たのしいお酒.jp

我らお酒にひと言あり 六酒仙、かく語りき

中林美和の、あらためて、日本酒入門

Vol.4 日本酒に「男」と「女」がある?日本酒に「男」と「女」がある?都道府県別の味と香りの違いを学ぶ

日本酒は大好き。よく飲みます。だけど、実はあんまり詳しくないんです。
そんな女性を代表して、モデルの中林美和さんが<日本酒の先生>に「日本酒のイロハ」を教えていただく連載企画。

第4回目は、前回に引き続き株式会社SBS代表取締役社長の吉田和司氏に、
「地域ごとの日本酒の違い」について伺います。

  • facebook
  • twitter

日本酒の生産量1位の県とは?

先生:中林さん、「くだらない」という言葉をご存知ですか? 実はもともとの語源は、日本酒の世界にあるんです。

中林:そうなんですか?

先生:日本酒が庶民に飲まれるようになった江戸時代には、主に灘のお酒が最高級品として扱われており、江戸では品質のいいお酒が珍しかったんです。当時は「上洛」といって、京都に行くことを「上る」、京都から江戸に向かうことを「下る」と言っていました。

中林:今は反対ですね。

先生:そうです。それで当時の最高級品だった灘の日本酒は、京都を通って江戸へと運ばれていったために「くだり酒」と呼ばれていました。各地の日本酒も、京都から江戸に「下って」行くお酒と、江戸に「下らない」お酒に分かれていったんです。こうして江戸に運ばれない日本酒は「悪いお酒」という意味の「くだらない酒」と言うようになり、現在の「くだらない」という言葉の語源となったのです。

中林:へー! 勉強になります。

先生:今回は日本酒の地域性について解説していくのですが、これから灘という地名も出てきますので、最初にこんな豆知識についてお話しました。

中林:地域性ということで言えば、やっぱり今も灘の日本酒がおいしいんですか?

先生:それは好みがありますからね。ただ、今でも灘が日本でも有数の日本酒の産地であることは変わっていません。実際、全国で一番生産量が多い地域も、灘がある兵庫県なんですよ。二番目が京都府、三番目が新潟県です。

中林:兵庫が1位とは意外です。日本酒の蔵元といえば、お米の名産地にあるものだと思っていました。

先生:兵庫は有名な蔵元がたくさんあるんですよ。白鶴さん、菊正宗さん、日本盛さん、大関さん……
一般の人が聞いたことがある蔵元は、ほとんどが兵庫県内にあります。

硬水と軟水で味はまったく変わる

中林:どうして兵庫に有名な蔵元がたくさんあるんですか?

先生:やっぱり、それだけ日本酒の名産地としての歴史があるからだと言われています。兵庫の酒蔵の特徴は「辛口のキレのある日本酒」です。今はいろんな地域で造られていますが、灘が有名になった江戸時代には、非常に珍しい味わいだったんです。

これを支えたのが「宮水(みやみず)」と呼ばれた硬水です。日本ではほとんどの地域が軟水ですから、灘の宮水を使った日本酒は、ほかの地域ではなかなか出せない味わいを生み出したんですね。ちなみに、しっかりした辛口の味わいから、灘の日本酒は「男酒」と言われています。

中林:ということは、「女酒」もある?

先生:その通りです。京都の日本酒が「女酒」と言われています。京都は柔らかい水が湧く地域なので、なめらかな味わいが特徴的なんです。ほかの地域では、新潟の日本酒は「淡麗辛口」、広島は「甘口」という傾向があります。今回用意した日本酒の瓶のラベルを見てください。

中林:「名水シリーズ」とありますね。

先生:日本は各地で名水が湧いていますから。水によって地域ごとの違いも出やすいんです。そのことをラベルで暗に伝えています。

中林:ということは、日本酒の味の違いは各地の水の違いによって生まれているんですか?

先生:水はもちろん重要ですが、「お米」「酵母」「造り手」の違いによっても日本酒の味は変わります。日本酒の地域性について知るためには、この4つのポイントを抑えることが大切です。例えば、「水」は兵庫と京都の違いのように、硬水か軟水かで大きく分かれます。
日本酒は微生物で発酵します。ミネラル分が多い硬水で造ると、いろんな化学反応を微生物が起こすので複雑な味わいになります。一方、ミネラル分が少ない軟水は化学反応が起こりにくいので、日本酒本来のすっきりとした味わいになりやすいのです。

では、硬水と軟水の違いを飲み比べていただきましょう。灘(兵庫)の「櫻正宗」と伏見(京都)の「英勲」です。

中林:あ、英勲は甘い! 櫻正宗は「これぞ日本酒!」というしっかりした味ですね。兵庫と京都で産地は近いのに、お水が違うとこれだけ味が違うんですね。

日本酒専用のお米がある

先生:次は「お米」の違いについてお話します。ほとんどの日本酒はお酒専門の「酒米(さかまい)」で造ります。普段の食事で食べる「飯米(はんまい)」とは異なるお米です。

中林:どう違うんですか?

