たのしいお酒.jp

我らお酒にひと言あり 六酒仙、かく語りき

中林美和の、あらためて、日本酒入門

Vol.5 日本酒に「男」と「女」がある?吟醸酒を楽しむならワイングラスがぴったり?味と香りを最大限に引き出す酒器選びの大切さを学ぶ

日本酒は大好き。よく飲みます。だけど、実はあんまり詳しくないんです。
そんな女性を代表して、モデルの中林美和さんが<日本酒の先生>に「日本酒のイロハ」を教えていただく連載企画。

第5回目の今回も前回に続き、株式会社SBS代表取締役社長 吉田和司(よしだかずし)氏を先生にお招きし、日本酒文化に欠かせない「酒器選びの大切さ」について学びます。

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「夫婦水入らず」の本当の意味

先生:今回もよろしくお願いします。

中林:私、第3回で教わった「料理に合わせて日本酒を選ぶ」ことを実践しています! 同じお酒でも、料理に合わせて種類を変えることで、こんなに印象が変わるんだって驚きました。ますます日本酒が楽しくなっています。

先生:それはうれしいですね。では今回は、もっと深い日本酒の世界を紹介しましょう。「酒器」選びについてです。

中林:酒器……お酒を飲む器のことですか?

先生:そうです。実は日本酒という文化にとって、酒器はとても大切なものなんですよ。例えば中林さん、「ちょっとこれ飲んでみて」と自分が飲んだ杯を他人に渡したことはありませんか? 親しさが増して喜ばしいことなんですが、唇が触れた杯をそのまま渡すのは本来、失礼なことなんです。

中林:それは知りませんでした。

先生:「夫婦水入らず」「親子水入らず」という言葉がありますよね。「夫婦や親子は他人ではないのだから、杯を水で洗う必要はない」という意味です。他人と同じ杯をやり取りする際には、一度洗ってから渡すべきだという価値観があったからこそ生まれた言葉なんです。

中林:なるほど~、そういう意味だったんですね。

先生:ええ。もともと日本人にとってお酒は、神様に捧げる神聖なものでした。だからお酒を入れる器も、同じくらい大切にしてきたんです。酒器について学ぶことが、日本酒をより深く学ぶことにもつながります。何より、もっとお酒が美味しく飲めるようになりますからね。

中林:ぜひ教えてください!

酒器選びの3法則をリーデルに学ぶ

先生:突然ですが、「リーデル」というグラスをご存知ですか?

中林:あ、知っています。ワイングラスで有名なところですよね。

先生:そうです。オーストリアのワイングラスメーカーで、260年以上の歴史があります。このリーデルがなぜ有名になったのかというと、「同じワインでもグラスの形が変われば、味も変わってしまう」ということを初めて発見し、ワインの種類ごとに理想的なグラスを作ったブランドだからです。このリーデルのワイングラスの捉え方には、3つの法則があります。

中林:どんな法則ですか?

先生:まず1番目は、お酒というのは注ぐ量によって、香りの感じ方が変わる。2番目は、飲みくちの厚さによって味が違うように感じる。そして3番目は、グラスの形で香りの感じ方が変わってしまう。この3つの法則は、日本酒にも応用できるものなんです。

中林:日本酒もワインと同じように、味と香りの種類がたくさんありますからね。

先生:その通りです。勉強の成果ですね。例えばリーデル理論では、赤ワインのように香り高いワインを飲むときは、大きくて飲み口がすぼまっているグラスを選びます。香りをグラスの中に閉じ込める効果がありますから、杯を傾けたときに、ふわっと香りが広がるのです。

反対に白ワインなど香りが穏やかなワインは、小さくて飲み口が開いているグラスを選びます。空気に触れることで香りを豊かにしつつ、アルコール臭を飛ばしてくれるからです。ワインを日本酒と入れ替えても、まったく同じことが当てはまります。

▲ 香り高いお酒に使いたい、飲み口がすぼまっているグラス

だから日本酒を飲むときも、香りに合わせて「大きくて飲み口がすぼまっているグラス」と「小さくて飲み口が開いているグラス」の2種類を用意していただいたほうが、より本格的に楽しめると言えるのです。

2種類のワイングラスをそろえよう

中林:日本酒といえば、「お猪口」はどうなんですか?

先生:あれは基本的に熱燗に使うものだと考えてください。吟醸酒など香り豊かな冷酒を飲むことには、あまり適していません。例えば、テキーラなどを飲むショットグラスがありますよね? もし、これで日本酒を飲んだとしたら、お酒がダイレクトに喉に入ってしまうので、お酒の香りも味もあまりわかりません。

中林:飲むというより、流し込むというか。

先生:そうです。香りと味の両方をしっかり感じてもらうには、できればワイングラスで飲んでいただくのが理想的です。

中林:えっ!? 日本酒もワイングラスがいいんですか?

