「グレーンウイスキー」とはどんなウイスキー? 原料の種類から代表的な銘柄まで紹介

「グレーンウイスキー」とはどんなウイスキー? 原料の種類から代表的な銘柄まで紹介
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グレーンウイスキーは、トウモロコシやライ麦などの穀類を原料として造られるウイスキーです。その多くはブレンデッドウイスキーに用いられています。今回は、グレーンウイスキーの特徴や歴史、味わい方、代表的な銘柄などについて紹介します。

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グレーンウイスキーは穀類で造るウイスキー

グレーンウイスキーは穀類で造るウイスキー

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グレーンウイスキーの原料や製法、大量生産されるようになった背景についてかんたんにおさらいします。

グレーンウイスキーは、穀類を主原料としたウイスキー

グレーンウイスキーは、トウモロコシ(コーン)やライ麦、小麦などの穀類を原料としたウイスキーです。

グレーンウイスキーのもととなるもろみは、トウモロコシなどの主原料に大麦麦芽(モルト)を加えて造ります。大麦麦芽を加える理由は、大麦麦芽の糖化酵素を利用することで主原料の糖化が進み、発酵に適した状態になるからです。

グレーンウイスキーでは、もろみの蒸溜に連続式蒸溜機を使います。蒸溜過程で雑味などがほとんど取り除かれるため、基本的にはクセが少なく、クリアでライトな酒質に仕上がるのが特徴です。

グレーンウイスキーは、穏やかでクリーンな性質から「サイレント(静かな)スピリッツ」と呼ばれることもあります。これに対して、個性が強いモルトウイスキーは、「ラウド(声高な)スピリッツ」と呼ばれます。

グレーンウイスキーが生まれた背景

グレーンウイスキーの誕生には、1644年ころから課されるようになったウイスキー税が関係しています。1707年にイングランドとスコットランドが合併してイギリスの前身であるグレートブリテン王国が誕生すると、議会はそれまで課していた蒸溜税を大幅に引き上げ、さらに1725年には麦芽に課税するなど、次々と税金を課していきました。

これに反発したスコットランド北部の造り手たちは、ハイランド地方の山奥に逃れて密造を行い、できあがったウイスキーを樽に詰めて山中に隠しました。このとき偶然に生まれたのが、樽熟成により琥珀色に変化したモルトウイスキーの原型であるといわれています。

一方で、立地条件的に密造が困難なスコットランド南部のローランド地方の造り手たちは、ウイスキーの生産を続けるためにコスト削減をめざし、原料費が大麦麦芽より比較的安価な小麦やライ麦、発芽していない大麦などの穀類でウイスキーを造るようになりました。これがグレーンウイスキーのはじまりだといわれています。

グレーンウイスキー躍進のきっかけは連続式蒸溜機の登場にあり

技術革新を背景とした産業革命期(18世紀半ば~19世紀)に、グレーンウイスキーの生産に不可欠な連続式蒸溜機が登場します。

連続式蒸溜機は、1826年にスコットランド人のロバート・スタイン氏が発明しました。それを、1830年にアイルランド人のイーニアス・カフェ(コフィー)氏が改良して特許(パテント)を取得。以来、「カフェスチル」や「パテントスチル」「カフェ式連続式蒸溜機」などと呼ばれるようになりました。

連続式蒸溜機は、単式蒸溜機をいくつも並べたような構造をしていて、もろみを連続的に投入して効率よく蒸溜できるため、大量生産に向いています。また、アルコール濃度の高い蒸溜液を抽出できるのも利点です。

連続式蒸溜機によってグレーンウイスキーの大量生産が可能になると、モルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜ合わせたブレンデッドウイスキーが誕生しました。シングルモルトウイスキーよりもまろやかで飲みやすいブレンデッドウイスキーは世界中で人気となり、ブレンドに用いられるグレーンウイスキーの生産量も増えていきました。

なお、その当時、連続式蒸溜機を積極的に取り入れたのがスコットランドの中東部に位置するローランド地方の造り手です。一説には、ハイランド地方のウイスキーの風味に勝てなかったため、対抗策として導入したといわれています。世界で流通するウイスキーの約8~9割はブレンデッドウイスキーといわれ、今でもローランド地方では、グレーンウイスキーが多く生産されています。

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グレーンウイスキーはブレンデッドウイスキーに欠かせない存在

グレーンウイスキーはブレンデッドウイスキーに欠かせない存在

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グレーンウイスキーは、ブレンデッドウイスキーに欠かせないウイスキーです。ブレンデッドウイスキーのブレンディング事情から、その大切な役割について再確認します。

グレーンウイスキーはブレンデッドウイスキーの土台となるもの

ブレンデッドウイスキーは、ブレンダーが厳選したモルトウイスキーとグレーンウイスキーを絶妙にブレンディングすることで完成します。ブレンデッドウイスキーにおけるモルトウイスキーは、スモーキーやフルーティー、スパイシーといった個性を決めるもので、グレーンウイスキーはその味を支える土台のようなものと捉えられています。

一般的なモルトウイスキーとグレーンウイスキーのブレンディング比率は、2:8から4:6程度といわれていますが、ウイスキーによって比率はさまざま。なかには、ほとんどがグレーンウイスキーで構成されているものもあるようです。

グレーンウイスキーはブレンデッドウイスキーの脇役? 主役?

