たのしいお酒.jp

旨い酒処に、旨い肴あり 日本まるごと 地酒×地肴

第1回 石川県 福光屋さん
第1回 石川県・福光屋 新鮮な海の幸に、加賀野菜。″おいしい町″の、最古の蔵の酒造り。
  • facebook
  • twitter

北から南まで、日本全国で造られている、日本酒。なかでも数多の銘酒を生み出し続けるのが、北陸の石川県だ。石川といえば魚介、加賀野菜、かぶら寿司に金沢おでんと、酒に合う旨い肴が盛りだくさんの地でもある。 北陸新幹線の開通以来ますます人気の高まる、歴史と、アートと、旨いものの街、石川県金沢を、モデルの中林美和さんが訪れた。 目指すは老舗の酒蔵〈福光屋〉。新しい日本酒が完成間近との噂を聞きつけ、見学に向かいました。

北陸新幹線の中で、まず一杯。福光屋の「銘醸名水シリーズ 福正宗 特別純米酒」。
肴は明治屋おいしい缶詰シリーズの、「国産するめいかの肝あえ(生姜風味)」をチョイス。

1625年から続く〈福光屋〉は、金沢で最も古い酒蔵だ。「加賀鳶」「黒帯」など全国に知られる銘柄も多い人気蔵。そこで朝早くから始まる酒造りの現場を訪れようと、朝イチの新幹線に飛び乗った。

旅気分を満喫すべく道中でまず一杯、と〈福光屋〉の人気銘柄「福正宗」を頂く。さらりと飲みやすくキレの良い日本酒の効果もあって、おつまみは進み、流れていく景色も少しずつ解像度を増していく。

金沢駅到着。爽やかな晴天に、気持ちも高まる。

金沢駅に降りたち、いざ酒造りの場へ。ガラス張りの美しい「もてなしドーム」と、伝統芸能である加賀宝生の鼓をイメージした「鼓門」をくぐり抜け、タクシーに乗り込み約15分。金沢大学医学部にほど近い、燕が飛び交う市街地・石引の一角に〈福光屋〉はあった。

福光屋に到着。市街地に突如現れる、予想外のロケーションに驚く中林さん。

入口に架けられた大きな杉玉は、日本で最古の神社と伝えられ、酒造りの神としても名高い奈良の大神(おおみわ)神社のもの。新酒の出来あがりと同時に架け替えられる杉玉は、酒蔵の看板であると同時に、時とともにその色を変え、酒の飲みごろの目印にもなっているのだそう。

蔵での見学に備えて白衣と長靴に着替えたら、杜氏の板谷和彦さんが出迎えてくれた。板谷さんは、農業大学で農学を専攻、酒米開発から酒造りの現場へ入った、生粋の金沢っ子。縁あって〈福光屋〉の杜氏になって以来、4年連続で酒類鑑評会優等賞を受賞している実力派だ。

福光屋の酒造りの責任者である、杜氏の板谷和彦さん。

初めての酒蔵見学、いよいよスタート!

〈福光屋〉は米と水のみで日本酒を造る純米蔵。創業時から水にこだわり、仕込み水だけでなく、酒造りの全工程、道具の洗浄などの全てに、地下水を汲み上げて使っている。この地下水は、古くから日本三名山として知られる白山に、一世紀前(‼)に降った雨水が地中にしみ込み、深く貝殻層を通ってミネラルをまとった“百年水”。酒造りに最適な水質を備えたこの銘水を目当てに、ご近所さんや料理人が〈福光屋〉へ足を運び、水を汲んで帰っていく光景も日常茶飯事だ。中林さんも柄杓で一口、「滑らかで美味しい! こんなに冷たいんですね」。

左上・福光屋の百年水の源となる白山。右上・思わず「もったいない」と言いたくなる勢いで溢れ出す百年水。下・板谷さんの説明に聞き入る中林さん。

注連縄(しめなわ)が張られた蔵に入ったら、まずは屋上へ向かい、蔵人全員で神様にご挨拶。ここから酒造りの一日が始まる。〈福光屋〉では、完成したお酒はまずここへ運ばれて、神様へお供えされるのだそう。「金沢の街を一望できる特等席。神様に手を合わせて、こちらの気持ちも引き締まりました」と、中林さん。

屋上のお社で、酒造りの無事を祈念。

酒造りの主役は、一に麹(こうじ)、二に酛(もと)。この麹と酛はともに米から造られる。酒造りのために作られる酒造好適米を玄米から精米し、洗米、浸漬させて米を蒸し、麹、酛(酒母)を使ってもろみを造り、搾ってろ過。生酒はそのまま、火入れの酒は貯蔵前と瓶詰め前に火入れされる、というのが酒造りの一連の流れ。

洗米、浸漬は、蔵人総出で一斉に作業をし、米の状態を見ながら秒単位で作業を調整する。そして水を含ませた米は、一時間ほどかけて蒸し上げられる。蒸し具合をチェックするには、一つかみの米を手の平で握って揉みしだき「もち状」にして固さをチェック。

「米の蒸し具合は酒質を大きく左右するので、細かくチェックして進めていきます」と、板谷さん。
触ってみた中林さん曰く「ちょうど耳たぶくらいの固さかな?」。

左・杜氏の合図で一斉に米を洗う蔵人たち。中・お米を水に浸す時間のわずかな違いが、日本酒の味に影響する。右・米の蒸し具合をひねり餅で確かめる。ベストな蒸し具合は耳たぶと同じ触感!

