ビール酵母とは? ビール造りに欠かせない酵母で栄養成分が豊富

ビール酵母とは? ビール造りに欠かせない酵母で栄養成分が豊富
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ビール酵母とは、ビール醸造に適した酵母のこと。さまざまな種類があり、ビールの味わいに多彩な魅力をもたらすだけでなく、近年ではその豊富な栄養成分に多方面から注目が集まっています。今回は、ビール酵母の役割や種類、栄養成分などを紹介します。

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ビールの発酵に使われるビール酵母が、さまざまな分野から注目を浴びているのを知っていますか? ビール酵母のビール造りにおける役割や栄養成分を確認しておきましょう。

ビール酵母とはどんなもの?

ビールの製造工程

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まずはビール酵母とはどんなものなのか、その概要をみていきます。

ビール酵母はビール造りに欠かせない酵母

酵母とは、ビールやパンなどの発酵の過程で使われる微生物のことです。
酵母のなかでも、長年ビール醸造に繰り返し使われるうちにビールに適した性質が備わったものを「ビール酵母」と呼んでいます。空気中などに存在する野生酵母が使われるビールもありますが、一般的なビールは、ビール酵母を使用して造られます。

ビール造りにおけるビール酵母の役割

ここでビールの製法をかんたんにおさらいしておきましょう。ビールは以下の手順で造られます。

1. 大麦を発芽させて麦芽をつくる「製麦工程」
2. 麦芽から麦汁をつくる「仕込工程」
3. アルコールと炭酸ガスを生み出す「発酵工程」
4. ビール熟成させ、風味を特徴づける「貯酒工程」
5. にごりを取り除き、品質を安定させる「ろ過工程」
6. びんや缶、樽などの容器に詰める「パッケージング工程」


ビール酵母は、3. の「発酵工程」で麦汁に加えられ、麦汁に含まれる糖分を分解してアルコールと炭酸ガス(二酸化炭素)を生成します。
ビール酵母は増殖する際にアミノ酸を必要としますが、これが発酵の過程で、ビールの香りや味わいに影響を与える副生成物に変わります。

発酵、熟成(貯酒)が終わったあともビール酵母は生きていますが、容器に詰めたあとも発酵が進んでしまうとビールの味が変わってしまう可能性があるため、通常は5. の「ろ過工程」で酵母を取り除くか、「熱処理」を行って酵母のはたらきを止めます。

ビールの発酵

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ビール酵母には種類がある

ビール酵母は、「下面発酵酵母」と「上面発酵酵母」の2種類に大別されます。

「下面発酵酵母」は「ラガー酵母」とも呼ばれ、ラガービールの醸造に使われます。発酵温度は約10度。発酵期間はやや長めで、発酵が進むと沈殿するのが特徴です。「下面発酵酵母」を使用したビールはシャープな飲み口になります。

一方「上面発酵酵母」は「エール酵母」とも呼ばれ、エールビールの醸造に使われます。発酵温度は15~25度、発酵期間は3~5日と比較的短めで、発酵の工程で生成される炭酸ガスとともに表面に浮き上がります。副産物が多く、フルーティーな香りで奥深い味のビールを生み出すのが特徴です。

ひとくちに「ラガー酵母」「エール酵母」といっても多彩なビール酵母があり、選ぶ種類によってビールの味わいは変わります。

ビール酵母が健康・美容食品の原材料に使われる理由

ビール酵母が注目される理由

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ビールの発酵に使われたビール酵母は、豊富な栄養成分を含んでいることから、健康や美容などの分野において注目を浴びています。

気になる成分についてみていきましょう。

ビタミンやミネラル、アミノ酸、食物繊維など栄養成分が豊富

ビール酵母にはもともとたくさんの栄養成分が含まれていますが、発酵段階で麦汁に加えられたビール酵母は、麦汁に含まれる豊富な栄養成分を吸収しながらアルコールと炭酸ガス、副産物などを生成していきます。

役目を終えたビール酵母は、ろ過によってビールから取り除かれますが、このとき回収されたビール酵母は麦汁から取り込んだ栄養成分をたっぷり蓄えています。

◇ビタミンB群
◇ミネラル類
◇アミノ酸(必須アミノ酸を含む)
◇食物繊維

などが、ビール酵母に含まれるおもな栄養成分です。

発酵液から回収された酵母は、次のビール造りで再利用されることもありますが、近年では健康・美容分野における研究が進み、サプリメントやペットフード、化粧品として商品化されるケースが増えています。

