今夜も、お酒を、楽しく飲みたい 日本の酒景365

あなたの街の居酒屋で、隣の街の小洒落たバーで。
誰もが名を知るチェーン店から、名も無き小さな路地裏の店まで。
日本全国津々浦々、あらゆる街の、あらゆる酒場で、
毎日毎夜生まれては消えていく、
お酒がとりもつ一瞬の景色を切り取ります。

ぢどり屋 神田店 気取らない雰囲気で本格的な地鶏料理と地酒を楽しむ

▲ 果実味豊かなオーストラリア産の赤ワイン「ビルヤラ カベルネソーヴィニョン」。ローストされた肉料理とも合う。

鹿児島直送の地鶏が主役! 伝統の味を引き継いだ地鶏料理が味わえる

「ぢどり屋」と言っても、串に刺さった“焼き鳥”が出てくるお店ではない。毎日、鹿児島から空輸される新鮮地鶏をメインとした、本格的な鶏料理の専門店だ。

本店である博多中洲の「ぢどり屋」は、1975年創業。博多っ子の舌を満足させるオリジナリティある料理が人気となり、2001年からフランチャイズ展開をスタート。現在は全国に19店舗。「ぢどり屋 神田店」もその一つとして、本場伝統の味を引き継いでいる。

都内のオフィス街で九州の名物料理に舌鼓

「ぢどり屋 神田店」は、神田駅から小川町方面へ徒歩7分ほど。お店は飲食ビルの4階にある。“くの字”に曲がったカウンターと、広々とした間取りのテーブル席。5階は団体客用の広いお座敷席となる。ボトルキープされた焼酎の瓶がきちんと並べられ、気取りのないシンプルで落ち着いた雰囲気だ。カウンターからは、ガラス越しに調理場が見えて、豪快にあがる炎に魅せられる。

ぢどり屋では九州のさまざまな名物料理が味わえる。九州ときたら焼酎……ではあるが、最近は日本酒をオーダーするお客さんも増えているそう。お店では厳選された銘酒が1合ボトルのシリーズで8種類あり、「全種類を制覇しようとするお客さんも多いんですよ」とお店のスタッフ。

▲ カウンターには人気の焼酎が並ぶ。一升瓶でボトルキープする常連さんも。

看板メニューの炭火のもも焼を味比べするのも楽しい

▲ 1合瓶のシリーズは少しずつ味わえるので、飲み比べするのに最適。

ポン酢と柚子胡椒でいただく、もも肉の「たたき」は、ぜひ味わいたい名物料理のひとつ。炭火でサッと炙ったもも肉はプリプリとした弾力があり、噛むとしっかりとした肉の旨味を感じる。ピリッとした柚子胡椒がよいアクセントとなり、お酒が進む一品だ。

さっそく1合瓶シリーズの「澤乃井 本醸造大辛口」を合わせてみる。ラベルには「男酒」とあるが、その名の通り、キリッと引き締まったシンプルで清冽な味わい。香りもスッキリなので、炭の香ばしさが生きる。秩父古生層から湧き出る中硬水で仕込まれ、独特のキレのあるコシの強さを出している。

お店の看板メニューである「炭火のもも焼」は、調理場の炭火で焼いたものとぢどり屋特製の鉄板に乗せて自前で焼く2種類が選べる。同じ部位でも、焼き方次第で全く違う味わいになるので、その感動をぜひ試してみてほしい。

▲ 直火で炭焼きしたもも肉。香ばしく旨味が凝縮され、噛むほどにコクがでる。

特製の鉄板で焼いた肉は、表面がパリッとして中がジューシー。この特製の鉄板は、表面がギザギザで鉄板同士の間に隙間がある。鉄板に触れる部分と直火にあたる部分があることで、絶妙な焼き具合になるのだそう。

さらに、鉄板は真ん中を中心に湾曲しているので、余分な脂が端に流れる。周りは受け皿のように囲まれていて、鶏の脂が溜まる仕組み。その脂にニラをつけて焼くのが、また絶品なのだ。ちょっと変化球だが、果実味のある赤ワイン「ビルヤラ カベルネソーヴィニョン」もジューシーな肉の旨味にぴったり。濃厚だが口当たりもいい。

▲ 鶏から出た脂で焼いたニラが香ばしく、食欲をそそる。

水炊きや鶏のすき焼きなど、鶏を使った鍋料理も人気だ。秋冬以外は季節外れに感じるが、佐賀県嬉野の温泉水と一緒に豆腐を煮込む「温泉豆腐」は季節を問わない。

豆腐の入った温泉水が煮えてくると煮汁が豆乳色になり、豆腐はトロトロのふわふわに。お米の旨味を感じるまろやかな「会津ほまれ 純米酒 レトロラベル」がよいお供となる。豆腐を食べ尽くしたら、同じ煮汁で鶏のしゃぶしゃぶをして、鶏の出汁がでたところで雑炊やうどん…と余すとこなく楽しめるのも人気のひみつだろう。

▲ 写真左・アツアツの豆腐には、キリッとした冷酒がぴったり。写真右・鶏肉は出汁にサッとくぐらせて、野菜と一緒にタレでいただく。

本場の味を守る職人技で九州人に愛される店

調理場で腕をふるうのは、この道20年という店主の小沼敏郎さん。鶏をさばくところから焼くところまで、すべてひとりで手がける。「火加減が一番難しいですね。シンプルなだけに経験が必要なんです」と小沼さん。新鮮な地鶏はもちろんだが、素材の美味しさを十分引き出すのも、職人の腕があってこそ。

▲ カウンターの中央から、炭火を焼く手さばきが間近で見られて迫力満点。

「ぢどり屋 神田店」は、今の場所に移動したのが4年前、その前は、7年間神田のガード下にお店があり、その頃からの常連客もいる。お店をスタートして11年、小沼さん自身も福岡出身ということもあってか、常連客も九州地方出身の方が多いとか。「九州の方は同郷同士の繋がりが強いんです。一度気に入ってくれたお客さんが、次にまた同郷の方を連れて来てくれて…というパターンが多いですね」と小沼さん。

地方の郷土料理の店を謳っていても、実際行ってみるとちょっと違う…という経験は、誰にでもあるはず。東京にいて、地方の名物料理を本場に近い味で食べられるお店は、貴重。伝統の味を引き継ぐ小沼さんの職人技に、同郷の常連客も厚い信頼を寄せているのだろう。郷土料理の素朴な美味しさに舌鼓を打ち、時間を忘れて仲間と杯を重ねる、そんな風景が見られるお店だ。

▲ あたたかみのある店内は、くつろいだ気分でお酒を楽しめる空間。

  • ほまれ酒造

    会津ほまれ 純米酒
    レトロラベル

    180ml

  • 小澤酒造

    澤乃井 本醸造大辛口
    レトロラベル

    180ml

  • ウルフブラス

    ビルヤラ
    カベルネソーヴィニョン

    750ml

今回訪ねたお店

ぢどり屋 神田店

東京都千代田区神田司町2-17

あけぼのビル4・5F

03-5282-4677

月〜金17:00〜23:00(L.O.22:30)

土   17:00〜22:00(L.O.21:30)

定休日:日曜・祝日