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熱い人と、冷たいビールの物語 クラフトビール物語

Vol.3 ヤッホーブルーイング「よなよなエール」 夢は大きく全国ドームツアー!日本のクラフトビール業界を牽引する、ヤッホーブルーイングの経営哲学に迫る。

今や全国で作られるようになったクラフトビール。マイクロブルワリーと呼ばれる小さな醸造所から、コンビニにも商品が並ぶ大手まで、その一つ一つにビール造りの哲学があり、ビールに込めた愛がある。一杯のビールの味わいに詰めこまれた、造り手たちの熱い、熱い情熱の物語を追いかけて、日本各地のブルワリーをめぐります。

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7月7日、ビールの伝道師・藤原ヒロユキさんが長野県佐久市にある「ヤッホーブルーイング」を訪れた。同社の看板商品「よなよなエール」の誕生から19年を迎えた記念すべき日を祝い、そして出来たてのビールを味わうために、東京からやって来たのだ。

1997年の創業以来、日本のクラフトビール業界を牽引し続けるヤッホーブルーイング。「よなよなエール」「水曜日のネコ」「僕ビール、君ビール。」など、多くの熱狂的なファンを獲得してきた個性的なビール造りを支える、同社のモットーとは何か? そして、彼らが次に目指すステージとは? 社長の井手直行さんと、醸造ユニットディレクターの森田正文さんに、藤原さんが話をうかがった。

藤原さん:まずは、「よなよなエール」19歳の誕生日に乾杯しましょうか。

森田さん:では、思い思いのビールを注いで…

3人:乾杯!

▲ まずは乾杯。井手社長(右)が「よなよなエール」、藤原さん(中央)は「僕ビール、君ビール。 よりみち」、森田さん(左)は「僕ビール、君ビール。」をセレクト。

井手さん:ありがとうございます。いいですね、昼間のビールは(笑)。

藤原さん:よなよなエールもそうですけど、ヤッホーブルーイングのビールは苦味と甘味のバランスが素晴らしいですよね。もう何度も飲んでいるのに、いつも「もう一杯」と言いたくなる。

森田さん:ホップやモルトが本来持っている個性と、飲みやすさのバランスということは、うちではすごく意識しています。

藤原さん:最近は個性が強いIPAが人気ですよね。ただ、インパクトだけを求めたようなビールも増えています。それだと最初の一口、二口は驚くけど、結局は一杯を飲み切るのもしんどくなってしまうんですよ。

井手さん:びっくり箱を作りたいわけじゃないですからね、あくまでもヤッホーブルーイングは、「毎日飲みたくなるビール」がテーマです。

藤原さん:個性と飲みやすさのバランスというのは、クラフトビールがこれだけ一般の人に浸透してきた中で、非常に大切な要素だし、そこを守り続けている御社は、やはりトップランナーだと思います。最近のブームはヤッホーブルーイングにとっても追い風でしょう?

井手さん:まだまだ道半ばですけど、手応えは感じています。もともとヤッホーブルーイングは、アメリカのクラフトビール文化を日本に普及させたくて誕生したブルワリーなんです。大手のメーカーだけじゃなく、個性があるバラエティに富んだビール文化を定着させたい。だからブームで終わらせず、もっと盛り上げていかなければならないと思っています。

藤原さん:僕がヤッホーブルーイングの功績だと思うのは、コンビニでクラフトビールを買えるようにしたことです。この「僕ビール、君ビール。」だって、こんな香りが特徴的なビールは、これまで家庭では手軽に飲めなかった。

井手さん:これは若者向けのビールを造ってほしいとローソンさんから依頼されて考えた商品です。よく「若者はビールを飲まない」と言われます。だから「僕ビール、君ビール。」では、明らかに大手のメーカーさんとは違うビールを意識して、果実のような香りとさっぱりとした味わいを目指しました。そうしたら実際に若者がかなり飲んでくれて、リピーターも増えています。

藤原さん:こちらの「僕ビール、君ビール。よりみち」はどのように?