ビール酵母に期待される効果

shironagasukujira / PIXTA(ピクスタ)

ビール酵母由来の栄養成分について

ビール酵母由来の栄養成分についてくわしくみていきましょう。

◇ビタミンB群
バランスよく摂取することで、糖質や脂質、タンパク質のエネルギー代謝を高めてくれます。不足すると疲労の原因となるため、しっかり補給することが大切です。

◇ミネラル類
ビール酵母にはカルシウムやリン、カリウム、鉄分など、豊富なミネラルが含まれています。
カルシウムとリンは骨や歯の形成に欠かせない成分です。また、カリウムは細胞内液の浸透圧を調整し、塩分を摂りすぎたときなどはナトリウムを排出に役立ちます。
鉄分は血液中の酸素を運搬する人の体に不可欠な成分。不足すると貧血を引き起こします。

◇アミノ酸
アミノ酸はタンパク質を構成する成分で、20種類あるうち1種類でも欠けるとタンパク質を合成できません。うち9種類は必須アミノ酸と呼ばれ、体内で作ることができないため食事などから摂取する必要があります。

人間の体は、そのほとんどがタンパク質でできています。筋肉や臓器、皮ふ、骨、爪、毛髪も主成分はタンパク質です。不足すると、筋力が低下したり太りやすくなるばかりか、肌のハリやツヤが失われたり、薄毛の原因になることもあるといいます。体型や若々しさを保つためにも、タンパク質の構成要素であるアミノ酸はしっかり摂っておきたいですね。

◇食物繊維
ビール酵母には食物繊維も含まれています。食物繊維は便通を整える作用が認められているほか、脂質や糖、ナトリウムなどを体外に排出するはたらきがあるといわれています。

ほかにも、ビール酵母には核酸などが含まれていて、新陳代謝の促進効果や免疫力の向上、美肌や美髪に有効ではないかといわれています。

(参考)
厚生労働省 e-ヘルスネット I栄養・食生活 / 栄養素と食品成分

生きているビール酵母をそのまま残した無ろ過のビールとは

ビール酵母を残した無ろ過ビール

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前述したように、熟成(貯酒)を終えたビールは、一定の品質を保つべく、ろ過によってビール酵母を除去するか、熱処理を行ってビール酵母を死滅させるのが一般的ですが、ろ過や熱処理を行わずにパッケージングされる場合があります。

このように、生きたままの酵母をそのまま残したビールを「無ろ過(無濾過)ビール」または「無ろ過・非加熱処理(非熱処理)ビール」といいます。

ビール酵母のはたらきを止めずに出荷されるビールには、以下のようなメリットがあります。

<無ろ過ビールのメリット>
◇豊富な栄養成分がそのまま残っている
◇一般的なビールにはないコクがある
◇フルーティーな香りなど、酵母由来の風味がたのしめる


一方、無ろ過・非加熱処理のビールにはデメリットも挙げられます。

<無ろ過ビールのデメリット>
◇容器のなかで発酵が続いているため、賞味期限が短い
◇時間が経つと風味が変化するおそれがある


ろ過や熱処理を行った一般的なビールには残っていないビール酵母が、無ろ過ビールでは生きたまま活動を続けています。ビール酵母由来の多くの栄養成分を摂取できるのであれば、賞味期限の短さはたいした問題ではないかもしれません。

ビール酵母は5度以下の低温に保つことで活動を休止させられます。購入後はすぐに冷蔵庫にいれ、なるべく早めに飲みきるのが、無ろ過ビールをおいしくたのしむ秘訣といえるでしょう。

「無ろ過ビール」といってもさまざまなビアスタイルがあり、味わいも千差万別です。さらに詳しく知りたい人は、以下の記事を参考にしてください。

ビールの発酵段階で使われ、役目を終えたビール酵母には麦汁から吸収した栄養成分が豊富に含まれています。サプリメントや化粧品の原料として、注目度が高まっているので、興味がある人は取り入れてみてください。おいしく栄養成分を取り入れたいなら、無ろ過ビールを試すのもおすすめです。

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