蒸し上げてから温度を下げた米は麹室へ運ばれ、麹菌を振りかけたら寝かせて麹造りへと進んで行く。ここでも、麹菌の繁殖具合により変化し続ける麹の様子(破精込み)を見ながら、場所を変えたり手を入れたり換気をしたりと、麹造りの際はつきっきりで寝ずの番をするのが当たり前というから驚く。こうしてできた麹に、蒸し米、仕込み水、そして酵母を加えて、“酛”と呼ばれる酒母を造る工程を経て、いよいよもろみの仕込みがスタートする。

麹造りという、お酒の良し悪しを左右する作業に、中林さんも参加させていただくことに。「この麹で仕込むお酒が飲んでみたい」と中林さん。

仕込みのための専用室で、酒造りを体感。

まずは酛を造る酒母室へ。蔵人たちの全ての動作はスピーディーで無駄がなく、タンクの中を混ぜる “かい入れ”の重さを感じさせない滑らかさ。中林さん、挑戦してみるも2秒でギブアップ。「重くて混ぜられません」と言うと、「自分で持ち上げようとしないで、タンクの縁を使ってテコの原理で動かすんですよ」とのアドバイス。今度はうまく混ぜられました。
次に直径も高さも数メートルあるタンクがずらりと並ぶ仕込み室へ入ると、ふわりと清涼な香りに包まれ、中林さんも思わず「おいしそう……」と声を漏らす。このタンクに入れられた酒母に、麹、蒸し米、仕込み水を加えること3回。

酛造り、仕込みの作業も見せて頂く。お酒の香りが立ち込める空間に、「いるだけで、お肌が綺麗になりそう」(中林さん)

こうして三段仕込みを終え、発酵の過程に進む。

大きなタンクに入れられたもろみがちょうど良い発酵状態になった時に搾って酒と酒粕に分ける。
酒はさらにろ過され、その後生酒でないものは火入れをし、これでやっと日本酒が完成する。

仕込みタンクの大きさに驚く中林さん。タンクの中では、お酒が元気に発酵中。

蔵人の思いを知ることで、酒はもっと美味しくなる。

蔵人の思いはただ一つ、「旨い酒を造りたい」というもの。
「全ての工程で詳細なデータをとって分析もするんですが、目で見る、香りを嗅ぐ、音を聴く、舐める、など、自分の体を使って、常に状態を見ながら進めます。 “酒屋万流”という言葉があるように、酒造りは十人十色」と、板谷さん。

日本酒造りの深淵なる世界をほんのちょっとだけ覗き見ることができた中林さん。続いていよいよ、完成したてのお酒「8:00pm 純米吟醸 生酒」をいただくことに。こちらは、石川県産の五百万石という酒米を100%使用し、キレと旨味のバランスを重視した辛口の純米吟醸酒で、火入れをしない「生酒」。蔵元でしか飲めない新鮮な味わいを損なわないように、10℃以下の低温輸送によって全国に運ばれるのだという。

「実は、今日はこの酒をはじめて搾るタイミングなんです。ですので、まだ蔵人もほとんど飲んでいないお酒です。せっかくだからまず中林さんに試飲していただきましょうか。」
と、板谷さん。

ということで、できたてのお酒を早速いただくことに。肝心のお味については…後編で詳しくお届けします。

搾りたてのお酒。はたして、どんなお酒なのか…?

 

福光屋

8:00pm 純米吟醸 生酒
1800ml

「”午後8時からの大人の楽しみ”を、若い世代のお客様にお届けする」をコンセプトに、石川県産酒米五百万石100%と、100年の時をかけて酒蔵に湧き出る『恵みの百年水』で仕込んだ辛口の純米吟醸生酒。
肉にも魚にも合うキレのよい旨味が楽しめる。

詳細はこちら

福光屋

銘醸名水シリーズ 福正宗 特別純米酒
180ml

サラリとしつつ、コクも持ち合わせた特別純米酒です。

詳細はこちら

明治屋

おいしい缶詰 国産するめいかの肝あえ(生姜風味)
90g

身が厚くやわらかいするめいかを
味噌と生姜の風味を効かせた肝と和えました。

詳細はこちら

(>後編へつづく)

  • facebook
  • twitter

今回の旅人中林美和

なかばやし・みわ 東京都出身、モデル。雑誌「CanCam」(小学館)の専属モデルを経て、様々な雑誌やTV、イベントなどで活躍。結婚、出産を経て現在は、雑誌「VERY」(光文社)やTVのナビゲーターなど多方面で活躍中。料理上手としても知られる。著書に、『おんぶにだっこでフライパン〜4人育児の奮闘記〜』(KADOKAWA)、『Mama Hawaii』(KKベストセラーズ)、『美和ママごはん♡』(セブン&アイ出版)などがある。