森田さん:「僕ビール、君ビール。」がすごく好評だったので、その第二弾として企画しました。前回がセゾンビールだったので、今度はアメリカ産のホップと麦芽を使った「アメリカンウィート」をベースにしています。

藤原さん:柑橘系というかな、ふわっとした瑞々しい香りのビールですね。甘すぎず苦味もある。おっしゃるように、飲みやすさと個性がしっかり両立しています。こういうビールがコンビニで買えるようになったのは、まさに御社のおかげですね。

井手さん:僕らがよなよなエールを作り始めた19年前は、コンビニに置かれるなんて想像もしていませんでした。

藤原さん:それを実現するために、みなさんはどんな戦略を立ててきたんですか?

井手さん:戦略というよりも、まずクラフトビールにかける思いが先にありましたね。私たちがよなよなエールで目指したのは、大手の「喉ごしすっきりラガービール」しかなかった時代に、“夜な夜な”飲める味わい深いエールビールを家庭に届けることでした。

それを実現するためには、どこでも買えるようにしなければならないですよね。すると価格設定も、手が届きやすい金額にしなければならない。クラフトビールは大手のビールよりも価格が高めなんですが、そこを企業努力で何とか利益が出るギリギリのラインに設定する。そして、大量の注文に応えられる供給量も確保する。ここまで頑張って、ようやくコンビニに並べてもらうことができたわけです。だから本当に感慨深いです。

藤原さん:クラフトビールを全国の人に飲んでほしいという思いが先にあり、そのためにどうするか考えていったと。そういった流通面だけでなく、ヤッホーブルーイングはクラフトビールの文化を広げるためにいろんな試みを行っていますね。イベントを積極的に行ったり、パッケージや商品名が個性的だったりと、すごく積極的に仕掛けている印象です。

井手さん:僕らのモットーは「ビールに味を!人生に幸せを!」です。ビールを飲むと初めて会った人でも気軽に話せるようになったり、気持ちが楽しくなるじゃないですか。これを私たちなりのやり方で伝えていきたいんです。つまり、ビールを通じたエンターテインメントを届けたい。例えば、今年5月に北軽井沢のキャンプ場で1泊2日のファンイベントをやったんですよ。約1000人が集まりました。そういうことをやると、僕らも楽しいし、お客さんもすごく楽しんでくれます。

森田さん:アメリカのビール文化がまさにそういう感じで、彼らはビールを中心に地域の産業そのものに影響を与えるような活動をしているんですね。ただビールを造って売るだけじゃなく、ビールを通じたサービスでお客さんに楽しみを還元していく。そういう文化をヤッホーブルーイングも広げていきたいと思っています。

藤原さん:ビールは楽しいお酒、笑顔が似合うお酒ですよね。御社は昔から、そこをしっかり伝えてようとしてきた印象があります。

井手さん:まあ、自分たちが楽しんでいるだけじゃないかという噂もありますけどね(笑)。

藤原さん:いやいや、ビール造り以外のことができるのは、ヤッホーブルーイングの品質がしっかりしているからですよ。クオリティが低いビールを造っていたら、誰もファンにはならない。

井手さん:それもやっぱり、創業時の理念に基づいているんですよ。おいしいビールを造るのは基本中の基本だけど、広げる方法を考えなければ、軽井沢の街の外まで届かない。日本全国にクラフトビールの文化は根付かない。ただし、僕らには大手さんのような資金がなかった。

お金がないなら、アイデアで勝負するしかないわけです。例えば、パッケージやネーミングを特徴的にしてみる。よなよなエールがスーパーやコンビニの棚に並んでいたら、「なんだこれ?」となるじゃないですか。僕らが宣伝しなくても、お客さんに勝手に見つけてもらう、勝手に「面白いビールがあったぞ」と口コミしてもらう。でも、そのためには見た目だけを特徴的にしてもダメで、飲んでもほかと違うとわかるだけの個性がなければならない。そこは常に心がけています。

▲こちらも個性的なネーミングとパッケージデザインで人気を博すベルジャンホワイトエール「水曜日のネコ」。

藤原さん:ヤッホーブルーイングは次々と新しいアイデアを生み出しているけど、そういう組織はどうやって作り上げたんですか?

