パブ文化を生んだイギリスとアイルランドのビール

パブ文化を生んだイギリスとアイルランドのビール

  • 更新日:

イギリスのビールの歴史

イギリスにビールが伝わったのは紀元前1世紀頃といわれています。6世紀の終わり頃には、ローマ教皇グレゴリウス1世が布教目的で修道院と共に醸造所を建設したのをきっかけに、広まったそうです。

9世紀には「エールハウス」という居酒屋が広がります。一方では、主婦による自家醸造も盛んにおこなわれ、一家の収入源だったそうです。主婦がエールハウスを経営することもあり、エールワイフという言葉も生まれました。

中世の都市の発展につれ、12世紀頃には専業のビール醸造業者が現れます。修道院でも盛んにビール醸造は行われ、ビールはますます一般の人々に浸透していきます。

イギリスでは、ホップの代わりにハーブを使用して醸造するグルートが主流でした。15世紀に入り、ホップの使用が許可されましたが、当時はホップを添加したものを「ビール」、グルートを使用したものを「エール」と呼んで区別していたそうです。ホップを使用したビールがイギリスで普及するのは17世紀に入ってから。その頃になって、エール作りにもホップを使う醸造者が増えていきました。

1630年頃には造られていたといわれるのが、ペールエールです。1722年には、2種類のブラウンエールとペールエールをブレンドした「エンタイア」というポータービールを売り出し、大ヒット! 1778年にはギネス社がスタウトポーターを発売、のちにスタウトと呼ばれるようになります。スタウトとは「強い」という意味で、麦芽もホップもポーター以上に使用していました。

19世紀になるとペールエールがビールの主流になります。また、衰退するポーターの変わりに、スタウトが人気を得ます。

パブってどんなところ?

イギリスやアイルランドでは、ビールをパブで飲む習慣が根づいています。では、パブとはどんな場所でしょうか? パブとは、「パブリックハウス」の略。飲み屋というよりも社交場のような場所です。また、パブの醍醐味といわれるのが、カスクコンディションのビール。カスクコンディションとは、樽(カスク)の中で二次発酵を行ってビールの状態を整えること。カスクコンディションのビールは、リアルエールとも呼ばれます。

カスクコンディションのビールは、醸造所で作られた後、ろ過や熱処理されずカスクに詰められ、酵母が残ったまま店に運ばれます。二次発酵が続いたまま店で管理、熟成され、飲みごろに開栓されますが、飲みごろの見極めは各パブの腕の見せどころです。

カスクコンディションのビールは、炭酸ガスを加えていません。発酵でできる二酸化炭素のみが溶け込んでいるため、やさしい味わいがたのしめるのです。基本的にこのカスクコンディションのビールはイギリスのパブでしか味わうことができません。しかし。日本でもほんの一握りのマニアックな専門店でたのしむことができるようになりました。気になる人は、調べてみる価値がありそうですよ。

読者の方に、東京でも素晴らしい状態のリアルエール(カスクコンディション)がリーズナブルにたのしめるお店をいくつか紹介しましょう。


英国ではリアルエールを汲み上げるハンドポンプのことをBEER ENGINEと呼ぶんだそう。 JR中央線の高円寺にある「Beer Engine(ビアエンジン)」のカウンターには8本のタップが並んでいますが、そのうち5本が炭酸ガスの圧力を借りずにハンドポンプで注がれるリアルエール! 他のお店でも飲める銘柄もありますが、ここで飲むとまったく別物のコンディション。しかも良心的プライス! リアルエール好きの方、まだ飲んだ事がない方、素晴らしいリアルエールをたのしんでみませんか?

もし満席で入れないときは、すぐ近くに「高円寺 麦酒工房」「CRAFT BEER MARKET高円寺店 (クラフトビアマーケット)」など、リーズナブルにクラフトビールをたのしめるお店があるので大丈夫です!

Bikeworldtravel/shutterstock.com

イギリスの代表的なエールビール

イギリスとアイルランドのビールといえば、エールビールが主流。エールとは、下面発酵より高めの温度で発酵する香り高いビールのこと。下面発酵で作られる爽快な香りのラガーと違った華やかな香りが特徴です。香りを楽しむために、少し高めの9度から常温くらいが適温といわれています。
ここではイギリスの代表的なエールビールを紹介します。

◆イングリッシュ・ペールエール/
バートン・オン・トレントで生まれた黄金色から銅色の中濃色ビール。フルーティな香りと苦味が特徴です。

◆インディア・ペールエール(IPA)/
イギリスから支配地のインドへ船でビールを輸送していた18世紀末頃、暑く長い船旅での腐敗防止のため大量にホップを入れた結果、香りや苦味が際立ったビールが生まれました。それがインディア・ペールエール。強いホップの苦味が特徴です。

◆ブラウンエール/
ニューキャッスルで生まれた茶色のビール。アルコール度数も4.0~5.5度と比較的低め。ペールエールの苦味に対抗して作られたこともあり、ホップの苦味は弱く、モルトの風味がはっきりしています。

◆ポーター/
18世紀初めにロンドンで人気のあったブレンドビールをお手本にして作ったビール。荷運びする人(ポーター)に人気があるビールだったためこの名前になったといわれます。ホップの苦味が若干強く、モルトの甘味が感じられます。

◆スコッチ・エール/
スコットランドのエディンバラでつくられるアルコール度数6.2~8.0度と高めのビール。やや強めの苦味とカラメル風な甘味があります。ベルギービールに対抗して作られたもの。

◆スコティッシュ・エール/
スコットランドで伝統的に作られていたビール。アルコール度数は3.0~5.0度。ホップの苦味は弱く、飲み疲れないビール。

◆バーレイワイン/
バーレイ(大麦)で作るワインのようなフルーティーで芳醇なビールという意味。アルコール度数は7.5~12度と高め。長期間熟成するタイプのため、黄金色から暗褐色のしっかりした味わい。

比較的アルコール度数が高いビールもあるので飲む量に気をつけながら、パブで地元の人が飲むようにゆっくり味わいたいですね。

eugenegurkov/shutterstock.com

アイルランドのおもなエールビール

アイルランドの代表的なスタイルはスタウト。地域によって少しずつ味わいは異なり、その土地の風土にあったスタウトが存在します。
ここではアイルランドの代表的なエールビールを紹介します。

◆スタウト/
イギリスのポーターがアイルランドで進化したビール。1778年にアーサー・ギネスが考案した「ギネス」は、麦芽化していない大麦をローストして使っているため、ホップの苦味とは違う独特の苦味と黒色を生み出しています。

◆アイリッシュ・レッドエール/
アイルランドで古くから親しまれている赤みを帯びた色合いのビール。ペールエールのひとつ。アルコール度数は4.0度ほど。ホップの香り、苦味とも弱く飲みやすい。

これぞアイルランドのビール、といえるスタウト。漆黒の外観と独特の苦味をたのしみたいですね。

Kirill Z/shutterstock.com

関連情報