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旨い酒処に、旨い肴あり 日本まるごと 地酒×地肴

第9回 新潟県・今代司酒造
第9回 新潟県・今代司酒造 特別対談!日本酒造りとビール造り、その背景にあるそれぞれの熱い物語に酔う。
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宮崎ひでじビールの永野社長(写真左)と今代司酒造の田中社長(写真右)。今代司の蔵の中にて。

全国の酒蔵を巡り、その哲学、情熱に触れながら、その地のうまいものに舌鼓。『日本まるごと地酒×地肴』、今回は特別編。『クラフトビール物語』に登場いただいた『宮崎ひでじビール』の永野時彦社長に新潟の『今代司酒造』を訪ねていただき、今代司の田中洋介社長とものづくりの哲学や想いについて、それぞれのビールと日本酒を酌み交わしながら大いに語り合っていただきました。まだ冬の厳しさが残る新潟でしたが、お二人の情熱が交錯し熱い意気投合となった対談の模様を前・後編でお届けします。

まずは宮崎ひでじビールの『太陽のラガー』で乾杯。「すっきりとしながらもビールの旨みがあって、飲み飽きないですね。海を見ながら飲みたい味とデザインです」との田中さんの感想に永野さんは「宮崎はサーフィンでも有名。サーファーがボトルのまま飲むような、そんなイメージでつくりました。」と笑顔。

返杯は今代司の『天然水仕込み 純米酒』。週2回、新潟の名水地「菅名岳」まで片道1時間かけてトラックで仕込み水を取りにいくとのエピソードに永野さんは驚きと感心の表情。さらに永野さんからは『月のダークラガー』のご返杯。心地良く盃があいていきます。

永野さん:今日は酒蔵をご案内いただいてありがとうございました。米どころ、酒どころの新潟の酒蔵の見学は初めてです。ビール造りと日本酒造りは似ているところがありますが、その造り方の話だけではなく、國酒である日本酒、そしてその代表的産地である新潟としての誇りであったり、商品ひとつひとつを大切に売っていくという決断とその裏にある酒蔵での努力を目の当たりにしてとても勉強になりました。
田中さん:私も永野社長とお話して、いろいろ気づきがありました。新潟というと伝統的で古い酒蔵のイメージがあるかもしれませんが、最近は一旦、外の世界を経験して酒蔵に戻ったり、異業種の方が酒造りに挑んだり、私のように、もともとお酒とは関係ない人間が継承するという例も増えていますので、意外と新しい感性も取り入れられてます。永野社長の、はじめからビール会社の経営をされていたわけではないという話も驚きました。

今代司の和モダンな軒先で初対面。明治中期から酒造りに本格的に取組み、現在は田中さんのもと、古(いにしえ)の時代と今の時代をむすびながらの新しい展開を見せています。

「この静けさ。緊張もあるのですが、落ち着く感じがします」と永野さん。シルバーに輝くビールタンクが並ぶ「宮崎ひでじビール」のブルワリーとはまた違う酒造りの現場で、お二人の熱い話は続いた。

永野さん:はい。地ビールブームのタイミングで設立されて今年で21年目。創業のときは私は会社にいませんでしたし、ビールとはまったく関係のない生鮮の仕事をしていました。会社自体もガソリンスタンド経営からの異業種参入。そんな中、創業2、3か月後に、その会社の役員との縁で入社しました。手探りの中でしたが、2010年、当時の社長が47歳で亡くなってしまって…。
田中さん:お若いですね…。
永野さん:その後、引き継いだ方の経営スタイルは、夢とロマンでやってきた社長とは真逆で現実的な方でした。夢とロマンでやっていたので、数字が追いついていないということもあってビール事業をやめようということになりました。でもあきらめたくない。そこでイチ社員でありながらビール事業を継承すべく、EBO(従業員による経営権の買収)に走りました。他人の会社なんでムキになる必要はなかったんでしょうけど(苦笑)。
田中さん:従業員さんもいらっしゃるでしょうし、下世話な話ですけれど資金はどうされたんですか?

