たのしいお酒.jp

我らお酒にひと言あり 六酒仙、かく語りき

中林美和の、あらためて、日本酒入門

Vol.9 日本酒が苦手な人こそ飲んでほしい! 「にごり酒」の奥深い世界を学ぶ

日本酒は大好き。よく飲みます。だけど、実はあんまり詳しくないんです。
そんな女性を代表して、モデルの中林美和さんが<日本酒の先生>に「日本酒のイロハ」を教えていただく連載企画。
第9回目の今回も、お酒を通じてお客様の満足と幸せを追求し、豊かな生活に貢献する「酒類コーディネイター」としても知られる株式会社SBS代表取締役社長 吉田和司(よしだかずし)氏を先生にお招きし、「にごり酒」について学びます。

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もともとすべての日本酒は「にごり酒」だった

先生:今回は「にごり酒」についてお話します。

中林:お願いします。

先生:いきなりですが、中林さん。戦国時代まで、日本のお酒といえば、にごり酒が主だったことをご存知ですか?

中林:えっ、そうなんですか?

先生:現在飲まれているほとんどの日本酒は「清酒」ですよね。しかし戦国時代の終わり頃まで、日本でお酒といえば、高級品の「諸白酒(もろはくしゅ)」と庶民的な「どぶろく」だったんですよ。どちらも白く濁った「にごり酒」です。当時はまだ、お酒を「濾す」という考えがなかったんです。

それが変わったのは、ある「事件」がきっかけでした。江戸時代の終わり、兵庫の伊丹にある「鴻池(こうのいけ)酒造」という造り酒屋のお酒が、かなりの人気を博していました。しかし人気の反動か、この店に恨みを持つ人もいました。あるとき、鴻池酒造を恨んだ人物が、商売用の樽酒の中に「灰汁」を投げ入れました。

中林:せっかく作ったお酒が台無しです。

先生:おっしゃる通り。オーナーの鴻池新六は途方に暮れました。しかし、時間が経って灰汁の炭が沈殿していくと、その上の層はきれいに澄んだ水のようになっていることに気が付きます。これをすくって飲むと……、美味しい!

これは「炭濾過」といって、現在でも行われている製法の起源になっています。鴻池はこの清酒を大量生産することで莫大な財を築きます。

その結果、財を元手に「鴻池銀行」を始め、これが「三和銀行」となり、その後は合併を繰り返えして「三菱東京UFJ銀行」となっています。酒造メーカーが財閥になり、日本を代表する銀行になったというお話です。それだけ「澄んだお酒」は当時の庶民にとって衝撃的なお酒だったんです。

シャンパンみたいなお酒もある、にごり酒の種類

中林:お話を戻すと「にごり酒」が、日本酒の原点ということでしょうか?

先生:そうです。日本酒を楽しむなら、ぜひ、にごり酒についても知っておいていただきたい。というわけで今回は、にごり酒のおさえておきたいポイントを紹介しましょう。まずは、にごり酒の種類です。

中林:にごっているお酒がにごり酒、というわけではないんですか?

先生:実は種類がいくつかあるんです。ひとつは「霞(かすみ)酒」。霞とはもともと、冬から春に季節が変わるとき、大気中の水分が霧や霞となって外の景色が淡くぼやけて見える様子を表す季節の言葉です。この「霞酒」は、そうした情景とグラスの中が同じように見えることから、そう呼ばれています。

霞酒は時に、「ささにごり」とも「うすにごり」とも呼ばれます。清らかな水が少しだけにごった様子が特徴です。今回は、岐阜県の三輪酒造さんの「白川郷 ささにごり」を持ってきました。ちょっと飲んでみてください。

中林:あ、飲みやすいです。

先生:そうでしょう? よく冷やして飲むことで、すっきりした喉越しを味わえます。市場にそれほど数は出回っていない、少し珍しいお酒なので、見かけたらぜひ飲んでみてください。

さて、次は一般的な「にごり酒」です。これは甘口から辛口まで、たくさんの種類が市場に出回っています。今回は新潟県の白龍酒造さんの「純米にごり酒 ぼたん雪」という、名前にも季節感のあるお酒を持ってきました。すっきりとした、クセのない甘さを楽しめると思います。

中林:うん、私が飲んだことのあるにごり酒も、こんな感じです。女性も飲みやすい。

先生:ええ。でも、もしかしたらこちらのほうが女性はお好きかもしれません。発泡性のにごり酒です。「米のシャンパン」ともいわれる、京都の増田徳兵衛商店さんの「月の桂本醸造大極上 中汲にごり酒」を飲んでみてください。

中林:香りがフルーティーですし、味も爽やかで……、本当にシャンパンみたい! 日本酒のイメージが変わりますね。これは女性が好きだと思います。これって、どうやって造られるんですか?

実はにごり酒も「清酒」

先生:そもそも、日本酒というのは、もろみ(仕込み水に麹や酒母などを入れて発酵させた液体)から造られるものです。そのままではにごっているので、もろみを酒袋などに入れて搾り、酒と酒粕を分離させます。そうして濾したものを「清酒」と呼ぶわけです。

現在の酒税法上、にごり酒も清酒に分類されています。まったく濾してないわけではなく、目の粗い酒袋で濾すために、「おり」と呼ばれるもろみが酒に混じることでにごるのです。実際の製法としては、ザルのようなもので濾した液体を、清酒とブレンドすることで造られています。

中林:もろみを濾さないお酒はないんですか?

