〜世界の乾杯シーンでawa酒を〜 業界初・自然発酵で透明なロゼスパークリング純米酒を醸す滝澤酒造

〜世界の乾杯シーンでawa酒を〜 業界初・自然発酵で透明なロゼスパークリング純米酒を醸す滝澤酒造

グラスに注ぐと一筋の泡が美しく立ち上がり、口に含むと舌の上で上品に弾け、心地よい味わいが広がるスパークリングタイプの日本酒が近年注目されています。シャンパンに勝るとも劣らない品質といわれる一定の商品基準をクリアした認定酒「awa酒」のなかで、唯一のロゼタイプを醸す滝澤酒造を訪ね話をお聞きしました。

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6代目の蔵元杜氏が魅了された「奇跡の味」

酒造りの最高責任者である杜氏を務めるのは、社長の滝澤英之さん。家業である滝澤酒造へは、大学を卒業し、東京都内の酒造会社での修行期間を終えた1998年に入社しました。

(滝澤社長)「酒蔵の敷地内に自宅があるので、日本酒がとても身近にありましたが、子どもの頃は酒蔵を継ぎたいとはまったく思わなかったんです。酒は大人が飲んで酔うもので、人によっては人格が変わることもある。子ども心に“お酒”が理解できなくて。蔵人のみなさんが朝早くからたいへんな作業をしているのも見ていたので、酒造りの仕事にどこか抵抗がありましたね」。

高校卒業後は早稲田大学へ。教職に就くことを考えていたそうですが、ある時、思いがけず出会った本によって思いが一変し、酒蔵を継ぐことを決意。卒業後は福生市の石川酒造へ入社しました。

(滝澤社長)「大学4年の時に、日本酒の酒蔵が舞台の漫画『夏子の酒』を読んだのですが、本のなかでのさまざまな描写が自分の子どもの頃の経験と被っていて、突如、自分のなかの“酒造りスイッチ”がONになったんです」。

東京の酒造大手の石川酒造で酒造りを1から学び始めた滝澤さんは、さまざまな工程を習得すると同時に、醸造の世界に魅了されていきました。微生物の活動と向き合い続けるなかで、日本酒が“あるタイミング”に生み出す味わいに強く惹きつけられたそうです。

(滝澤社長)「タンクにお酒を仕込んでから毎日、醪(もろみ)の成分を細かく分析していたのですが、発酵が始まって10日目あたりの味わいが際立っておいしいなと感じました。アルコール発酵で生まれた炭酸ガスで微かにシュワッと感じる飲み口と、甘味と酸味のバランスが絶妙で、『この味わいを商品化してみたい』という強い思いが芽生えました」。

石川酒造で3年間酒造りを学び、滝澤酒造へ入社した滝澤社長は、前任の高橋杜氏に「菊泉」の味を生む酒造りの教えを受けながらさらに技術を磨き、高橋氏が高齢で引退したタイミングで杜氏に就任。連日酒造りに励みながら、ついに念願の発泡性日本酒の商品化に向けて動きはじめました。

(滝澤社長)「研究を重ね、2010年に『彩のあわ雪』をリリースしました。微炭酸で甘酸っぱい飲み口で、“飲みやすい”との声を多くいただきましたが、一方で、発泡感のバラつきがあったり、醪(もろみ)が残っていることで泡が見えにくいなど、改善点も見えてきました。
また、生酒なので、瓶内で活性しすぎて開栓がスムーズにできないなど、お客様からのクレームも多かったんです。そういった声をすべて商品開発のヒントにして改良を重ねていきました」。

