たのしいお酒.jp

我らお酒にひと言あり 六酒仙、かく語りき

藤原ヒロユキの、あったら毎日通っちゃう、妄想ビアバー
「私の好みを知っているバー」

ビールは偉い。とにかく偉い。美味しいビールはそれだけで正義だし、飲めればひとまずは幸せだ。だけど、美味しいビールは、出来ればそのビールの雰囲気に合った、理想的な空間で飲みたいもの。日本ビアジャーナリスト協会代表、ビールの伝道師こと、藤原ヒロユキさんが、今月も美味しいビールをいただきながら、理想のビアバーについてあれこれ思案を巡らせます。単なる妄想なのか、それとも、実在する店なのか…夢とうつつを行き来する(?)、妄想ビアバー、開店します。

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今月の妄想ビール…『DUVEL』

豊かなアルコール、芳醇な泡、シルクのような滑らかさ。
第一次世界大戦の終結の報を受け、これを記念して造られたビールは
その衝撃と心に忍び込む愛らしさと美しさから『悪魔=Duvel』と名づけられた。
以降、厳選された原料、卓越のベルギービール職人の匠に守られ育まれた
幸せな悪魔の申し子たち。
時代を超えても変わらぬその魅力に見せられたか、
藤原さんは、またあるお店のことを思い出したようで…

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また、通いつめたくなる店を発見した。

そのバーからは毎週月曜日に、メールが送られてくる。メールの件名は、「今週のあなたへのおすすめビール」である。ビア・バーから、新しく入荷したビールの情報やおすすめビールの案内が来ることは、よくある。しかし、このバーからのメールは“あなたへ”のおすすめビールなのである。
 通販サイトで本を買うと、関連する本の案内が送られてくるサービスがある。それを「うれしい」ととらえるか「うざったい」ととらえるか、人それぞれだ。 

 しかし、ビールに関して“自分好みのビール”の入荷情報が送られてくることはありがたいことである。少なくとも、私にとっては。

 このバーのオーナー・バーテンダーは、過去に私がこの店で飲んだすべての銘柄を記憶している。もちろん、頭の中にそらんじているわけではなく、看板を下ろしたあとに記録をつけているのだろう。さらに驚くことに、銘柄だけでなく、そのビールのどのような部分が気に入ったかということも記憶(記録?)されている。
 私があるイングリッシュ・ペールエールの『上質なダージリンティーを思わせるホップの香りが心地よい』と感想を述べたとすると、それがビールのスペックと共にインプットされているのだ。ホッピーなイングリッシュ・ペールエールが入荷すれば、いつもメールで知らせてくれる。

日頃よく飲んでいる銘柄やスタイル、さらには私のつぶやきのデータから“好み”を推測し、毎週入荷したビールの中からピンポイントで“あなたへのおすすめ”ビールをメールしてくれる。当然のことながら、お客さんごとに違ったメールが送られているはずである。
正直、くやしい(?)かな、送られたメールには、いつも私好みのビールが5~6銘柄並んでいる。私が好きな小説の主人公が好んで飲んでいるビールなんて時もある。そんな話、いつしたっけ? 細かいことまで拾ってくる。

 今週は、以前バーテンダーに『深みがあるマロンブラウンの色合いがたまらないねぇ』と言ったビールが入荷しているとのメールが来た。こりゃ、栗茶色をしたハリスツィードのジャケットを着ていかなければなるまい。ま、そんな季節になったしちょうどいいかぁ! そーだ、おそらくこれは私がいつまでもコットンやサージのジャケットを着て行くので『そろそろ、ツィードのジャケットを着てお越しになる季節ですよ』というメッセージに違いない。一本取られた気がする。粋なことをする店だなぁ。

 

だからまた、この店に足を運びたくなる。

  • 今月の妄想ビール…
    『Duvel』

    330ml モルトガット

    「世界一魔性を秘めたビール」と称されるベルギーのゴールデンエール。
    1918年から続く独自の酵母と製法で、繊細な香りと絶妙な苦味を味わえます。。

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藤原ヒロユキ

ふじわら・ひろゆき ビアジャーナリスト、ビール評論家、イラストレーター。1958年生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。季刊「ビール王国」編集主幹。ビールに関する各種資格を取得、ワールドビアカップをはじめ欧米の国際ビアコンテストの審査員を務める。日本外国特派員協会会員。ビールにまつわる著書多数。主な著書に「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎)、「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド)など。