たのしいお酒.jp

我らお酒にひと言あり 六酒仙、かく語りき

藤原ヒロユキの、あったら毎日通っちゃう、妄想ビアバー
「スキー場のバー」

ビールは偉い。とにかく偉い。美味しいビールはそれだけで正義だし、飲めればひとまずは幸せだ。だけど、美味しいビールは、出来ればそのビールの雰囲気に合った、理想的な空間で飲みたいもの。日本ビアジャーナリスト協会代表、ビールの伝道師こと、藤原ヒロユキさんが、今月も美味しいビールをいただきながら、理想のビアバーについてあれこれ思案を巡らせます。単なる妄想なのか、それとも、実在する店なのか…夢とうつつを行き来する(?)、妄想ビアバー、開店します。

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今月の妄想ビール…『BROOKLYN EAST IPA』

ニューヨーク・ブルックリン。
今、この地は古きよきニューヨークの職人魂と新しいクリエイティブな息吹が融合し
全米はもちろん、世界中から注目されるエリアとなっている。
そのひとつのアイコンが、『ブルックリン』の名を冠したクラフトビールだ。
伝統としてのビール、新しい時代を開くビール。
IPAを生んだ英国のホップを使うというルーツへの尊敬を
今の時代に彼らが提示する、軽快で鮮やかな香りと苦味というテイストで表現する。
その香りと苦味が記憶を呼び起こしたのか、
藤原さんは、またあるお店のことを思い出したようで…

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また、通いつめたくなる店を発見した。

バーから、ガラス越しに雪景色を見ることができる。
 ゴンドラが4基、リフト50基。総面積1,200ヘクタールを超える世界屈指のスノーリゾートの裾野にそのビア・バーはある。

 スキーもスノーボードも、最も楽しいのは午前中だ。前夜に雪が降っていればなおさらである。リフトの始発をめがけゲレンデに出る。
 未圧雪であれ、グルーミングバーンであれ、まだ誰もシュプールを描いていない雪面に踏み入れる快感は、早起きへのご褒美に違いない。
新雪に腰まで埋もれながら滑る浮遊感や圧雪車が磨き上げた雪面をエッジで切っていく疾走感は、なにものにも代えがたい。
 
山頂に上がって滑り始めたら、目指すは山裾だ。安易に止まってはいけない。
 リフトやゴンドラを乗り継いで山頂まで上がり、一気に滑り降りる。幸いなことに、このスノーリゾートは2㎞や3㎞といったコースが何本もある。最長コースは6㎞だ。ロングコースを何本か滑れば、午前中でほとんど「お腹いっぱい」になる。
 午後は、ゲレンデも荒れてくるし、人も多くなるので、午前中ほど飛ばすことが出来ない。安全にリラックスして滑る。

ほどなくすると、頭の中に「もう1本、滑って終わろうかなぁ?」という言葉が浮かぶ。それは「もうこれで終わりにしておけ」という体の声に他ならない。気持ちは昂り続けているが、肉体は疲労を感じている危険な時間帯なのだ。クラッシュするのは、往々にして「もう1本」である。潔く板を脱ぎ、バーの扉をくぐる時間ということだ。

バーにはゲレンデから直接、ブーツのまま入ることができる。

ゲレンデが見わたせる席に座る。
このバーで飲めるビールは地元のローカルビール。
一杯目の銘柄は……、ホップがほどよく効いたペールエールかピルスナー。セッションエールも捨てがたい。まだ少し汗ばんでいる体に心地よい。
 バーテンダーはカウボーイハットにデニムのダンガリーシャツ。流れる音楽はカントリー&ウェスタンミュージックである。

嬉しいことに、このバーにはスキーとスノーボード用のロッカーがある。さらに、リペアとワックスサービスも行ってくれる。今日はここに板もブーツも預けていこう。明日の朝はワックスがきれいにかかった板で滑ることができるというわけだ。 
ブーツを脱ぎ、ソレルのスノーシューズに履き替え、2杯目のビールをいただこう。アンバーエールかブラウンエールもしくはシュバルツか? モルト感がある銘柄がいい。

雪山がシルエットに変わってゆくと、細かい雪がゆっくりと降り始めてきた。
明日も新雪が楽しめそうだ。朝一番はどのコースを滑ろうか? なんて思いを馳せながら3杯目、ストロングエール。アルコール度数高めのビールが体をホンワカと温めてくれる。
おいしいビールと雪山のペアリングが楽しめるバーなんてめったとない。
だからまた、この店に足を運びたくなるのだ。

  • 今月の妄想ビール…
    『ブルックリン イースト IPA』

    355ml

    柑橘を感じるフルーティなアロマがかわいらしく、しかし、
    爽やかながらもしっかりした苦味とアルコール感でビール通を喜ばせてくれます。

    詳細はこちら
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藤原ヒロユキ

ふじわら・ひろゆき ビアジャーナリスト、ビール評論家、イラストレーター。1958年生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。季刊「ビール王国」編集主幹。ビールに関する各種資格を取得、ワールドビアカップをはじめ欧米の国際ビアコンテストの審査員を務める。日本外国特派員協会会員。ビールにまつわる著書多数。主な著書に「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎)、「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド)など。