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熱い人と、冷たいビールの物語 クラフトビール物語

Vol.1 ベアード・ブルーイング『J-CRAFT』「じっくり」味わってほしい。ビールの魅力を押し拡げる、何杯でも飲みたいペールエール。

今や、日本全国で作られるようになったクラフトビール。マイクロブルワリーと呼ばれる小さな醸造所から、コンビニにも商品が並ぶ大手まで、その一つ一つにビール造りの哲学があり、ビールに込めた愛がある。一杯のビールの味わいに詰めこまれた、造り手たちの熱い、熱い情熱の物語を追いかけて、日本各地のブルワリーをめぐります。

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クラフトビール物語

▲ベアード・ブルーイングの醸造所。鳥のさえずる林に囲まれた、絶好の立地。

伊豆箱根鉄道の修善寺駅からクルマで約20分。狩野川のふもと、美しい自然に囲まれた場所に、クラフトビールの醸造所「ベアード・ブルーイング」はある。 「ベアード・ブルーイング」の最初の醸造所は2001年、沼津港のほど近くに設立された。わずか30リットルの樽からビール造りを始め、「日本で一番小さな醸造所」と呼ばれた。それから13年後、全国に多くのファンを抱え、「タップルーム」と名付けた、その名の通りベアードビールを最大限楽しむことができるブルワリー・パブ4軒(当時)を運営するまでに至った同社は、クラフトビール業界では日本最大級となる醸造所を現在の地、修善寺にオープンした。

醸造所にも「タップルーム」が併設され、定番から季節限定品まで、さまざまなベアードビールを飲むことが
できるほか、広大な敷地は、今後キャンプやバーベキューを楽しむスペースとして活用する計画も進んでいる。
クラフトビールの製造拠点というだけでなく、地域の人々が交流する場としても設計されているのだ。

今回、ベアード・ブルーイングを訪れたのは、ビールの伝道師・藤原ヒロユキさん。目的は、ベアード・ブルーイングが新たに仕込んだという、あるクラフトビールを飲むこと。修善寺を訪れた某日は初夏の好天に恵まれ、まさにビールを飲むのにうってつけの日となった。

▲藤原さん(写真右)は、ブライアンさん(同左)やさゆりさん(同中)とも旧知の仲。

醸造所に着くと、ベアード・ブルーイングのブライアン・ベアード社長と、副社長で奥様のさゆりさんが出迎えてくれた。早速新しいビールを…と、その前に、お二人に醸造所の中を見せていただくことに。

「この樽から僕らのビール造りは始まりました」

▲創業当時の小さな樽、つまり、ベアード・ブルーイングの歴史そのものが出迎えてくれる。

建物に入るとまず誰もが目にする場所には、創業時に使われていた醸造樽が飾られており、ベアード・ブルーイングの歴史を感じることができる。

手入れが行き届き清潔な醸造所を案内しながら、使用しているホップやモルトの一部、さらには「ビールのレシピ」が記録されたファイルまで惜しみなく披露してくれるブライアンさん。実はベアード・ブルーイングでは、本来は「秘伝」のはずであるビールの作り方を公開している。

▲写真左上・ビールの原材料の一つ、ホップ。香りや苦味をもたらす。写真右上・同じく、モルト。味や、ビールの色を左右する。写真下・ブライアンさんのように、ビールの設計図を公開する作り手は少ない。

「もしできるなら、真似してもらっても構わないのです。それで日本に美味しいクラフトビールが増えるなら、とてもいいことだと思っています。日本には素晴らしいビールの文化がありますが、『とりあえず、ビール』と、喉を潤すためのビールばかり。でも、ビールの魅力というのは、それだけではない。本当はビールほど種類が豊富なアルコールはないんです。シーンや食事に合わせて、いろいろな楽しみ方があります。しかも、いつでも、どこでも飲める。ビールの楽しみ方をもっと知ってもらえれば、みんながもっと幸せになると思っています」(ブライアンさん)

▲修善寺に移ってきて、一度に仕込めるビールの量が格段に増えた。
今は空いている左のスペースも、近い将来より大きなタンクを設置する予定。

日本に新しいビール文化を根付かせるために、クラフトビールを造り続けるブライアン&さゆり夫妻。2015年に経済産業省が選定した“世界にまだ知られていない、日本が誇るべき優れた地方産品”「The Wonder 500 ™(ザ・ワンダー・ファイブハンドレッド)」にも選ばれ、日本を代表するクラフトビールブランドとしての名を確立している。

それでも、まだまだ夫妻の理想には到達していない。藤原さんが訪れたこの日も、(今回の目的のビールとはまた違う)新しいビールの仕込み作業が行われていた。将来的にはさらに醸造樽を増やし、もっとたくさんの、そしてもっとさまざまな味わいのベアードビールを販売していく予定だという。

醸造所を一通り案内していただいたあと、いよいよ今回仕込まれたビールを飲ませてもらうことになった。その名は「J-CRAFT ペールエール IZU SHUZENJI(ジェイクラフト ペールエール イズ シュゼンジ)」。

新たに誕生したこのビールは、香りが特徴的な「ペールエール」という種類のビールだ。

ブライアンさんは言う。

「日本ならでは、のペールエールとして、さっぱりした和食にも合うように工夫しました。夜に飲んでも、昼に飲んでも大丈夫(笑)。目指したのは、IPA(インディアペールエール)のように個性が強いビールではなくて、バランスが取れていて、毎日何杯でも飲みたいくらいのペールエールです。『とりあえず』だけじゃなく、『じっくり』と味わってみてほしい。さあ、ぜひ、飲んでみてください」

ブライアンさんに促され、ついに「J-CRAFT」を初試飲。果たして、その味は…? ベアード・ブルーイング訪問記の後編では、藤原さんとブライアンさんが「J-CRAFT」を味わいつつ、その味と香りの感想から、クラフトビール全体を含めた談義まで、熱いトークを繰り広げます。ぜひ、お見逃しなく。

   

ベアード・ブルーイング

J-CRAFT ペールエール IZU SHUZENJI

330ml

ブライアン・ベアード社長が「全く新しいものができた」と誇る、
フルーティーさとスパイシーさを併せ持つ万能型ペールエール。
本文中でブライアンさんが語る通り、和食にもしっくりくる香りと味わい。
低温輸送の導入により、ブルワリーの新鮮な味わいをそのまま楽しめるのもポイント。6月より全国で順次発売。

詳細はこちら

ベアード・ブルーイング

J-CRAFT 華ほの香
ペールエール IZU SHUZENJI

330ml

ベアードビール最大の特徴である、摘みたてのホップを乾燥・冷凍し、貯蔵タンクに投入する「ドライ・ホッピング」という技法を採用して創った ビール。「J-CRAFT ペールエール IZU SHUZENJI」同様、低温輸送の導入により、ブルワリーの新鮮な味わいをそのまま楽しめる。
7月より全国で順次発売。

詳細はこちら

ベアード・ブルーイング

ライジングサン ペールエール

330ml

ベアード・ブルーイングの定番ビールの一つ。
バランスが良く、毎日でも飲み飽きない。

詳細はこちら

(>後編へつづく)

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藤原ヒロユキ

今回の旅人 藤原ヒロユキ

ふじわら・ひろゆき ビアジャーナリスト、ビール評論家、イラストレーター。1958年生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。季刊「ビール王国」編集主幹。ビールに関する各種資格を取得、ワールドビアカップをはじめ欧米の国際ビアコンテストの審査員を務める。日本外国特派員協会会員。ビールにまつわる著書多数。主な著書に「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎)、「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド)など。