「彩のあわ雪」 270ml 594円(税込)
アルコール度数は8度。飲みやすさから日本酒初心者には特に人気。

「一般社団法人awa酒協会」の発足と「10%の壁」

「彩のあわ雪」をよりよい商品にするために、発泡性日本酒についての研究を重ねていた頃、以前から親交が深かった、群馬県・永井酒造の永井社長から、「一緒に日本酒をシャンパンと肩を並べられる存在にしていかないか」との話を受けました。永井社長は当時、グラスの底から真っ直ぐに細やかな泡が立ち上がり、グラスに醪が残らない、透明感のある「MIZUBASHO PURE」を完成させ、スパークリングタイプの日本酒が、海外でも広く乾杯酒として親しまれるシーンの実現に向け、同じ志を持つ酒蔵と協会の結成を思案していました。

(滝澤社長)「永井社長から“シャンパンのような日本酒を造って一緒に世界を目指さないか”との相談を受けました。自分も、より高品質で見た目にも美しい発泡性日本酒を極めたい思いもありましたし、世界に羽ばたける可能性も感じていたので、協会の立ち上げに加わることにしました。

永井社長ほか、数名の蔵元の方々と、協会を立ち上げるための準備を進めていくなかで、協会では商品の品質に厳格な基準を設け、すべてクリアしたものだけを認定酒とすることにしました」


1.米・米こうじ及び水のみを使用し、日本酒であること
2.国産米を100%使用し、かつ農産物検査法により3等以上に格付けされた米を原料とすること
3.醸造中の自然発酵による炭酸ガスのみを保有していること
4.外観は視覚的に透明であり、抜栓後容器に注いだ時に一筋泡を生じること
5.アルコール分は10度以上
6.ガス圧は20℃で3.5バール(0.35メガパスカル)以上

(一般社団法人awa酒協会HPより https://awasake.or.jp)

(滝澤社長)「滝澤酒造でも、この基準を満たした新たな商品の開発に取り組み始めました。
ちょうど『彩のあわ雪』の見た目に透明感がないことが気になっていて、もっとスマートさを出したいと思っていたことや、理想のガス感にしたい改善点があったので、その部分をクリアするべく改良に努めました。

発泡性の高い日本酒を造るには、炭酸ガスを人工的に瓶内に加える手法と、酵母の発酵によって生まれた自然の炭酸ガスを封じ込める技法がありますが、私はずっと後者の、瓶内での二次発酵にこだわって発泡性日本酒を造っていました。しかし、アルコールの度数が高くなるとどうしても醪の活性が弱くなってしまい、理想とするガス感を出せないんです。

『彩のあわ雪』はアルコール分8度。これまでよりアルコール分を高くし、さらに自然発酵による炭酸ガスでガス圧を高め、透明に仕上げるにはどうしたらよいのか。アルコール分10%の壁が大きく立ちはだかり、かなり悩みました。

試作を繰り返すなか、二次発酵の期間や温度が重要なポイントであるのがわかり、また、フランスの伝統的なシャンパンの製法を応用するなど、改良に改良を重ね、2016年、ついに商品化することができました」

「菊泉 ひとすじ」 720ml 4950円(税込)
透明感のある瓶内二次発酵の発泡性日本酒。2019年に製法特許を取得しています。

世界初・透明なロゼタイプのawa酒が誕生

2016年に「一般社団法人awa酒協会」が設立し、滝澤社長は副理事長に就任。awa酒(スパークリング日本酒)の普及に努めます。さらに、2018年にはロゼタイプのawa酒の商品化を実現させました。

「菊泉 ひとすじロゼ」 720ml 9,900円(税込)

(滝澤社長)「シャンパンと同じように、日本酒にもロゼタイプがあってもいいのではと思いました。色合いも華やかなので、ハレの日に飲むお酒として親しんでもらいたいなと。
薄いピンク色を出す技法は、古代米の使用、紅麹の使用、赤色酵母の使用、と3つのパターンがあるのですが、古代米は精米の工程で色が抜けてしまいますし、紅麹は味わいにクセが出てしまうので、品質も安定してきれいな色が出せる赤色酵母を使用することにしました。ただ、酵母の特性で、単体で使うとベリー系の香りが強く際立ってしまうので、程よい香りと味わいになるように新たに別のお酒を開発して、赤色酵母のお酒とブレンドして調整しています」。

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