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我らお酒にひと言あり 六酒仙、かく語りき

中林美和の、あらためて、日本酒入門

Vol.11 これを読めば日本酒がもっと楽しくなる!1年で学んだ「日本酒のイロハ」を振り返ってみました

日本酒は大好き。よく飲みます。だけど、実はあんまり詳しくないんです--。
そんな女性を代表して、モデルの中林美和さんが<日本酒の先生>に
「日本酒のイロハ」を教えていただく本企画も、連載開始から1年が経ちました。
そこで今回は、これまで中林さんが学んできた日本酒の基本知識を、
振り返ってまとめてみました!

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日本酒への大きな誤解?!そして種類による味の違いについて

まず覚えておきたいのは、「日本酒=太る」というイメージは間違いであるということ。先生は中林さんにこう説明しました。

「日本酒は100mlあたり約100kcalで、ほかのお酒と比べても大差がありません。『日本酒=太る』というわけではなく、太るとしたらそれはおつまみの食べ過ぎが原因と考えたほうがよさそうです。それに日本酒は美容にもよいと言われています」(先生)

だからこそ、世の中の女性たちに、もっと日本酒について知ってほしい。そんな思いで本連載は始まりました。

日本酒をよく飲むという人でも、種類によってどんな違いがあるのか答えられる人は意外と少ないもの。例えば、「本醸造」「吟醸」「純米吟醸」、さらには「生酒」「にごり酒」について、どこがどう違うのか、ご存知でしょうか?

米と米麹を原料として作られるのが、「純米(大)吟醸」「純米」、そこに醸造用アルコールを加えたものが、「(大)吟醸」「本醸造」であり、さらに醸造用アルコール以外の原料も入ったお酒が「普通酒」と呼ばれます(編集部注:醸造用アルコール以外のものが添加されていない普通酒もあります)。

一般的に醸造用アルコールが入っている日本酒は辛口、純米は豊潤な口当たり、と覚えておくとよかったのでしたね。

そういった原料による違いのほかに、お米の磨き方(削り方)によっても、味わいは変わってきます。「大吟醸」は原料となるお米を5割以上も磨いて造られたもの。磨いた部分が4割以上だと「吟醸」です。なぜ、お米を磨く必要があるのでしょうか?

「日本酒の味は水とお米、特にお米の磨き具合で左右されます。この磨き具合を『精米歩合』というのですが、お米を磨かずに使うと、いろいろな雑味が混じってしまうのです。そこで『心白(しんぱく)』というもっとも雑味がない、白く不透明な部分を残すように、余分な部分を磨くのです。磨いていくことで雑味をなくし、フルーティーさを際立たせる。これは江戸時代に発見された製法で、当時はとても高価なお酒にだけ使われていました。それこそ、お殿様くらいでないと飲むことができなかったんです」(先生)

「吟醸」がお米を4割磨いた日本酒で、「大吟醸」というのはお米を5割以上磨いた日本酒、そして「純米」という名前が付くか付かないかでアルコール添加の有り無しを表しているということでしたね。
Vol 1 純米?吟醸?日本酒の種類って、一体何が、どう違うの?

加えて、日本酒には「生酒」「にごり酒」といった区分のしかたもあります。生酒は「火入れ」をしていないお酒のことでしたね。

「搾りたての日本酒には生きた酵母が入っていて、そのままにしておくと、その働きでどんどん品質が変化していってしまうんですね。そこで酵母の働きを止めるために、一般的な日本酒は『火入れ』といって、品質を保つための加熱処理を行います。通常は搾りのあとと、瓶詰めの前の2回です。火入れをすることで品質が一定に保てるんですね。」(先生)生酒は品質管理は難しいのですが、「生酒」は火入れをしないので、非常にフルーティーな日本酒本来の味わいが楽しめます」(先生)

Vol 2 日本酒にも「生」がある? 貴重な「生酒」について解説!

「にごり酒」はもろみを完全に濾さずに、にごりを残したお酒のことです。一言でにごり酒といっても、霞(かすみ)のような淡くにごったものから発泡性のあるものまでさまざまな種類があり、味わいも甘口から辛口まで、たくさんのにごり酒が市場に出回っています。
Vol 9 日本酒が苦手な人こそ飲んでほしい!「にごり酒」の奥深い世界を学ぶ

なぜ産地によって味が変わるの?

