たのしいお酒.jp

我らお酒にひと言あり 六酒仙、かく語りき

吉田類の居酒屋 各駅停車の旅

Vol.10 高知 『ひろめ市場』 前編

いい酒場は実のところ、どこの街にもあるものだ。
今夜、飲みたいお店が見つかっていないのだとしたら、
それはあなたが、いい酒場の見つけ方を知らないだけかも。
日本中の酒場を渡り歩いてきた吉田類さんが、
各駅停車で旅するように街々の名店を訪れ、飲み、食い、語らいながら、
街へ、店への愛を語ります。

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前回から引き続いて、今回も高知から「吉田類 居酒屋各駅停車の旅」をお届けする。さて、後ろ髪を引かれる思いで「葉牡丹」(Vol.9をご覧あれ)をあとにして、さぁ、お次はどこへ向かおうか。そんな高知のハシゴ酒にとてつもなく頼りになるスポットがある。それが今回紹介したい「ひろめ市場」。土産なども購入できる観光スポットとして人気を集める一方、飲兵衛にとっては昼間から酒を飲める桃源郷でもある。

「ひろめ市場」へは「葉牡丹」からも歩いて10分とかからない場所にあるが、その前にすぐ近くにある高知城に立ち寄るのが吉田類の流儀だ。なぜなら、日本100名城にも選定される高知城は、江戸時代に土佐藩が置かれ、天守閣や追手門などが現存、城跡は国の史跡にも指定される、文化財の宝庫。もちろん、土佐藩の歴史を学ぶにもうってつけなのである。とはいったものの、午前中から飲んでいる身としては、何より天守閣までのちょっとした道のりが程よい酔いざましにもなる。

そして、お待ちかねの「ひろめ市場」。その概要をざっと紹介するとこんな感じになる。ひろめ市場は、「龍馬通り」、「お城下広場」、「いごっそう横丁」などと名付けられた8つのエリアで構成される施設で、40の飲食店と20の物販店がひしめく。屋内にある屋台村とでもいえば想像しやすいのではないだろうか。自由広場と名付けられたエリアにはフードコートのように自由に利用できるテーブルが用意され、各店でオーダーした料理や酒を持ち寄って楽しめるのだ。
そんな「ひろめ市場」に、2016年12月に待望の新エリアが誕生したという。その名も「ひろめバル」。面白そうなので、今回はここを攻略することにしよう。

「ひろめバル」に新たにオープンしたのは5店舗。バル街というだけあって、今までのひろめ市場にはないちょっと洒落た店が並んでいる。まず、目にとまったのは「バルメシ」という一軒。ここは、高知で40年以上の歴史がある惣菜店がはじめた店で、鶏肉や魚介類、野菜など土佐の食材で作ったバルらしい料理が並ぶ。ひとりでサクッとワイン1杯から楽しめるからうれしい。

と、くつろいでいると、何やらいい匂いが鼻腔をくすぐってきた。そのもとを辿ってみると、どうやら隣の店の窯が正体のようだ。こちらは「土佐の窯」というピザに特化したバルで、約500度の窯で焼き上げるピザが自慢。定番のマリナーラ(トマトソース、ニンニク、オレガノのピザ)が490円で味わえるリーズナブルな価格もいい。さらに秀逸なのはワインのラインナップだろう。「東京とは違い、高知はまだワイン文化が浅いんです。ワインに慣れていない人にも気軽に楽しんでもらえるように、質のいいワインを低価格で提供しています」とスタッフ。まさか、「ひろめ市場」で、チャコリ(バスクなどスペイン北部で親しまれる、微発泡の低アルコールワイン)と出会えるとは思いもよらなかった。ほかにも、「ひろめバル」には、農場直営の四万十ポークを使った店、市内の土佐山産のじゃがいもを中心とした料理を出す店など、特化型の店が並ぶ。

しかし、こうやって、バルで飲んでいると、画家としてヨーロッパを転々と旅をしていた時代を思い出す。自分が日本の立ち飲み酒場を掘り下げ、世に紹介していくきっかけになったヨーロッパのバルの文化が、こうして高知にも根付こうとしているのだから、うれしい話だ。さあ、ワインも楽しんだことだし、さて、次はどのエリアに向かおう。

今月、訪ねた店
ひろめ市場
高知県高知市帯屋町2-3-1
8時~23時、日曜7時~23時
(店舗により営業時間は異なる)
1・5・9月の第2または第3水曜定休
高知周辺で、もう一軒。
一軒家

外観こそリニューアルされて新しいものの、L字カウンターからなる店内はいぶし銀の昭和酒場。メニューも必要最低限、いかにも酒のあてという料理が並ぶ。名物は骨付きの鶏モモ肉を甘辛のタレで焼き上げた「とり足」。高知の地酒、土佐鶴との相性も抜群。

高知県高知市追手筋1-7-6
088-823-7266
17:00~22:30LO
定休日:日曜
焼鳥せいわ

高知では数少ない古くから営む、焼き鳥の専門店。開店と同時に常連がおしかける理由はもちろん焼き鳥をはじめとした鳥料理が旨いから。焼き鳥をはじめ刺身、唐揚げ、酢の物など豊富な鳥料理が揃っている。味噌ダレで鶏皮とニラを炒めた、土佐焼きは必食!

高知県高知市はりまや町2-3-1
088-882-3064
17:00~22:30
定休日:日曜・祭日
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吉田類

よしだ・るい 高知県生まれの酒場詩人。酒場や旅をテーマに執筆活動を行うほか、イラストレーター&エッセイストとしても活躍。BS-TBS『吉田類の酒場放浪記』ほか、TVでも活躍。主な著書に『酒場歳時記』(NHK出版)、『東京立ち飲み案内』(メディア総合研究所)などがある。俳句愛好会『舟』を主宰。