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熱い人と、冷たいビールの物語 クラフトビール物語

Vol.2 銀河高原ビール 「J-CRAFT ヴァイツェン IWATE SAWAUCHI」日本に「小麦のビール」を根付かせたい。銀河高原ビールが岩手県から挑戦する、「新しい王道」への思いとは。

今や、日本全国で作られるようになったクラフトビール。マイクロブルワリーと呼ばれる小さな醸造所から、コンビニにも商品が並ぶ大手まで、その一つ一つにビール造りの哲学があり、ビールに込めた愛がある。一杯のビールの味わいに詰めこまれた、造り手たちの熱い、熱い情熱の物語を追いかけて、日本各地のブルワリーをめぐります。

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1996年の設立から、今年で20周年を迎えた「銀河高原ビール」。岩手県和賀郡西和賀町(旧・沢内村)の山中にある同社は、ビールの名産地であるドイツのバイエルン地方に似た気候と、豪雪地帯ならではの清冽な天然水を活かした丁寧なビール造りを続けている。

今回、同社の新たなビール「J-CRAFT ヴァイツェン IWATE SAWAUCHI」を飲むために訪れたのは、ビール伝道師の藤原ヒロユキさん。日本の主流である大麦麦芽だけを使ったビールではなく、小麦麦芽も使い、フルーティーな香りと甘みのある味わいを楽しむ「ヴァイツェン(バイエルン地方で主に生産されるビールの種類)」を定番とする銀河高原ビールだけあり、個性的な「小麦のビール」を造り上げた。

ドイツから受け継いだ王道を守りながらも、クラフトビール好きも満足させる味わいの「J-CRAFT ヴァイツェン IWATE SAWAUCHI」。訪問記の後編では、20周年を迎えた銀河高原ビールの歩みを振り返りながら、同社代表取締役の小谷昇義さんと、「J-CRAFT」の仕込みを担当した片山圭さんの2人に話を聞いた。

藤原さん:醸造所を案内していただいて驚いたのは、この規模です。毎日何万リットルも生産するブルワリーって、日本人の考える「クラフト=工芸的」の範疇を超えてるのかもしれないですね(笑)。でも、アメリカではもっと大きいクラフトビールメーカーがいくつもありますし、クラフトって規模の問題ではないですよね。丁寧で真面目なビール造りは、まさにクラフトビールメーカーと呼ぶにふさわしいと思います。

小谷さん:ありがとうございます。銀河高原ビールは尖ったビールを造ることよりも、すべての世代に飲んでもらえるビール造りを目指しています。一番意識しているのは「すぎない」ことです。苦すぎない、でも甘すぎない。

ヴァイツェンというビールは酵母をろ過しないので、日本の主流である「ピルスナー」に比べると、喉ごしのシャープさに欠けるイメージがあります。その分、どこかに甘さを感じられて、また飲みたいと思ってもらえるような苦味と甘味のバランスに気を付けていますね。

▲銀河高原ビールの代表取締役、小谷昇義さん

藤原さん:仰るとおりだと思います。本当にバランスがいい。この安定感が、長年の支持につながっているのでしょう。それともうひとつ、醸造所を見て驚いたことがあって、衛生管理をすごく徹底されていますよね?

先ほど「バランス」と仰ったけど、いろんな人に満足してもらえるバランスを保つのは、すごく難しい。それを支えるのが、細かいところまで徹底して管理する姿勢だと思います。このビールの味わいにも確実に表れています。

▲写真左上・銀河高原は徹底した衛生管理を行う。 写真右上・ビール造りの機器もパーツまで分解して消毒。
写真下・管理の行き届いた醸造所内

小谷さん:藤原さんにとって銀河高原ビールは、どんなブルワリーですか?

藤原さん:やっぱり定番がしっかりしていますよね。この「小麦のビール」もそうですし、「ヴァイツェン」も「ペールエール」も、定番の商品はどれも王道をきっちり守って造られている。良いブルワリーというのは、定番が安定してこそ冒険ができる。いつも違ったビールを造っていても面白いけど、それだとファンが定着しづらいですからね。

小谷さん:うちとしても、ずっと「小麦のビール」ありきで営業してきました。まずはこれを定着させて、それから次を提案する。もともと日本人に馴染みのないビールですから、「小麦麦芽のビールといえば、銀河高原ビールだよね」と思ってもらうことを目指しています。

一方で、新しいビールにも常に挑戦したいと思っていまして。限定品も必ず3ヶ月に1回は販売しています。夏場に合うビール、冬場に合うビールと、定番は守りながらも、季節に応じた新しい商品開発は続けていますね。

藤原さん:定番という軸がしっかりしているから、新しいものが提案できると。今回の「J-CRAFT ヴァイツェン IWATE SAWAUCHI」も新しいビールですけど、造り手の片山さんはどういったところを意識されました?