お二人の話にスイッチを入れたのはうまい酒と新潟の冬の味。神馬草(じんばそう)の酢の物から、新潟のカニへ。『太陽のラガー』とも『天然水仕込み 純米酒』とも見事な相性。

永野さん:身内に借金。そこから銀行へ。でも門前払い。能力も財産もないヤツはもう無理なんだと諦めかけていました。でも以前からボランティアで地域活動をしていたことを行政が見ていてくれて。もちろん行政がどうにかできる話でもないんですが、個人的にも「あいつは延岡のためにがんばっているから」といろいろなところで広めていただいていたようで。そこからいろいろつながっていった感じです。熱意だけですね。熱意で何とかなるもんです(笑)。
田中さん:イレギュラー中のイレギュラーですよ(笑)。今回お酒造りの話とはいえ、社長同士、こういう話がすごく熱くなりますね(笑)。こういう熱意が結局は酒造りの裏側にありますし。
永野さん:そうなんですよね、裏側の熱意。そうやって地元に支援いただいていたので、ビールで恩返ししないといけない。そこはビール造りの原点になっているかと思います。ただ、田中社長の決断もすごかったですよね。大手情報出版社から縁のない場所の老舗酒蔵へ。その再建を託されるというのは…。地元との関係はいかがだったのですか?
田中さん:新潟市は北前船で大いに栄えていたように、元々出たり入ったりが当たり前の港町文化なので、息苦しさはないですね。居心地がよくてとても気に入っています。
永野さん:思いついたアイデアはどんどんチャレンジできますか?
田中さん:もちろん一人の力、決断でどんどんやっていくものではなく、みんなとブレストしながらですが、チャレンジはしやすいですね。もちろん最初は「何だお前は」という感じはあったかと思いますよ。杜氏も最初は「大丈夫か?」みたいな気持ちがないはずはなかったでしょうし。ただ、今は気持ちをあわせて取り組んでいます。私自身、杜氏は好きですし、信頼しています。とてもいい連携ができていると思います。

2010年、一念発起して大手情報出版社を退職し、2年間のシンガポール駐在を経て、2012年に今代司酒造へ入社。2014年から現職。永野さんが感じた印象は「物静かで知性的な語り口ながら行間からすごい熱気が感じられる方」。

杜氏の高杉さんに熱心に酒造りの説明を受ける。伝統の酒蔵、その匠の技を田中さんの采配の下でより高め、より深めています。

田中さん:いやー、それにしてもお互い、よく飲みますね(笑)。続いてお互いのチルドのお酒でいきましょうか。
10℃以下でチルド配送するからこそ実現できる味わい、ビールと日本酒でどう違うか。
永野さん:私たちは『J-CRAFT 日向夏の風』。このJ-CRAFTシリーズは別のクラフトビールメーカーさんからもいろいろなアイテムが出ていますが、どれもよくできています。
田中さん:早速いただきます。おぉ、いい香りだ。ちょっとにごり目なんですね。
永野さん:そうなんです。この日向夏という柑橘は、わたが甘くておいしいんですよ。宮崎では日向夏の刺身なんていうのもあってわたごと食べますが、これがうまい。こうした日向夏のわたのよさも味わっていただきたかったんです。
田中さん:なるほど日向夏の果汁を絞っていれるんですね。ほろ苦さもまたいい。

