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熱い人と、冷たいビールの物語 クラフトビール物語

Vol.6 老舗酒蔵ならではのビール造りに迫る 実直さと冒険心。地元に愛され続けるビール造りの裏にある酒蔵ならではのクラフトマンシップ。

今や全国で作られるようになったクラフトビール。マイクロブルワリーと呼ばれる小さな醸造所から、コンビニにも商品が並ぶ大手まで、その一つ一つにビール造りの哲学があり、ビールに込めた愛がある。一杯のビールの味わいに詰めこまれた、造り手たちの熱い、熱い情熱の物語を追いかけて、日本各地のブルワリーをめぐります。

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今日も晴天。藤原ヒロユキさんと訪ねるクラフトビール物語の旅は、いつもお天気。「ビールの伝道師」という称号だけではなく、「ミスタービール日和」の称号も神様が授けているようだ。

▲ ブルワリーの隣は日本酒の酒蔵。この距離感が生み出すものとは… ? 藤原さんが探っていく。

そんな、ビール日和の日に訪ねるのは岡山市の『宮下酒造』。岡山の酒場で愛されている地酒『極聖』などの日本酒酒蔵として名を馳せているが、焼酎、ジン、リキュールなど多彩なお酒への挑戦、さらに全国的にも有名な岡山のフルーツを生かした酒造りも続けている。

▲ ブルワリーの隣は日本酒の酒蔵。この距離感が生み出すものとは…?ヴァイツェンが似合う爽快な青空の下、藤原さんが探っていく。

『独歩』はその宮下酒造が手がけるクラフトビールのフラッグシップだ。「日本酒を中心とする酒造メーカーながら、最初の地ビールブームの際に、クラフトビール造りに取り組まれ、今も、地元に浸透しながら、しっかりと真摯にビールと向き合って造り続けられている。これは立派なことですよ。今日は訪問するのを楽しみにしていました。」

その藤原さんの言葉に「いえいえ、まだまだこれからです。」と、背筋を伸ばすのは、ビール造りの責任者。伊藤泰信(やすあき)さん。東京生まれ、東京農大で醸造を学び、宮下酒造入社を機に岡山に移り住んで12年。実直な人柄が挨拶の雰囲気からも伝わつてくる。早速、工場にご案内いただく。

▲ 「車で言えばロールス・ロイスやメルセデス」と藤原さんが例えたタンクなど、随所に攻めの投資も。
▲ 丹念に設備をチェックする藤原さん。肌触り、香りなども重要なファクター。

「全体的にはコンパクトながら、いろいろな面白い試みをされているし、設備投資も着実にされている。なによりも、とてもきれいに使っていらっしゃるのが素晴らしいですね」というのが藤原さんの印象。「すべてに目が行き渡っているという印象ですが、ブルワリーには何人いらっしゃるんですか?」と藤原さんが聞くと、 「5人です。私は日本酒づくりをしているのでいったりきたりですが」と伊藤さんが答える。

▲ 伊藤さん以下、男女の若いスタッフが活躍する現場。老舗の酒蔵だが、実に明るい表情で溌刺と取り組んでいる。

そう、伊藤さんは、製造課の課長として、焼酎以外の、すべてのブランドの酒造りにかかわっている。この答えに藤原さんの目がキラリ。実は、ビール造りと日本酒造りの共通点や相違点については、現場の方に聞いてみたかったようだ。

「日本酒とビール。造りにおいてはどのような違いがありますか?」(藤原さん)

▲ ビール造りと酒づくり。クリーンで涼しい空間の中でもいつしか話は熱く。伊藤さんは日本酒の前掛けで造りに挑む。

伊藤さんは、まず、ビール造りの難しさを語る。「ビールでまず難しい点は、アルコール度数が低いということかと思います。日本酒のように度数が高いと、ある程度必要のない菌は死滅しますが、5%、6%という度数では、必ずしもそうではないため細心の注意が必要です」。