そして、日本酒の初心者がもっとも気になるのが、産地による違いでしょう。居酒屋などお店のお品書きには、ほとんどの場合、商品名と産地が書いてあります。それだけに、地域によって味わいにどのような違いがあるか知っておくことは、日本酒と親しむ近道といえるのです。

日本酒の味わいを決める要因には「お米」「酵母」「造り手」などさまざまなものがありますが、ここでは産地と深く関わる「水」の違いについて振り返ります。

有名な産地として、「灘(兵庫)」や「伏見(京都)」といった名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。どちらも日本有数のお酒の名産地として知られていますが、その理由に、名水が湧く土地であるということが関係しています。

日本は各地で名水が湧いており、水によって地域ごとの違いが出ます。日本酒は酵母で発酵します。ミネラル分が多い硬水で造ると、いろんな化学反応を酵母が起こすので複雑な味わいになります。一方、ミネラル分が少ない軟水は化学反応が起こりにくいので、日本酒本来のすっきりとした味わいになりやすいというわけです。

先ほどの灘と伏見でいえば、灘が硬水で、伏見が軟水の土地です。そのために灘産の日本酒は「男酒」と言われるほどしっかりとした辛口が特徴になり、伏見産はなめらかな味わいから「女酒」とも言われています。ほかの地域では、新潟の日本酒は「淡麗辛口」、広島は「甘口」という傾向があるそうです。

取材時、中林さんには灘の「櫻正宗」と伏見の「英勲」を飲み比べてもらいました。「英勲は甘い! 櫻正宗は『これぞ日本酒!』というしっかりした味ですね。兵庫と京都で産地は近いのに、お水が違うとこれだけ味が違うんですね」と、水の違いが生み出す味わいの違いに驚いていました。
Vol 4 日本酒に「男」と「女」がある?都道府県別の味と香りの違いを学ぶ

もっとお酒が美味しくなるグラスや料理の選び方

連載では、日本酒の美味しい飲み方についても学びました。例えば、グラスの選び方にもルールがあります。先生はオーストリアのワイングラスメーカー「リーデル」の理論を例に、中林さんに3つの法則を解説してくれました。

「まず第一に、お酒というのは注ぐ量によって、香りの感じ方が変わる。第二に、飲みくちの厚さによって味が違うように感じる。そして第三に、グラスの形で香りの感じ方が変る。この3つの法則は、日本酒にも応用できるものなんです。

リーデル理論では、赤ワインのように香り高いワインを飲むときは、大きくて飲み口がすぼまっているグラスを選びます。香りをグラスの中に閉じ込める効果がありますから、杯を傾けたときに、ふわっと香りが広がるのです。反対に白ワインなど香りが穏やかなワインは、小さくて飲み口が開いているグラスを選びます。空気に触れることで香りを豊かにしつつ、アルコール臭を飛ばしてくれるからです。ワインを日本酒と入れ替えても、まったく同じことが当てはまります」

一方、日本酒でよく使うお猪口は、基本的に熱燗に使うもの。実はお猪口は、吟醸酒など香り豊かな冷酒を飲むことには、あまり適していないそうです。

「例えば、テキーラなどを飲むショットグラスがありますよね? もし、これで日本酒を飲んだとしたら、お酒がダイレクトに喉に入ってしまうので、お酒の香りも味もあまりわかりません」(先生)

だから冷やした日本酒もワイングラスで飲むのがおすすめと先生は言います。生酒や吟醸酒は香りが豊かなので、赤ワインのグラスに注ぐ。一方、香りが抑えめの純米酒などは、白ワインのグラスに注ぐ。実際に飲んでみると、これだけでも、かなり味の印象が変わりました。
Vol 5吟醸酒を楽しむならワイングラスがぴったり?味と香りを最大限に引き出す酒器選びの大切さを学ぶ

また日本酒を美味しく飲むためには、料理とのマリアージュも大切です。マリアージュとはフランス語で「結婚」。つまり、異なるもの同士のマッチングを意味します。お酒の業界では、料理とお酒の相性の良さを表すときに使われています。

マリアージュのポイントは「同調」です。つまり、日本酒と料理の両方に共通する点を探す。温度、香り、雰囲気……、何でもいいので「似ているところ」を見つけて合わせる。辛口の純米酒や本醸造酒には、味が濃い料理が合います。また、範囲を少し広げて、大吟醸のような華やかで清涼な風味、柔らかな甘みを持つお酒は柑橘のテイストもありますから、柑橘を添えて食するような白身魚のお刺身などとは手を取り合ってくれる組み合わせになります。高いお酒だから、どんな料理にも合うとは限らないのです。
Vol 3高い日本酒が何にでも合うわけじゃない?意外と知らない料理と日本酒の相性を学ぶ