井手さん:大手企業のような縦割りの組織にしないということに尽きますね。組織が個性的じゃないと、商品もプロモーションも個性的にならないんですよ。いつもジーパンでどこかに行ったり、ニックネームで呼び合ったり、社員と僕もタメ口で接したりとか、普通の組織と違うカルチャーを育むことで、他社と違うアウトプットが生まれます。

藤原さん:なるほど、個性的なことをするためには個性的な人の集団にしなければならないということですね。

井手さん:そうです。遠回りなように見えますけど、人こそが会社の大事なDNAだと思っています。

▲藤原さんが「よなよなエール」の誕生日にプレゼントしたイラストを手に話す。目標は全国に「よなよなエール」を持って行脚して、最後は宇宙まで行きたい。個性的な集団をまとめ上げるのは、「人こそが会社のDNA」という精神。

藤原さん:そんな井手さんは今、『会社の目標は?』と聞かれたら何と答えますか?

井手さん:僕は2020年までにビールイベントのドームツアーをしたいんですよ。よなよなエールを引っさげて、各地で全国のファンを何万人も集める。ドームを満杯にできるのは、ジャニーズかよなよなエールかと言われるくらいの存在にしていきたいですね。そうすれば、よなよなエールを知らない人にも、「クラフトビールって楽しそうだな」と伝わっていくと思うんです。

藤原さん:ただ、ビールを造るだけで満足してしまうブルワリーがある中、ヤッホーブルーイングは本当に「文化を広げる」ことを考えていますよね。僕は御社に日本のクラフトビール業界の先生になってほしいと思っているんですよ。造り方だけじゃなくて、商品をどう売っていくかということまで含めて教えていく。そんな学校があれば業界全体の底上げにもつながると思います。

井手さん:ビールの学校は作りたいと本気で考えています。クラフトビール版のビジネススクールみたいな学校があれば、業界のレベルも格段に上がっていくでしょうね。そうだ、藤原さん校長になってくださいよ!

藤原さん:御社が本気でやるなら、真面目に考えますよ!(笑)。

井手さん:ありがとうございます。何年かかっても、必ず実現させますよ。

藤原さん:じゃあ、業界全体の底上げを祈念して、最後にもう一度、乾杯しましょうか。

森田さん:乾杯は何度してもいいですしね。

3人:では、乾杯!!

 

前編と後編を合わせてご覧になりたい方はこちらから

ヤッホーブルーイング

僕ビール、君ビール。

350ml ローソン限定商品

麦芽とホップだけなのに、若い果実のようにフレッシュでジューシーなアロマが、ふわっと立ちのぼる。それでいて、キリッとしたホップの苦みが、フルーティなフレーバーを引き立てる。ホップと酵母がつくりだす重層的な味と香りに、ハッとさせられるビールです。

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ヤッホーブルーイング

僕ビール、君ビール。よりみち

350ml ローソン数量限定商品

ふんだんに使用した小麦麦芽により、口当たりは柔らかでさわやか。
それでいて、ハッとするような個性的な香りをさらに追求しました。
新種のアロマホップを大量に使用することで、マンゴーやパッションフルーツを思わせる香りが驚くほど立ちのぼり、さらに柑橘系ホップ「カスケード」の香りが重なります。

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ヤッホーブルーイング

よなよなエール

350ml

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ヤッホーブルーイング

水曜日のネコ

350ml

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藤原ヒロユキ

今回の旅人 藤原ヒロユキ

ふじわら・ひろゆき ビアジャーナリスト、ビール評論家、イラストレーター。1958年生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。季刊「ビール王国」編集主幹。ビールに関する各種資格を取得、ワールドビアカップをはじめ欧米の国際ビアコンテストの審査員を務める。日本外国特派員協会会員。ビールにまつわる著書多数。主な著書に「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎)、「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド)など。