「フレッシュな柑橘感を感じられて、これはチルドならではでしょう」と田中さん。

永野さん:チルドでやれるという期待感は大きかったです。当社のような小さな設備の会社だけではできないことを、情熱を持たれた会社さんと連携して行うことができた。
田中さん:日本酒も時代によって変わっていきます。流通のために火入れを始めた歴史がある訳ですが、それが今、原点である生酒でできるというのはうれしいですね。
永野さん:つくりたてのものをご自宅でも飲んでいただける。J-CRAFTではその文化を伝えることができます。
田中さん:それでは同じようにつくりたての文化まで味わっていただくための、私たちの生酒はこちらの『あさねぼう 純米 生原酒』。
永野さん:このラベルはいいですね!! いいセンスだ。今代司さんは、『錦鯉』をはじめセンスがいいな。早速いただきます。……うまいなあ。これぞ新潟って感じです。ボディもしっかりあって。生酒、かつ全量純米で取り組まれているのは、新潟の米の旨みを伝えるためでもあるんでしょうか。

あさねぼうとZZZをかけたシンプルながらとんちのきいたラベルに笑顔の永野さん。

今代司の酒蔵でさまざまな商品を見た永野さんはグッドデザイン賞を受賞したお酒『錦鯉』をはじめとするデザインセンスに感心。ビールもラベルデザインやネーミングが大切という思いが強く、真剣に見つめます。

田中さん:いわゆる醸造アルコールが入った「アル添酒」もいいんです。新潟はアル添だとしても純米吟醸クラスまで米を削ったものがあったり、米の旨さに加えて新潟らしい切れのよさを表現した、きれいで飲みやすい酒にもいろいろな形でトライしています。そんないろいろな日本酒がある中で私たちはひとつの方法として全量純米にこだわっていこうと考えています。その背景には新潟の雪、米、水という文化や物語を伝えたいという思いがあります。新潟の中でも新潟市の港町の文化で、この酒蔵がある沼垂(ぬったり)という地では味噌や醤油の蔵も立ち並んでいた歴史があるので、こうした発酵文化、また日本三大花街でもあった新潟の一流料亭の職人たちに愛された酒という物語、酒を通じてそういったものまで伝えられたらと考えています。
永野さん:ヒントがいっぱいありすぎです。料理も酒もストーリーがセットでないと面白くない。酒の薀蓄だけじゃダメなんです。こうした文化、地勢、歴史の背景などを聞きながら飲むことのなんと心地良いことか。ビールを造る上でもそこまでセットで届けないといけない。それは責任感でもあります。
田中さん:日本酒もこだわりが強そうで敷居が高いと思われるかもしれませんが、時代とともに変わっていくもの。柔軟に変化している業界だと思うんです。地域ごとの魅力、酒米の魅力ということも最近では語られるようになってきました。永野社長のビールにも熱意と物語があって、そこがまた魅力ですよね。そうだ、そんな思いを込めた「オール宮崎」のビールがあるとお聞きしています。
永野さん:そうなんです! 今日はそちらもお持ちしていますので、ぜひ。

~というところで前編はここまで。後編では、「オール宮崎」と「オール新潟」のお酒の紹介、その背景にあるお二人の物語を紹介します。ますます盃を重ねて、笑顔の対談は続きます。

取材協力

海鮮居酒屋 魚魯こ(うろこ)

新潟市中央区弁天2-1-27

050-5877-8261

旬の新潟の海の幸、山の幸が楽しめるお店。和モダンな空間の1階はテーブル席。2階は座敷。今代司の『天然水仕込み 純米酒』は常にオンリスト。日本海の魚から名物の鳥から揚げまで幅広く相性よし

宮崎ひでじビール

『J-CRAFT 華ほの香 日向夏の風 HYUGA NOBEOKA』
330ml

生産量日本一を誇る宮崎県産「日向夏」の果汁を含めて熟成。
爽やかで優しい柑橘の風味が活きた味わい、
ほろ苦さのバランスが特徴です。

詳細はこちら

今代司酒造

『あさねぼう 純米 生原酒』
1800ml

新潟県産の酒米「五百万石」を100%使用した生原酒。徹底された品質管理のもと、 華やかな含み香としぼりたてのフレッシュな味わいをキープし、
ジューシーさを感じていただける飲み口です。

詳細はこちら
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