たのしいお酒.jp

我らお酒にひと言あり 六酒仙、かく語りき

「探しにくく、入りづらいビア・バー」

ビールは偉い。とにかく偉い。美味しいビールはそれだけで正義だし、飲めればひとまずは幸せだ。だけど、美味しいビールは、出来ればそのビールの雰囲気に合った、理想的な空間で飲みたいもの。日本ビアジャーナリスト協会代表、ビールの伝道師こと、藤原ヒロユキさんが、今月も美味しいビールをいただきながら、理想のビアバーについてあれこれ思案を巡らせます。単なる妄想なのか、それとも、実在する店なのか…夢とうつつを行き来する(?)、妄想ビアバー、開店します。

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今月の妄想ビール…『J-CRAFT華ほの香香爽のフルーティホワイトGOTEMBA』

小麦麦芽を使用した白ビールをベースに、和の柑橘ゆずの果汁と和のスパイス、
山椒でアクセントをつけたベルジャンスタイルのビール(日本の分類上は発泡酒)。
ほかのDHCビール同様、富士山の伏流水を100%使用、豊かな旨味と清らかな後味が心地よい。

フルーティな味わいの中にあるスパイシーな香りを楽しんでいるうちに、
藤原さん、またもや何かさらさらと描き始めた様子…

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また、通いつめたくなる店を発見した。

まさに隠れ家である。
店は雑居ビルの5階にあり、1階に看板はあるものの、ビア・バーの名前とは思えない『麦芽毬花研究所』という名前である。1階は不動産屋、2階は経営コンサルト会社、3階はウェッブ制作会社、4階は空き部屋なのだから、5階にビア・バーがあると思う人は皆無に違いない。

エレベーターは4階までしかなく、そこからは階段を使う必要がある。階段を登りつめるとグレーの無機質な鉄の扉、その横の壁には暗証番号を打ち込む小さなテンキーがある。

この店に来るときには、事前に電話をする必要がある。なぜならば、扉を開ける6桁の暗証番号は毎日変わるからだ。
暗証番号が正しければ、鉄の扉が開くのだが、まだ店内ではない。そこは3畳ほどの小部屋で、今入ってきた扉側以外は天井まで届く本棚になっている。

正面の本棚の前に立つと、上から3段目の中央にある「ワールド・ビア・ガイド」という厚さ5㎝はあるかという本がすっと奥に抜き取られ、その隙間から鋭い眼が光る。来店客の顔を確認しているのだ。まるで、禁酒法時代のスピークイージー(もぐり酒場)のようである。

入店するとまず、身分証明書の提示が必要である。財布などの貴重品以外の荷物はすべて預ける必要がある。携帯電話やタブレット、PCも例外ではない。

事前の電話、暗証番号、顔の確認、持ち込み品の制限というチェックをくぐり抜け、やっとのことでたどり着いたビア・バー、本日のタップは3種類、ボトルビールは15種類、缶ビールは7種類である。

まずは、アメリカ東海岸の醸造所が造るニューイングランドスタイルのペールエールをオーダーした。最近注目され始めているが、まだまだ日本ではあまり飲むことができないスタイルだ。ヘーフェヴァイツェンかと思うほど濁りがある。これも特徴のひとつである。

2杯目はフランス北部の醸造所が造る木樽熟成ビールを選んだ。農家が造る自家醸造からスタートしたビエール・アルチザナル(フランス語で工芸的ビールの意)のメーカーで、ウッディーな香りと木樽に宿っていたワイルドイースト(野性酵母、蔵付き酵母の意)の醸し出す個性的、男性的な酸味と香りが印象的だ。

3杯目は日本のクラフトビール。国産ホップを生のまま使用した特別醸造の銘柄で、予約販売の受付開始から30分で完売したという超レアなビールである。フレッシュホップならではのすがすがしい香りとシャープな苦味が鮮烈である。

このような珍しいビールは〝レア″であることに気持ちが入り、「飲んだ」ということに満足しがちだが、この店ではそのビールのスペックやストーリーを大切にし、スタッフが丁寧に説明してくれる。探しにくく、入りづらいバーにもかかわらず、この店を訪れたいと思うのは、このようにビールに対する真摯な態度と深い愛情を感じるからである。

だからまた、この店に足を運びたくなるのだ。

  • 今月の妄想ビール…
    『J-CRAFT華ほの香』

    香爽のフルーティホワイト
    GOTEMBA

    330ml DHC ビール

    白ビール特有のフルーティーな香料にスパイス感が効いたベルジャンスタイルのビール。

    詳細はこちら
今回、取材にご協力頂いたお店
クラフトビールタップ新宿
東京都 新宿区新宿3-34-16
池田プラザビル4F
03-5362-1668
月曜〜土曜 17:00〜28:00
日曜・祝日 17:00〜23:00
クラフトビールタップは、常時15種類以上の自社独占輸入の樽生ビールや世界のボトルビールを提供する本格ビアバーです。
ビールに合うお手頃価格のフードも揃えています。
世界中のクラフトビールと、個性的なビールに合う食事が愉しめる当店は、仕事帰りのビジネスマンから、新宿で美味しいクラフトビールを飲みたいビール通まで幅広いお客様に気軽にご来店いただける店舗です。
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藤原ヒロユキ

ふじわら・ひろゆき ビアジャーナリスト、ビール評論家、イラストレーター。1958年生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。季刊「ビール王国」編集主幹。ビールに関する各種資格を取得、ワールドビアカップをはじめ欧米の国際ビアコンテストの審査員を務める。日本外国特派員協会会員。ビールにまつわる著書多数。主な著書に「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎)、「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド)など。