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我らお酒にひと言あり 六酒仙、かく語りき

吉田類の居酒屋 各駅停車の旅

Vol.11 高知 『ひろめ市場』 後編

いい酒場は実のところ、どこの街にもあるものだ。
今夜、飲みたいお店が見つかっていないのだとしたら、
それはあなたが、いい酒場の見つけ方を知らないだけかも。
日本中の酒場を渡り歩いてきた吉田類さんが、
各駅停車で旅するように街々の名店を訪れ、飲み、食い、語らいながら、
街へ、店への愛を語ります。

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「吉田類 居酒屋各駅停車の旅」高知編、前回までは「葉牡丹」を訪れた後、「ひろめ市場」に新たに加わった「ひろめバル」をお届けした。スタイルが異なる5店のバルが出店した「ひろめバル」では、「ひろめ市場」の新たな息吹を感じることができたのではないだろうか?
そして、今回は「ひろめ市場」の核心へと迫っていく。
前回も触れたが、ここは全天候型の屋台村のような施設。テーブルとイスが設営されたお城下広場というエリアでは各店で購入した食べ物やドリンクを持ち寄って、フードコート的に楽しむことができるほか、土産や生鮮食品などを販売する商店もあり、土佐の食文化がギュッと詰め込まれている。

そんな施設で注目すべきといえばどこか? 改めて場内をぐるっと一回りして、やっぱり一番目に留まるのは、ここ「明神丸」だった。何せ、オープンキッチンになった目の前の炉が豪快に炎を上げているのだから、いやが上にも客の視線は集まる。
その正体は、そう、土佐名物のカツオのタタキだ。炎を上げる藁焼きがパフォーマンスを重視したただの演出ではないことは、味わえばすぐに分かる。分厚いカツオの切り身には、程よい血合いの味があり、そこに重なりあうカツオの脂と旨み。生姜やニンニクをたっぷりとのせて醤油で味わってもよし、塩で味わってもこれまた旨い。休日ともなれば、長蛇の列ができるというその人気ぶりも至極納得。土佐の地酒(他の店で購入したもの。嬉しいことに、酒を買える店は周りにたくさんある)を合わせるたびに訪れる幸せといったら…。

こみ上げてくる幸せをいつまでも噛み締めていたいのは山々だが、次の店を紹介しなくてはならない。
カツオのタタキに続くのは、これまた高知の名物である餃子だ。「高知で餃子?」と思われるかも知れないが、実は高知では屋台餃子が庶民の味として親しまれている。その歴史を紐解けば、昭和45年に繁華街の外れに現れた、とある屋台が発祥とされる。包みたて、焼きたての餃子を振る舞っては、多くの飲んべえで賑わい、営業を終えると屋台を畳み、また翌日屋台が現れる。そんな店に続けと、今では、夜になると中央公園近くのグリーンロード沿いに屋台が立ち並び、高知の名物屋台群として有名になった。その発祥となった屋台こそ、「ひろめ市場」にも店を構える「安兵衛」なのだ。
この店の餃子、まず見た目からして酒を誘う。こんがりとキツネ色になった焼き目に、ぷっくらとしたフォルム。自他共に猫舌を認める僕でも、すぐさまかぶりつきたくなるほどの艶っぽさ。頬張れば、皮はパリッと破れ、中から肉汁がジワリと広がっていく。その旨さの秘密は、多めの油で“焼き揚げ”ているため。キャベツが多めに入っているので、味にくどさもなく、ビールのあてにはまさにぴったりなのである。

無論、「ひろめ市場」の魅力はこれらだけに限らない。土佐の地酒飲み比べが楽しめる「土佐蔵社中」、くじら料理の専門店「千松」、土佐の珍味を扱う「珍味堂」、飲み疲れた時の癒しの甘味処「ほてい茶屋」…etc。残念ながら、今回の高知編では紹介しきれない店が「ひろめ市場」や市内にはまだまだたくさんある。

志半ばで切り上げるのは心苦しいが(いや、日帰りで東京へ戻ることを考えると、我ながらよく飲んだ)、次の機会があれば泊まりがけでじっくりと高知を案内したい。本場のいごっそう(※Vol.9参照)とは何か。たっぷりと紹介できると思う。

今月、訪ねた店
ひろめ市場
高知県高知市帯屋町2-3-1
8時~23時、日曜7時~23時
(店舗により営業時間は異なる)
1・5・9月の第2または第3水曜定休
高知周辺で、もう一軒。
一軒家

外観こそリニューアルされて新しいものの、L字カウンターからなる店内はいぶし銀の昭和酒場。メニューも必要最低限、いかにも酒のあてという料理が並ぶ。名物は骨付きの鶏モモ肉を甘辛のタレで焼き上げた「とり足」。高知の地酒、土佐鶴との相性も抜群。

高知県高知市追手筋1-7-6
088-823-7266
17:00~22:30LO
定休日:日曜
焼鳥せいわ

高知では数少ない古くから営む、焼き鳥の専門店。開店と同時に常連がおしかける理由はもちろん焼き鳥をはじめとした鳥料理が旨いから。焼き鳥をはじめ刺身、唐揚げ、酢の物など豊富な鳥料理が揃っている。味噌ダレで鶏皮とニラを炒めた、土佐焼きは必食!

高知県高知市はりまや町2-3-1
088-882-3064
17:00~22:30
定休日:日曜・祭日
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吉田類

よしだ・るい 高知県生まれの酒場詩人。酒場や旅をテーマに執筆活動を行うほか、イラストレーター&エッセイストとしても活躍。BS-TBS『吉田類の酒場放浪記』ほか、TVでも活躍。主な著書に『酒場歳時記』(NHK出版)、『東京立ち飲み案内』(メディア総合研究所)などがある。俳句愛好会『舟』を主宰。