片山さん:ヴァイツェンは銀河高原ビールの定番ではあるんですが、今回は新しい挑戦ということで、少し定番とは違うヴァイツェンを意識しました。泡持ち、香り、コクの3つが今回の挑戦のキーワードですが、その中でもとにかく大切にしたのはコク、つまり、「舌に残る甘さ」ですね。そのために普通はあまりヴァイツェンには使わない、ペールエールやIPAに使うホップを使用してみたり、発酵させる温度によってどのくらい甘さに違いがでるか細かく実験してみたりと、銀河高原ビールらしさがありながらも、少し冒険をしたビールを目指しました。

藤原さん:それでもヴァイツェンの王道の味わいが感じられるのはさすがのバランス感覚ですね。王道を守りながら、個性を出していくというのは、思った以上に実は難しいことですし。そもそも片山さんは、どうして銀河高原ビールに入社されたんですか?

▲「J-CRAFT」の醸造を担当した、片山圭さん。

片山さん:ビールが好きだったんです。それに東京の大学で微生物学を勉強して、その知識が活かせるというのもありました。

藤原さん:大手のビールメーカーは選ばなかった?

片山さん:大学生のときにビアフェスティバルに行って、クラフトビールが面白いと思ったんです。ただ、クラフトビールの業界は間口が狭いので、とにかくいろんな会社に電話をかけて、採用がないかひたすら聞いていきました。その中のひとつに、銀河高原ビールがあったんです。

小谷さん:片山くんのように東京から就職を希望する若者がいるなんて、時代の変化を感じますね。最近でこそ若い人にも名前が知られるようになってきましたが、昔は「小麦のビール? 何それ?」という反応でしたから。

藤原さん:クラフトビールが一般的になってきたのは2011年くらいですかね。きっかけのひとつに東日本大震災もあったと思います。大変な災害を経験して、日本人の人生観が少し変わってきた。本当に自分にとって大切なものは何か? 日々の幸せって何か? 多くの人がそういうことを見つめ直すきっかけになった気がするんです。

ビールも今までは何となく、「とりあえず、ビール」でした。でも最近では、「何となくでいいの?」「せっかくなら本当に美味しいビールを自分で選ぼう」という楽しみ方が広まってきたと思いますね。

小谷さん:うちのビールも復興支援で全国に広まったという面がありますね。

藤原さん:でも、それが復興支援で終わっていたら、こんな規模を保てなかったでしょう?

小谷さん:復興支援をきっかけにファンになってくれた人は多いと思います。もともと西日本の営業は弱かったんですけど、一度並べてもらってから、継続して注文が来る例が増えているんです。全国のいろんなところで銀河高原ビールを指名してもらっていると実感しています。

片山さん:僕は2011年に成人したので、ビールが飲めるようになったときには、ちょうどクラフトビールが盛り上がっていたんですよ。だから偏見がなく好きになれたというのはあります。

藤原さん:しかし、ビールを造るために岩手までやって来たというのはすごいね。

片山さん:出身が千葉なので、最初の冬はびっくりしましたね(笑)。ものすごく雪が降るんです。朝にクルマで来て除雪するんですけど、帰るときにはクルマが埋まるくらいまで積もっていました。

藤原さん:それは大変だ(笑)。これから造っていきたいビールはありますか?

片山さん:「J-CRAFT ヴァイツェン IWATE SAWAUCHI」の前にも、期間限定の「エクストラ ペールエール」を手がけました。シトラホップを100%使用したペールエールで、シトラス系の香りが特徴的なひと味違ったビールです。そんな風に定番は大切にしながら、原料の意外な組み合わせで驚くようなビールを造っていきたいですね。

小谷さん:今はWEB通販も伸びているので、限定品を定期的に出して反応を見ながら、好評なものは新しい定番に格上げしていこうと考えています。

藤原さん:御社は奇をてらうことのない王道をやってらっしゃるから、これからも王道を突き詰めてもらいたいですね。古典落語もできて、テレビにも出られる落語家さんというか(笑)。そこにいてくれるだけで安心感のあるブルワリーとして、これからもクラフトビールを全国に広げてほしいと思います。

   

銀河高原ビール

J-CRAFT 華ほの香 ヴァイツェン IWATE SAWAUCHI

300ml

仕込み水として最適な、適度なミネラルを含む岩手県和賀岳の伏流水とドイツ産麦芽を100%使用しています。柑橘系の香りとスパイシーさも兼ね備えたホップの香りにより、爽やかさにこだわりながら、香りを強調しています。

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銀河高原ビール

J-CRAFT ヴァイツェン IWATE SAWAUCHI

300ml

ヴァイツェンの特徴であるバナナ香を思わせるフルーティーな香りを強調し、使用麦芽を増量することで更にコクが増しています。ドイツのビール純粋令に基ずく伝統的な製法のビールで、小麦(ヴァイツェン)麦芽を50%以上配合しています。

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銀河高原ビール

ヴァイツェン スターボトル

300ml

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銀河高原ビール

小麦のビール
シルバーボトル

300ml

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銀河高原ビール

小麦のビール

350ml

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銀河高原ビール

ペールエール

350ml

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銀河高原ビール

そよ風のケルシュ

350ml

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藤原ヒロユキ

今回の旅人 藤原ヒロユキ

ふじわら・ひろゆき ビアジャーナリスト、ビール評論家、イラストレーター。1958年生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。季刊「ビール王国」編集主幹。ビールに関する各種資格を取得、ワールドビアカップをはじめ欧米の国際ビアコンテストの審査員を務める。日本外国特派員協会会員。ビールにまつわる著書多数。主な著書に「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎)、「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド)など。