飲料、食全般の専門的知識、テイスティング能力が問われます。

こちらも「J.S.A.ソムリエ・エクセレンス」と同じく、ワインエキスパート資格認定後5年目以降の人は、上位資格「J.S.A.ワインエキスパート・エクセレンス」に挑戦できます。

全日本ソムリエ連盟(ANSA)の資格

全日本ソムリエ連盟(ANSA)の資格

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全日本ソムリエ連盟(ANSA)が実施する資格認定試験にも種類が複数あります。

「ワインコーディネーター/ソムリエ」

ANSAの「ワインコーディネーター/ソムリエ」は、バル業態や居酒屋業態などの飲食店従事者をはじめ、旅館やホテルなどの宿泊施設従事者、酒類全般を扱う小売店従事者、ワイン愛好家などが取得している資格です。多様化するワインを飲む人が求めるスタイルでサービスまたは販売するスキルが身につきます。

ワインに関する豊富な知識やテイスティング力はいうまでもありませんが、好感度の高い接客力や、TPOに合わせたサービス実行力を身につけたい人にもおすすめです。

「ワインナビゲーター」

「ワインナビゲーター」は、飲む人にワインの魅力を伝えることを目的とした一般消費者向け認定資格です。ワインの専門用語や原料、製造方法はもちろんのこと、歴史や文化、香味の特徴をふまえたたのしみ方まで、幅広い知識が求められますが、いずれも認定セミナーで基礎から学ぶことができます。

認定セミナーは好きな時間、好きな場所で受講できるオンデマンドスタイル。基準の正答率を満たすと「デジタル認定証書」が付与され「ワインナビゲーター」認定となります。

ワイン検定の概要

ワイン検定の概要

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「ワイン検定」とは、ワインの普及を目的に設けられた検定試験です。こちらも日本ソムリエ協会と全日本ソムリエ連盟がそれぞれに検定を用意しています。

日本ソムリエ協会(J.S.A.)のワイン検定

日本ソムリエ協会が主催する「J.S.A.ワイン検定」は、ワインの普及を目的とした検定試験です。試験はブロンズクラス、シルバークラスの2つ。

ブロンズクラスでは自宅でワインをたのしむための知識が。シルバークラスではレストランなどでソムリエとワインについて会話をしたり、ワインショップで好みのワインを探したりする際に役立つ知識が学べます。ワインライフをたのしみたい人や、ワインに興味がある人に向けた入門的な位置づけです。

全日本ソムリエ連盟(ANSA)のワイン検定

全日本ソムリエ連盟が主催するワイン検定は5級から1級までの5段階。そのうち5級と4級は、ネットで随時受験することができます。
いずれもテイスティングはありません。2級以上になるとワインの基礎知識はもちろん、地理や法律、特徴や魅力などを理解して説明できるスキルが身につきます。

その他の資格・検定

その他の資格・検定

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ワインに関する資格認定試験や検定は、日本ソムリエ協会(J.S.A.)や全日本ソムリエ連盟(ANSA)以外にもさまざまな団体が開催しています。

「WSET(Wine & Spirit Education Trust)認定資格」

「WSET」とは、イギリス・ロンドンに本部を構える世界最大のワイン教育機関。WSET認定資格は、世界約70カ国に教育組織が設置された、国際的に認められている認定資格です。
Level1からLevel4までのコースのうち、Level3までは日本語での受験が可能です。ワインを感覚でなく理論として理解できるようになるのが本試験の特徴です。

ワイン業界において最も名声の高い資格「マスター・オブ・ワイン(MW)」を目指すためには、WSETのLevel4 Diplomaを取得し、最低でも3年間かけてステージ1から3の学習プログラムを受講・試験に合格する必要があります。

2022年2月時点でマスター・オブ・ワイン(MW)は世界31か国419人。日本人MWは2人のみで、日本在住のMWは大橋健一MWただ1人。

「日本ワイン検定」

一般社団法人日本ワイン協会(旧「日本ワインを愛する会」母体)では、日本ワインの普及を目的とした「日本ワイン検定」を実施しています。レベルは3級から1級までの3段階。3級は筆記試験のみですが、2級以上になるとテイスティング試験が加わります。
飛躍的な成長を遂げている日本ワインについての正しい知識を身につけるにはぴったりの検定です。


ワインに関する資格を取得すると、ワインとのつき合い方が広がり、よりたのしくワインを飲めるようになります。ぜひ自分に合った検定を見つけてチャレンジしてみてください。

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