「ビールと日本酒ではきつちりやらなければいけない部分が違いますね。ビールはレシピがありますが、日本酒はどうですか?」(藤原さん)。

「日本酒は基本、米と酵母の組み合わせですから、ビールの原材料の組み合わせは、日本酒よりも複雑です。ただ、問題はスピード感。ビールは、自分自身の思いつきである程度何度もトライできるのですが、日本酒は基本1年に1回しかトライができません。弊社の場合、一度に仕込む量も、ビールは少量ですが純米酒などはかなりの量を仕込みますので、日本酒では、なかなか新しいものに挑戦するのは難しいです」(伊藤さん)。

▲ モルト、ホップなどを真剣な視線で見つめる藤原さん。原料の選び方、ブレンドの手法。随所にビールと酒の違いと共通点がある。

藤原さんはこの伊藤さんの言葉を受けて「日本酒とビールの醸造は、ともに『ブリュー』。つまり穀物を使った醸造酒という点では兄弟です。おそらく伊藤さんは、日本酒の難しさ、ビールの難しさを理解しながら、その難しさや良さ、そして、楽しさをどちらにも生かしているんでしょうね」と感心。

伊藤さんは、実直そうな表情を変えずに答えます。「弊社のビールはアイテム数が多く、日々、小さなチャレンジを繰り返しています。お客様に喜んでいただくためにも、他のお酒を作っているという弊社ならではの特徴を生かして、良いものをお届けしていかなければと考えています」

▲ せっかくのビール日和。視察の後は、外で乾杯!

日々の小さなチヤレンジの繰り返し。しかし、そこには、日本酒造りで培った、長い目でじっくり取り組む根気のよい姿勢、長く愛されるものを造るという哲学が息づいている。

『CRAFT 優爽のヴァイツェンKIBI OKAYAMA』のような、新しいアイテムにも、冒険心と真摯さが込められ、その哲学は続いていく。

藤原さんの「こんなビール日和に、ここ岡山で『優爽のヴアイツェン』を飲めるなんていうのは実にうれしいですね。伊藤さんが手がけた他のビールとともに、じつくりたのしませていただきましよう」という期待感の裏には、ビールを通してもつと伊藤さんならではのクラフトマンシップに迫りたいという気持ちがあるようだ。後編では、多彩なアイテムのテイスティングを通して、さらに宮下酒造のビール造りを掘り下げていく。


宮下酒造

J-CRAFT 優爽のヴァイツェン
KIBI OKAYAMA

330ml

岡山の穏やかな気候が表現されたような優しい口当たり。そしてすぐに訪れる爽やかさ。フルーティで甘い香りを感じながら、余韻は軽やかに。ヴアイツェンらしさをちゃんと守りつつ、誰からも愛される端正さと明るさが表現されている、飲み飽きず、たのしく飲み続けられる1本です。

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宮下酒造

J-CRAFT 華ほの香 優爽のヴァイツェン KIBI OKAYAMA

330ml

熟したバナナを思わせるフルーティで甘い香りと、クセのない優しい味わい。クセの無い、すっきりとしたうまみが広がり、ついもう一杯頼みたくなります。

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宮下酒造

雄町米ラガービール

330ml

老舗酒蔵らしい作品。宮下酒造の吟醸酒と同様、精米歩合60%まで贅沢に磨き上げた地元岡山の酒造好適米「雄町」を副原料に使用。ラガーらしい強めの苦味でも、雄町の特徴であるふくよかな透明感とともに、気持ちのよいバランスが感じられます。

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宮下酒造

牡蠣に合う白ビール

330ml

牡蠣によく合うとされるフランスの白ワイン・シャブリを意識した辛口の白ビール。大麦麦芽に小麦麦芽を加え、酸味と芳醇さを醸しだしています。ほどよく熟した柑橘系の香りと爽やかな風味も牡蠣によく合います。

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(>後編へつづく)

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藤原ヒロユキ

今回の旅人 藤原ヒロユキ

ふじわら・ひろゆき ビアジャーナリスト、ビール評論家、イラストレーター。1958年生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。季刊「ビール王国」編集主幹。ビールに関する各種資格を取得、ワールドビアカップをはじめ欧米の国際ビアコンテストの審査員を務める。日本外国特派員協会会員。ビールにまつわる著書多数。主な著書に「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎)、「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド)など。