ちなみに、世の中にはチョコレートに合う日本酒というのもあります。新潟県の越の華酒造さんによる「純米原酒 カワセミの旅」というお酒は、味日本酒の辛さを表す「日本酒度」がマイナス30度という超甘口。フランスの天才ショコラティエといわれるジャン・ポール・エヴァン氏からも、チョコレートにぴったりだと絶賛され、彼のパリのお店にも置かれているそうです。

チョコレートに合う日本酒を選ぶ際にも、マリアージュの基本である「同調」を意識します。チョコレートの特徴である「甘味」「香ばしい」「コク」といった要素を持つ日本酒を探して合わせる。すると意外にも、「にごり酒」がチョコレートに合うのだと先生は教えてくれました。実際に中林さんが飲んでみると……。

「これ、びっくりです! にごり酒とチョコレートがこんなに合うなんて……。チョコレートを食べるのも、日本酒を飲むのも止まらくなっちゃいそう(笑)」(中林さん)
Vol 7それって本当にアリなの!?チョコレートに合う日本酒について学ぶ

中林さんも「耳が痛い」と語ったよくある間違いとは?

1年続いた本連載では、日本酒の豆知識についてもたくさんのことを学びました。「新酒と古酒の違い」「日本酒カクテルの作り方」といった、覚えておくともっと日本酒が楽しめる知識のほかに、中林さん自身が「耳が痛いお話です」と身につまされる話題もありました。

普段から、よくお父さんに熱燗をつけてくれと頼まれるという中林さん。しかしいつも「下手だ!」と怒られてしまっていました。その理由は、日本酒の温め方にあります。先生がこう指摘してくれました。

「熱燗で何よりも重要なのは温度の管理です。お水が沸騰するのは100度ですよね。でも、お酒は78度で沸騰します。なので、それよりも温めてしまうとアルコールが飛んでしまいます。高いお酒でも安いお酒でも、違いがわからなくなってしまうのです」

「熱燗=沸騰するまで温める」という間違った思い込みが、日本酒の香りや味を損なってしまっていたのです。日本酒の温め方には、人肌燗(約35度)・ぬる燗(約40度)・熱燗(約50度)の3種類がありますが、ほとんどの日本酒は人肌燗にしておけば外さないそうです。
では、どうやって温めればうまく熱燗が作れるのでしょうか?

「鍋でお湯を沸かしたときに、火をつけっぱなしのまま、お銚子を入れてしまうことがよくあります。でも、これは絶対にやめてください。必ず火を止めてからお銚子を入れてください。火がついたままだと、お酒まで沸騰してしまいますからね。

温める時間はお銚子の厚さや大きさで微妙に異なりますが、だいたい火を止めてから30秒ほどが人肌燗です。ぬる燗なら1分弱、熱燗は1分30秒が目安ですね。とにかくお銚子を入れる前に火を止める。そして時間を計る。これさえ覚えておけば、まず失敗はしませんよ」(先生)
Vol 6温度が変われば味も香りも変わる!日本酒と温度の正しい関係を学ぶ
このように、家庭ですぐに使えるテクニックも学んだ中林さん。「間違った飲み方をして、『日本酒はちょっと……』と言っている人がいたら、『こうするともっと美味しいよ』って教えてあげたくなりました」と語るほど、日本酒の美味しさ、奥の深さについてもっと世の中の人に知ってほしいという思いを持つようになったそうです。

ほかにも連載では、知っているようで意外と知らない日本酒の飲み方や情報について紹介しています。この記事をきっかけに、あなたも中林さんのように、日本酒の楽しさをあらためて見直してみてはいかがでしょうか。

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中林美和

中林美和

なかばやし・みわ 東京都出身、モデル。雑誌「CanCam」(小学館)の専属モデルを経て、様々な雑誌やTV、イベントなどで活躍。結婚、出産を経て現在は、雑誌「VERY」(光文社)やTVのナビゲーターなど多方面で活躍中。料理上手としても知られる。著書に、『おんぶにだっこでフライパン〜4人育児の奮闘記〜』(KADOKAWA)、『Mama Hawaii』(KKベストセラーズ)、『美和ママごはん♡』(セブン&アイ出版)などがある。