先生:先ほどの3つの法則を手軽に満たしてくれるのが、ワイングラスだからです。生酒や吟醸酒は香りが豊かなので、赤ワインのグラスに注ぐ。一方、香りが抑えめの純米酒などは、白ワインのグラスに注ぐ。これだけも、かなり印象が変わるはずですよ。実際に飲んでみてください。

▲ 白ワインのグラスで八戸種類の蔵しぼり生酒『海風 詩』をいただく

中林:あ、本当ですね! ワイングラスに変えるだけで、こんなに香りをしっかり感じられるなんて意外でした。

先生:もちろん、たくさんの酒器を使い分けてもらえるなら、それに越したことはないのです。ワイングラスを使うと手軽にリーデル理論を実践できる、というわけでおすすめしています。

中林:ひとつ質問をしてもいいですか? よく居酒屋で日本酒を頼むと、木枡にコップが入った状態で出てきて、お酒がコップからこぼれるくらい注がれます。あれって、日本酒の飲み方として正しいんですか?

先生:間違っているということはありませんが、ほとんどの店のグラスは清酒用のものではないので、本格的に日本酒の味や香りを楽しむことには向いていません。あれは店にとって助かるんですよ。割れないし、洗いやすい。だから普及したのですが、自宅で日本酒を飲むなら、ワイングラスで飲んでいただくのがいいと思います。

まだまだある個性的なご当地酒器

先生:最初に説明したように、日本人はお酒の種類を選ぶのと同じくらい、酒器選びを楽しんできました。それだけに各地方ごとに個性的な酒器があります。例えば、「鳴き徳利」というのがあります。これはお酒を注ぐと、うぐいすの鳴き声のような音がする徳利で、江戸時代に生まれました。

中林:本当にうぐいすみたい。面白い!

先生:高知県には「高知酒器」があります。天狗やひょっとこの面をかたどった「可杯(べく杯)」というのは、杯が転がってしまうので、飲み干すまで置けないようになっています。ほかにも、お猪口に穴が空いており、指で押さえ続けないとこぼれてしまう「穴あき杯」というのもありますね。もともとはお座敷遊びに使われていたそうです。

中林:お酒を飲む、ただそれだけのことからこんなに遊びが生まれるなんて。なんだか、お酒を取り巻く文化のことももっと知りたくなっちゃいますね。

先生:もうひとつ、これは意外に知られていないことなんですが、枡でお酒を飲むときも、飲み干すまでは置かないのがマナーなんです。全てを知る必要はありませんが、どうしてそうなんだろう、と考え出すと興味が湧いてきますよね。

▲ <べく杯>土佐のお座敷遊びで古くから使われている「べく杯」。サイコロで指名された人が飲み干すまで下に杯を置けないよう、天狗やおかめなど個性的な形をしている。
▲ <穴あき杯>これも「べく杯」のひとつ。底に穴が空いているため、指で押さえながら一気に飲み干さなければならない。

中林:この「蛇の目ちょこ」はよく見ますね。

先生:蛇の目の柄は、清酒が澄んでいるかどうか見極めるためにあります。濁っていると蛇の目の円が歪んでいるように見えるんです。ちなみに、きき酒用としては1合入る大きな杯を使います。

▲ よく見る蛇の目の杯にも意味がある

中林:形や模様にちゃんと理由があるんですね。

先生:ええ。いろいろと説明しましたが、酒器選びで大切なことは、何よりもシチュエーションに合わせることです。相手・料理・雰囲気などによって、お酒の味が変わるように、これらの酒器もシチュエーションに応じて選んでいただくと、より楽しく飲むことができますよ。

中林:今回も勉強になりました。ありがとうございます!

<中林さん、いかがでした?>
日本酒にはワイングラスが合うってことが驚きでした。これだけたくさんある酒器をそろえておくことは大変ですけど、大きめと小さめな2種類のグラスを用意しておくだけで、日本酒の楽しみ方はぐっと広がりますね。これもさっそく、実践してみたいと思います。

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中林美和

中林美和

なかばやし・みわ 東京都出身、モデル。雑誌「CanCam」(小学館)の専属モデルを経て、様々な雑誌やTV、イベントなどで活躍。結婚、出産を経て現在は、雑誌「VERY」(光文社)やTVのナビゲーターなど多方面で活躍中。料理上手としても知られる。著書に、『おんぶにだっこでフライパン〜4人育児の奮闘記〜』(KADOKAWA)、『Mama Hawaii』(KKベストセラーズ)、『美和ママごはん♡』(セブン&アイ出版)などがある。