たのしいお酒.jp

我らお酒にひと言あり 六酒仙、かく語りき

「路地裏のバー」

ビールは偉い。とにかく偉い。美味しいビールはそれだけで正義だし、飲めればひとまずは幸せだ。だけど、美味しいビールは、出来ればそのビールの雰囲気に合った、理想的な空間で飲みたいもの。日本ビアジャーナリスト協会代表、ビールの伝道師こと、藤原ヒロユキさんが、今月も美味しいビールをいただきながら、理想のビアバーについてあれこれ思案を巡らせます。単なる妄想なのか、それとも、実在する店なのか…夢とうつつを行き来する(?)、妄想ビアバー、開店します。

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今月の妄想ビール…『J-CRAFT優爽のヴァイツェンKIBI OKAYAMA』

バナナを思わせるフルーティで甘い香りが漂う、ヴァイツェンらしいヴァイツェン。
優しい口当たりと、濁りのある明るい黄金色は、岡山の穏やかな気候を
そのままビールに写し取ったよう。

「今日のグラスはヴァイツェングラスじゃないけど、ヴァイツェン専用のグラスって、
乾杯するときグラスの底同士で乾杯するんですよ。
ドイツ人相手にやったら、こいつ通だな、と喜ばれますよ」
なんていうウンチクを教えてくれた藤原さん。飲み進めるうちに、
またとあるお店のことを思い出した様子…

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また、通いつめたくなる店を発見した。

そのバーは、東京から新幹線に乗り約2時間の町にある。
駅前に並ぶ飲み屋の呼び込みを無視し、狭い路地に足を運ぶと、いちばん奥にそのバーはひっそりとある。

1階はカウンターのみで、2階にはテーブル席。カウンター横の壁からドラフトビールのタップが12本つき出ている。壁の向こうはウォークイン型の冷蔵庫で、生ビールの樽達が出番を待って鎮座する。樽が野ざらしにされることなく、常に冷えているためビールのクォリティーが保たれている。

冬には身の丈ほどの雪が積もるこの町は、私にとって大切な町である。
遊覧船が走る大きな河は海へと広がり、夏には海水浴、そしてヨットやクルーザーでの舟遊びが楽しめる。山も近く、冬はスキーやスノーボードが満喫でき、温泉が多いのも嬉しい。
そしてなによりも美味しい食べ物が多い。海の幸はもちろん、
春は山菜、秋はキノコ類、冬にはジビエといった山の幸も堪能できる。
米も水も美味しいので、日本酒の蔵元があまたあり、お酒好きの人が多い県としても知られている。一人当たりの年間アルコール消費量のランキングでトップ3を下ることがない。もちろん、クラフトビールの醸造所も数多く、この店のタップにも県内にある醸造所のものが繋がっている。どれも素晴らしいビールを造っている。
 まずは、日本国内はもとより海外でも高い評価を受けている醸造所が、この店とコラボして造ったオリジナルビールをいただいてみる。
柑橘系の香りがするホップがふんだんに使われていて、心地の良いビールだ。

続いては、この店から最も近いS醸造所のアンバーエールを選んだ。文字通り、琥珀色のビールである。
 このビールには、地元の和牛を使ったローストビーフを合わせるとしよう。

ホップの爽快な香りと鮮烈な苦味が和牛のしっかりとした旨みを引き出し、焙煎モルトのこうばしさがローストビーフのフレーバーとリンクする。素晴らしいペアリングだ。
 2杯のクラフトビールと和牛のローストビーフを堪能し、店をあとにする。
秋風が頬を撫ぜ、もうすぐこの町に長い冬がやってくることを告げている。それは、地元の食べ物が一段と美味しくなる季節でもある。
次に訪れる時には、何を肴に美味しいビールを飲むことができるのだろうか?
いま、店を出たばかりだというのに、すでに次の出逢いに心が揺れ、熱い想いを抱き続けることになる。
 だからまた、この店に足を運びたくなるのだ。

  • 今月の妄想ビール…
    『J-CRAFT』

    優爽のヴァイツェン KIBI OKAYAMA

    330ml 宮下酒造

    優しい口当たりと濁りのある明るい黄金色、バナナを思わせるフルーティで甘い香りが特徴です。

    詳細はこちら
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藤原ヒロユキ

ふじわら・ひろゆき ビアジャーナリスト、ビール評論家、イラストレーター。1958年生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。季刊「ビール王国」編集主幹。ビールに関する各種資格を取得、ワールドビアカップをはじめ欧米の国際ビアコンテストの審査員を務める。日本外国特派員協会会員。ビールにまつわる著書多数。主な著書に「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎)、「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド)など。