先生:お米の真ん中に「心白(しんぱく)」という白く不透明な部分があります。酒米はお米の表面のタンパク質の多い部分を削り(詳しくは日本酒入門の第一回にて)、心白だけを残すようにするんですね。というのも、心白はすき間が多いので、日本酒を造るための麹菌が中まで入り込みやすく、お米が糖質に分解されやすいのです。また、水に溶けやすい性質もあるので、日本酒を造るときに液体に変わりやすいというのも、酒米を使う理由です。その酒米の代表的なお米が「山田錦」といいます。

中林:聞いたことがあるお米です。

先生:ほかにも五百万石、雄町、美山錦といったお米が有名です。今度はお米の違いを味わってもらうために、五百万石を使った「花の舞」と美山錦を使った「秩父錦」を飲み比べてみてください。

中林:飲み口がまったく違いますね。私は花の舞のほうがすんなり入ってくるので好きかな。でも、秩父錦も飲めば飲むほど味わい深くて好きになりそう。迷いますね(笑)。

香りの決め手は酵母

先生:そして3つ目は「酵母」の違いです。ここまで説明してきた水とお米だけでも、日本酒にかなりの違いが出ますが、特に酵母の発見は、日本酒にいろんな香りや味を生み出しました。考えてみてください、水とお米だけだったら、炊飯器でお米を炊いたときの匂いしかしないはずなんですよ。

中林:確かに! でも実際の日本酒にはいろんな香りがありますね。

先生:その理由が酵母なんです。お米は麹菌によって糖質に分解されます。そこに酵母を加えると、その糖質を食べ、アルコールと炭酸ガスに変えていきます。これが発酵です。酵母がアルコールを生むので、酵母が違うと、味も香りも違っていくんですよ。

中林:その酵母にはどのくらいの種類があるんですか?

先生:大まかに言って3つに分類されます。日本醸造協会が扱っている「きょうかい酵母」、地方自治体で扱っている「地方自治体開発の酵母」、それから蔵元固有の「自社酵母」ですね。

中林:自社酵母って、なんですか?

先生:何百年も日本酒を造り続けている酒蔵には、あちこちに蔵の酵母が棲みついています。それを採取して培養した酵母のことです。実はきょうかい酵母も、ほとんどが蔵元から酵母の株をもらってきて、それをほかの蔵元も利用できるようにと、日本醸造協会で培養したものなんです。

日本酒の瓶の裏側にあるラベルを見てください。使用酵母に「協会●号」とありますよね。これがきょうかい酵母を使った日本酒です。例えば、協会1号というのは、先ほどの「櫻正宗」の酵母を協会がもらってきて、ほかの蔵元に販売しているものです。

今、世の中の多くの日本酒は協会7号を使っています。これは長野県諏訪の「真澄」の酵母です。吟醸酒に多い柑橘系の香りを生み出した最初の酵母と言われています。

中林:では、その同じ酵母を使った日本酒は地域が違っても大体似ている?

先生:特に香りはそうですね。もうひとつ有名なのが、協会9号です。これは熊本の「香露」の酵母です。
別名「熊本酵母」と呼ばれます。こちらも吟醸酒にぴったりの酵母ですね。

酵母に泡のあり・なしがある?

先生:実は、きょうかい酵母には7号と701号、9号と901号のように、同じ号数でも「01」が付く酵母があります。この01が付く酵母は発酵する過程で泡を出さないタイプなんですね。一般に「泡なし酵母」と言われます。

中林:どうして泡のなし・ありがあるんですか?

先生:酵母は糖質をアルコールと炭酸ガスに変えますが、炭酸ガスがいっぱい出ると、造ってる間に泡があふれてしまうんですね。だから昔は、酒蔵の人が夜なべして泊まって、定期的にかき混ぜないといけなかったんです。しかし泡なし酵母を作ったことにより、泡を消す作業が不要になりました。酒蔵の人々の生活を向上させた酵母ということですね。今や大半がこの泡なし酵母を使っています。

では、701号を使った「爛漫」(秋田)と9号を使った「櫻室町」(岡山)を比べてみましょう。こちらは飲まずに、香りの違いを確かめてください。

中林:うーん、全然違う! 爛漫のほうが香りが華やかに感じます。櫻室町のほうが辛口の日本酒の香りがするような……。

先生:次に、今度はちょっとだけ口に含んでみてだくさい。こうするとまた香りの印象が変わると思います。

中林:あ、こうすると櫻室町は口の中に香りが広がって、飲みやすく感じますね。

先生:これが吟醸酒にもっとも合うと言われている9号酵母です。ちなみに、今はもっと香りが華やかな酵母が作られていまして、その中でも有名なのが、1801号の酵母です。近年、全国の蔵元がこぞって使っています。