ブレンデッドウイスキーの約6~8割を占めるグレーンウイスキーの役割は、個性の強いモルトウイスキー同士を優しく包み込み、それぞれの香味を引き出して、バランスのよい味わいに調えることにあります。グレーンウイスキーがなければ、親しみやすく穏やかな酒質は生まれないのです。

また、ブレンデッドウイスキーのコンセプト次第では、最初にベースとなるグレーンウイスキーを決めてから、さまざまなモルトウイスキーを組み合わせて、銘柄ごとの個性を築き上げていく場合もあるといわれています。

つまり、グレーンウイスキーは脇役ではなく、ブレンデッドウイスキーの骨格を支える、なくてはならない存在です。銘柄ごとの個性を彩るモルトウイスキーが主役と思われがちですが、見方を変えれば、グレーンウイスキーこそが主役ともいえるのかもしれません。

グレーンウイスキーをそのまま味わうたのしみ方もある

グレーンウイスキーをそのまま味わうたのしみ方もある

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生産されたグレーンウイスキーの多くはブレンデッドウイスキーに使用されていますが、近年はグレーンウイスキーそのものの魅力をたのしめるようになってきています。

グレーンウイスキーならではの味わいを求める声も

グレーンウイスキーは、ブレンデッドウイスキーに用いられるだけの存在ではありません。グレーンウイスキーにも独特の味わいがあり、そこに造り手の工夫や熟成を凝らせば、モルトウイスキーとはまた異なる魅力が生まれます。「グレーンウイスキーをそのまま味わいたい」という声が出てくるのは当然のこと。

そんなニーズに応えるべく、近年、市場に登場し、新たな潮流となりつつあるのが「シングルグレーンウイスキー」です。まだまだ生産量は少ないものの、その飲みやすさから人気が高まってきています。

シングルグレーンウイスキーはグレーンウイスキーの魅力をダイレクトに味わえる

シングルグレーンウイスキーとは、単一の蒸溜所のグレーンウイスキーだけでできたウイスキーのこと。当然ながら、モルトウイスキーはブレンドされておらず、まさにグレーンウイスキーが主役のウイスキーです。

シングルグレーンウイスキーは、グレーンウイスキーならではの軽やかで飲みやすい口当たりをたのしめるのが特長で、トウモロコシや小麦、ライ麦などの素材の持ち味や、樽熟成由来の奥深さなども存分にたのしめるように仕上げられています。

シングルグレーンウイスキーの代表的な銘柄

ここではシングルグレーンウイスキーの代表的な銘柄を3本紹介します。日本のシングルグレーンウイスキーの実力をぜひ堪能してみてくださいね。

「ニッカ カフェグレーン」:原料由来の味わいが魅力

「ニッカ カフェグレーン」

出典:アサヒグループホールディングス株式会社

早くからグレーンウイスキーに注力してきたニッカウヰスキーが造る、「日本のシングルグレーンウイスキーの元祖」ともいえる銘柄。伝統的なカフェ式連続式蒸溜機ならではの、原料由来の成分が色濃く残った、甘い香りと蜂蜜のような甘さ、なめらかな口当たりが魅力です。

ニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝氏が「本物のおいしさ」を追求して導入したカフェ式連続式蒸溜機は、今や世界でも希少な存在。この蒸溜機の魅力が詰まった奥深い味わいを堪能するなら、まずはストレートがおすすめです。それから、「ニッカ カフェグレーン」をベースにした、「マンハッタン」などのカクテルでたのしんでみてくださいね。

製造元:ニッカウヰスキー株式会社
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販売元:アサヒビール株式会社
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サントリー「知多(ちた)」:気軽に飲みたい軽やかな味わい

サントリー「知多(ちた)」

出典:サントリースピリッツ株式会社

グレーンウイスキー原酒を生産している、愛知県のサントリー知多蒸溜所が手がけるシングルグレーンウイスキー。知多蒸溜所では、連続式蒸溜機による世界で見ると稀な、様々なタイプのグレーン原酒のつくり分けを行っている。またサントリーではその知多蒸溜所のグレーン原酒を、ホワイトオーク樽やスパニッシュオーク樽、ワイン樽などを使用して樽熟成によるつくり分けも行い、こだわりのグレーンウイスキーを生み出しています。

多彩なグレーン原酒のみを組み合わせてつくられる「知多」は、ほのかな甘い香りと、熟成感がありながら軽やかでスムースな味わいが特長。「知多」と炭酸水を1:3.5くらいの比率で合わせた、「風香るハイボール」でたのしむのがおすすめです。


製造元:サントリースピリッツ株式会社
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サントリー イエノバ
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「キリン シングルグレーンウイスキー 富士」 :甘い香りに酔いしれる

「キリン シングルグレーンウイスキー 富士」 :甘い香りに酔いしれる

出典 :キリン シングルグレーンウイスキー 富士 ブランドサイト

静岡県のキリン富士御殿場蒸溜所が世界に誇る、香味豊かなシングルグレーンウイスキー。「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ2020・2021・2022」において、3年連続で「ゴールド」を受賞しています。

こだわりの蒸溜法で香味を引き出した個性豊かな3種のグレーンウイスキー原酒をブレンド。ほんのり甘く豊かな樽熟香と白ブドウやオレンジピールのフルーツ香が感じられ、余韻にはほのかな甘さとウッディさやスパイシーさが続くグレーンウイスキーに仕上げています。重厚で華やかな香味を持つバーボンタイプの原酒と、柔らかい口当たりで味わい深いカナディアンタイプの原酒、そして軽やかに全体を包み込むスコッチタイプの原酒、それぞれの特長をたのしめる味わい深い1本です 。



製造元:キリンディスティラリー株式会社 富士御殿場蒸溜所
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穀類を原料としたグレーンウイスキーは、ブレンデッドウイスキーに用いられることが多く、脇役のように思われることもありますが、近年はグレーンウイスキーそのものをたのしめる銘柄も増えています。機会があれば、ぜひ味わってみてくださいね。

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