たのしいお酒.jp

我らお酒にひと言あり 六酒仙、かく語りき

藤原ヒロユキの、あったら毎日通っちゃう、妄想ビアバー
「~放題のバー」

ビールは偉い。とにかく偉い。美味しいビールはそれだけで正義だし、飲めればひとまずは幸せだ。だけど、美味しいビールは、出来ればそのビールの雰囲気に合った、理想的な空間で飲みたいもの。日本ビアジャーナリスト協会代表、ビールの伝道師こと、藤原ヒロユキさんが、今月も美味しいビールをいただきながら、理想のビアバーについてあれこれ思案を巡らせます。単なる妄想なのか、それとも、実在する店なのか…夢とうつつを行き来する(?)、妄想ビアバー、開店します。

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今月の妄想ビール…『Duchesse de Bourgougne』

とあるビールを飲むと、そのビールに合わせてふしぎな妄想が始まる。
ビールとのたのしい時間も数えて10回目。
今回のお相手となるのは、フランス語で「ブルゴーニュ公国の公爵夫人」と名づけられたビール。
ラベルに描かれた肖像は、その公爵夫人であるマリーさん。
若くしてこの世を去ったマリーさん。
でも夫であるシャルル公は亡くなる際に、マリーさんの棺に寄り添うように自分の棺を……。
この物語だけでもロマンティックで奥深そうだが、さらにビールそのものも、
オーク樽で18か月熟成した深みあるものと、8か月熟成させた若く溌剌(はつらつ)としたものをブレンド。
酸味と果実味が強く感じられながら、濃厚さと甘みも、ぐっと感じられる。そう、奥深い。
じっくりとそのビール造りの謎を紐解こうとすれば、妄想力は高まってしまうのは仕方がない。
ということで今回もまた、
藤原さんは、こんなお店のことを妄想したようで…

また、通いつめたくなる店を発見した。

その店のコンセプトは「放題」である。

多くの人は、「~放題」と聞くと、「飲み放題」を連想するようだが、この店は「飲み放題」ではない。
酒場で「~放題」といえば、まずは「飲み放題」でしょー、と思う人も多いようだが、私は「飲み放題」というシステムが好きではない。
根が貧乏性なのだろう、飲み放題と言われるとどうしても「たくさん飲まないと損」とか「これでモト取ったかなぁ~?」といったセコイことを考えてしまう。飲むペースが乱れ、酒が美味しくなくなってしまう。
お酒、特にビールに関しては「飲んだものは、きっちり払う」がモットーだ。自分が飲んだ分を明確にカウントして料金を支払う。それが醸造家への礼儀であり感謝の気持ちだと信じている。なんて言うとちょっとキザかな? おごってもらったり御馳走になるのは嫌いじゃないし(笑)矛盾してるかぁ……。

さてさて、しからばこの店は何が「放題」なのか?

まずは、タブレット使い放題である。各テーブルにタブレットがあり、それを利用すればゲームを楽しんだり、サイトをチェックしたり、DVDを観ることができるのだ。タブレットを囲み、みんなでワイワイ盛り上がるのも、2人でしっとりするのにも役立つ。私のように独り飲みのときでも退屈しない。

もうひとつの「放題」は、「駄菓子食べ放題」である。
駄菓子というと、子供の食べ物と思われる方もいるだろうが、これが妙にビールに合う。

例えば、黒糖味の麩菓子はカラメルモルトの甘味やローストモルトの苦味がしっかりした濃色系のデュンケルや黒色系のロブストポーターにぴったりだ。あんず飴とともにベルジャン・トリプルやフランダースレッドエールを飲むと、フルーティーな味わいがシンクロして素晴らしいハーモニーを奏でる。串にささったスルメ菓子には柑橘系の香りがするアメリカンペールエールやIPAを合わせるといい。シーフードにレモンを絞るような感覚だ。

ビールに関しては『カウントして払うのが礼儀』みたいなことを言ってるくせに駄菓子にはリスペクトがないのか? とお怒りの方もいらっしゃるかと思うが、駄菓子とビールのペアリングに関しては現在研究中なので、「食べ放題」はありがたい。ここはお許しいただきたい(笑)。

そして、さらなる「放題」は、ダーツ、ビリヤード、ピンボールがプレーし放題である。もちろん、これは譲り合いの精神のもとに(特にビリヤード台は1台だけなので)楽しむことがマナーなので、ず~っとやり続けるってわけにはいなないのだが。友達と訪れたときはダーツやビリヤード、独りの時はピンボールを楽しみながらビールを味わうというのもオツなものだ。

タブレットで映画を観たりサイトを検索したり、駄菓子とのペアリングを楽しんだり、ビリヤードに興じたりしながらお気に入りのビールを楽しむ。飲み放題よりも満足度が高い。

だからまたこの店に通いたくなるのだ。

  • 今月の妄想ビール…

    『ドゥシャス デ ブルゴーニュ』

    330ml

    2種の熟成行程、期間を経たビールをブレンドし、豊かな酸を感じさせるアロマと、
    酸味と甘み、深みのバランス。ワインのようなテイストも感じられる、
    ベルギーの多彩なバリエーションを味わえるビールです。

    詳細はこちら
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藤原ヒロユキ

ふじわら・ひろゆき ビアジャーナリスト、ビール評論家、イラストレーター。1958年生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。季刊「ビール王国」編集主幹。ビールに関する各種資格を取得、ワールドビアカップをはじめ欧米の国際ビアコンテストの審査員を務める。日本外国特派員協会会員。ビールにまつわる著書多数。主な著書に「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎)、「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド)など。