日本酒造りの最高責任者「杜氏」の三大グループ

先生:最後が「造り手」の違いです。料理もそうですが、素材が一緒でも造り手が変われば味は変わってしまいますよね。日本酒も同じなんです。水、お米、酵母が一緒でも、造り手によってガラッと変わります。それが日本酒を造るプロである「杜氏」の違いです。

杜氏とは酒造りの最高責任者です。昔は日本酒の各生産地に杜氏がそれぞれいました。それがいくつかのグループに統合されていき、今は「三大杜氏」と言われる3つのグループに分かれています。兵庫の但馬杜氏、新潟の越後杜氏、それと岩手の南部杜氏です。ほとんどの酒蔵はこの3つのどれかに所属しているといっても過言ではないと思います。

中林:それぞれの杜氏さんは何が違うんですか?

先生:長年受け継がれてきた「日本酒の造り方」ですね。例えば岩手の南部杜氏から教わった造り方を別の土地で実践すれば、その土地は「南部杜氏流」で造ることになります。ただ、杜氏の方々もずっと遠くまで移動して酒造りをすることは滅多にないので、自然と南部杜氏流は東北に集中することになります。 それに大切なことは、長年その土地で受け継がれてきた日本酒の造り方があるということは、周りに住む人々も、南部杜氏なら南部杜氏流の日本酒の味に慣れ親しんでいるということです。だから、ほかの杜氏で学んだ人が来ても、定着することが難しいんです。

中林:なるほど、だから地域ごとに味の特色が生まれるんですね。

先生:その通りです。酵母にはあまり地域性がなくなりましたが、日本酒にも流行りがありますから、自然と同じようなものを使うようになります。一方、水は地域の湧き水を使いますし、お米も地域の酒米があり、それを活用する杜氏も地域ごとの特徴があります。

そうした積み重ねにより、日本酒に「灘は辛口」「広島は甘口」といった地域性ができていったのです。これを知っていれば、ラベルを見ただけで、味をなんとなく想像できるようになりますし、自分の好みの日本酒を造っている地域が把握できるようになります。

中林:ありがとうございます! これからはラベルに書いてあることを意識して飲み比べてみることにします。

<中林さん、いかがでした?>
もちろん、日本酒がいろんな地域で造られているとは知っていたんですけど、多すぎて何が違うのかわかっていませんでした。それが今回、地域ごとの特徴を学んだことで、「これはキリッと辛口っぽい」とか「これは飲みやすい味かも」といったことが、飲む前に想像できるようになりました。お店で新しい銘柄に挑戦するときも、自分の好みと違うものを頼んで失敗することがなくなりそうですね。

櫻正宗 銘醸名水シリーズ 櫻正宗 生一本純米酒

櫻正宗

銘醸名水シリーズ
櫻正宗 生一本純米酒

180ml

詳細はこちら
齊藤酒造 銘醸名水シリーズ 英勲 純米酒

齊藤酒造

銘醸名水シリーズ
英勲 純米酒

180ml

詳細はこちら
花の舞酒造 銘醸名水シリーズ 花の舞 純米酒<

花の舞酒造

銘醸名水シリーズ
花の舞 純米酒

180ml

詳細はこちら
矢尾本店 銘醸名水シリーズ 秩父錦 特別純米酒

矢尾本店

銘醸名水シリーズ
秩父錦 特別純米酒

180ml

詳細はこちら
秋田銘醸 銘醸名水シリーズ爛漫 純米酒

秋田銘醸

銘醸名水シリーズ
爛漫 純米酒

180ml

詳細はこちら
室町酒造 銘醸名水シリーズ 櫻室町 特別純米酒

室町酒造

銘醸名水シリーズ
櫻室町 特別純米酒

180ml

詳細はこちら
  • facebook
  • twitter
中林美和

中林美和

なかばやし・みわ 東京都出身、モデル。雑誌「CanCam」(小学館)の専属モデルを経て、様々な雑誌やTV、イベントなどで活躍。結婚、出産を経て現在は、雑誌「VERY」(光文社)やTVのナビゲーターなど多方面で活躍中。料理上手としても知られる。著書に、『おんぶにだっこでフライパン〜4人育児の奮闘記〜』(KADOKAWA)、『Mama Hawaii』(KKベストセラーズ)、『美和ママごはん♡』(セブン&アイ出版)などがある。