先生:あります。それが一般的に「どぶろく」と呼ばれるお酒です。酒税法上でも清酒ではなく、「その他醸造酒」という扱いです。しかし、今は一部の地域でしか造られていません。どぶろくは明治時代の初期まで自家製の醸造酒として広く飲まれていましたが、1899年(明治32年)に国の政策によって禁止されました(従って、現在どぶろくを自宅で密造すると法律により罰せられます)。

現在、どぶろくの醸造が許可されているのは、どぶろくを用いた伝統的な神事を行う神社や地域のみです。これを「どぶろく特区」といいます。そのひとつが世界遺産にも登録された飛騨の白川郷で、先ほどの「白川郷 ささにごり」は、そうした歴史にちなんで名付けられたものです。

中林:どぶろくとにごり酒は似て非なるものなんですね。

先生:少なくとも酒税法上はまったく別のお酒です。このほかにも、2006年の酒税法の改正により、それまでもっとも有名だったにごり酒が清酒として扱われなくなったケースもあります。それが「五郎八」というお酒です

こちらはもともと、にごり酒の代名詞のようなお酒でしたが、現在は清酒ではなく「リキュール」として販売されています。

中林:どうしてですか?

先生:酒税法の改正により、副原料使用料に規制がかかってしまったんです。しかし、「五郎八」は歴史あるお酒だったので、原材料や製法を変えることなく製造が続けられました。味を守った結果、清酒の条件に当てはまらなくなってしまったんです。現在の区分では清酒ではないのですが、冬季限定のお酒として、今も酒飲みの間で愛されているため紹介しました。

にごり酒は冷やして飲むのが基本!

先生:さて、発泡性のにごり酒の造り方ですが、こちらは味だけでなく、発酵の方式もシャンパンと同じです。酵母が生きている状態のまま瓶に液体を入れ、そのまま二次発酵させます。瓶の中で発酵が進むことで炭酸ガスを発生させ、シュワシュワのにごり酒ができあがるというわけです。

特にこの「月の桂本醸造大極上 中汲にごり酒」は発酵する力がすごくて、開栓の際は気をつけないと、天井まで中身が吹き出してしまいます。油断すると、せっかくのお酒が半分くらいなくなってしまうんです。

中林:シャンパンは飲む直前まで冷やしておくじゃないですか。ということは、このにごり酒もよく冷やしておけば、泡が吹き出すことはない?

先生:その通りです。このような活性にごり酒と言われるお酒は開栓する際、直前までキンキンに冷やしておいてください。冷温で保存することで酵母の発酵が止まり、泡があふれることがありません。絶対に常温にしないこと! 最悪の場合、保存中にボンッと栓が抜けて中身があふれてしまうことがあります。

中林:そのぐらい繊細なお酒なんですね。

先生:ただ、それだけに喉越しは抜群ですし、日本酒が苦手な方でもおすすめできる味わいになっています。こうした発泡性のにごり酒だけでなく、にごり酒というのは基本的に、冷やして飲むのがおすすめです。

また、にごり酒は保存しておくと、次第に中身がにごりの部分と澄んだ液体に分離していきます。これをあえて混ぜずに、そーっと上澄みの液体だけ飲んでみてください。滅多に経験できない味わいが楽しめると思いますよ。

中林:これは、とってもすっきりした味の日本酒ですね!

先生:そうでしょう? 今度は、ドロドロしたもろみの部分だけを飲んでみてください。

中林:こっちは……、ちょっと辛いですね。にごり酒が凝縮されたような味です。

中林:この飲み方を知っていたら、日本酒の通になった気がしますね!

先生:最初にお話したように、にごり酒は日本酒の原点といえるお酒です。日本酒に興味を持ったら、ぜひ歴史あるにごり酒も試してみてください。

<中林さん、いかがでした?>

にごり酒って、今まではなんとなく「飲みやすい日本酒」くらいのイメージでしたけど、先生の説明を聞いてかなり印象が変わりました。あえて中身を混ぜずに分離させる飲み方も、まったく知らなかったので自分でも試してみようと思います。それに女性ってシャンパンが好きじゃないですか? 発泡性のにごり酒は本当に飲みやすかったので、女子会でも積極的に友達におすすめしたいですね。

太田光代Vol.8▶
冬にたのしむ、にごり酒の世界

今回勉強したお酒

白龍酒造 純米にごり酒ぼたん雪

白龍酒造

純米にごり酒ぼたん雪

720ml

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三輪酒造 白川郷純米吟醸ささにごり酒

三輪酒造

白川郷純米吟醸
ささにごり酒

720ml

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増田德兵衞商店 月の桂 本醸造
大極上中汲にごり酒

増田德兵衞商店

月の桂 本醸造
大極上中汲にごり酒

720ml

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宝酒造 松竹梅白壁蔵澪スパークリング清酒

菊水酒造

五郎八

720ml

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中林美和

中林美和

なかばやし・みわ 東京都出身、モデル。雑誌「CanCam」(小学館)の専属モデルを経て、様々な雑誌やTV、イベントなどで活躍。結婚、出産を経て現在は、雑誌「VERY」(光文社)やTVのナビゲーターなど多方面で活躍中。料理上手としても知られる。著書に、『おんぶにだっこでフライパン〜4人育児の奮闘記〜』(KADOKAWA)、『Mama Hawaii』(KKベストセラーズ)、『美和ママごはん♡』(セブン&アイ出版)などがある。