土地や作り手の顔が浮かぶ! 「産地呼称焼酎」ってなんだ?

土地や作り手の顔が浮かぶ! 「産地呼称焼酎」ってなんだ?

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長崎の壱岐焼酎

玄界灘に浮かぶ長崎県壱岐島(いきのしま)。ここで作られる「壱岐焼酎」のように、原産地名が入った焼酎は「産地呼称焼酎」と呼ばれます。ワインのボルドーやウイスキーのバーボン、ブランデーのコニャックなども「原産地呼称」の酒。「その土地で生まれ、育まれてきたものを産地指定することで、その原産地を国際的に保護すること」を目的に、世界貿易機構(WTO)のTRIPS協定よって認定されています。国際的な銘酒に認められた「産地呼称焼酎」は現在4つ。では、その一つである壱岐焼酎とはどんな酒でしょうか?

原産地である壱岐島は、卑弥呼の時代から大陸と交流があった島。焼酎作りが始まったのは16世紀頃。古くから米や大麦がよくとれる島でしたが、米は年貢として徴収されるため、島民の主食である大麦で焼酎は作られていました。一説には壱岐島は麦焼酎発祥の地、ともいわれています。

島で栽培した大麦に米麹、そしてミネラル豊富な島内の地下水を加えてもろみを造り、そのまま島内で蒸留して瓶詰。この伝統製法で作られたもののみが「壱岐焼酎」を語れます。その特徴は米麹からのふくよかな旨味、そして麦の香ばしさ。他の麦焼酎にはない、独特の深い味わいとコクが口内に広がります。

熊本の球磨焼酎

「球磨(くま)焼酎」とは、熊本県南部の人吉市を中心とした球磨地方で作られる米焼酎。広大な平野部、山々からの清らかな水が流れ込む球磨川を持つ人吉盆地を中心に、古くから米作りが盛んに行われてきました。自慢の米を使った焼酎作りが始まったのは、16世紀末。江戸時代、この地を納めていた肥後相良藩が地場産業として米焼酎作りを推奨したことにより、球磨地方は米焼酎の本場へと発展していきました。

「球磨焼酎」と名乗れるものは、地元の米と山の伏流水で仕込み、地元で蒸留、瓶詰したもののみ。伝統的にはアルコール30度以上で作り、それをストレートで飲むのが一般的だったそうですが、現在は他の焼酎の様に25度の銘柄もあります。瓶ごと冷やしてストレート、またはロックで純米酒のような香りと爽やかな味わいを楽しむもよし、あるいはお湯割りで米の甘みを味わうもよし。

さらに地元では「直燗(じきかん)」と呼ばれる飲み方も。球磨焼酎を「ガラ」と呼ばれる磁器製の酒器に入れ、直火で温めること約1分。「チョク」と呼ばれる杯に注いで、じっくり、しみじみ味わいましょう。

写真協力/熊本県

鹿児島の薩摩焼酎

薩摩と言えば鹿児島、鹿児島の特産といえばサツマイモ。この県産サツマイモと地元の水で仕込まれる焼酎が「薩摩焼酎」です。サツマイモを使った焼酎の誕生は、江戸中期。桜島の火山灰に覆われたシラス台地は米作りに適しておらず、薩摩藩はやせた土地でもよく育つサツマイモ栽培を奨励していました。古くは雑穀で作っていた焼酎造りも、貴重なお米を節約するという藩の狙いから、サツマイモを主原料としたものに。やがてサツマイモ仕込みが主流となり、今では100軒以上の蔵が芋焼酎を作る焼酎大国になりました。

まだまだ「芋焼酎は臭いがキツイ」というイメージを持つ人が少なくないようですが、それはすっかり過去のもの。昨今の薩摩焼酎は、「コガネセンガン」をはじめ良質な品種のサツマイモを新鮮なうちに仕込むことで、ほんのりとしたやさしい甘さ、そして心安らぐ香りがたのしめる酒になっています。

その特徴をより満喫するなら、やはりお湯割りで。また、予め焼酎を水で割ってしばらく寝かせてから味わう、鹿児島ならではの飲み方「前割り」もおすすめです。その場で作る水割りと違い、時間をかけてじっくり焼酎と水が馴染むため、口当たりがまろやかになり、薩摩焼酎の本来の味をより実感できます。そのままはもちろん、陶器製の伝統酒器「ヂョカ」に入れて直火で温め、ぬるめの燗に。「前割り」、「ヂョカ」、「ぬる燗」の3ワードは、「薩摩焼酎」とセットで覚えておきましょう。

写真協力/公益社団法人鹿児島県観光連盟

沖縄の泡盛焼酎

沖縄で作られる米焼酎「泡盛焼酎」も「産地呼称焼酎」の1つ。その製造は1470年頃の琉球王朝時代。シャム(現在のタイ)との交流で蒸留酒は伝来していましたが、その交流が廃れていく中、独自に作るようになったといわれています。

なにより「泡盛」というネーミングが独特。その由来も、かつて焼酎の原料が米と粟だったことで「粟盛り」の言葉が転じたとか、サンスクリット語で酒を意味する「アワムリ」からきている、またはアジア各地で酒の良し悪しを測るために酒を混ぜ、泡の盛りを見た、ということで「泡盛」、など諸説あるようです。

名前だけでなく、原料や製法も独特。他の米焼酎とは異なり、泡盛はタイ米(インディカ米)を使用し、ここに沖縄で生まれた黒麹を加えます。仕込み方も原料となる米を全て麹にし、一度に発酵させる「全麹仕込み」で。こうして生まれた泡盛は、タイ米によるバニラのような香り、さらに黒麹が生み出す少しビターな後味が特徴です。

飲み方としては冷たい水で割るのがおすすめで、ラフテーなどの沖縄料理との相性もピッタリ。また、このような食中酒には、蒸留して3年未満の「新酒(しんしゅ)」が飲まれますが、南蛮甕に入れ、3年以上寝かしたハレの日用の「古酒(クース)」もあります。熟成によって生まれた独特の香気とコク、そして深い味わいが特徴。小さな杯に注いで、そのままグイッとどうぞ。中には貯蔵数十年という超「古酒」もあるとか。出合ったら、ぜひ味わいたいですね。

写真協力/沖縄観光情報

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