旨い酒処に、旨い肴あり 日本まるごと 地酒×地肴

第7回 茨城県・吉久保酒造
第7回 茨城県・吉久保酒造 地元で愛され、世界で愛されたい。「水戸らしさ」と「チームならでは」を詰め込んで。
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冬晴れの穏やかな午後。千波湖(せんばこ)は広大な水戸のオアシス。「県庁所在地の町にこれだけの場所があるなんてとても贅沢ですよね」(東さん)。

酒蔵から車で10分も行けば、水戸の名所・偕楽園(かいらくえん)に辿りつく。しかし酒造りを見た後なら散策したいのはその周辺に広がる千波湖。水の戸と書くだけに、この地は水の都でもある。千波湖を見れば酒造りに欠かせない水が豊富であることが分かる。市民の憩いと潤いの場でもあり、豊かな水を感じさせてくれる場所。ますます夜のお酒が楽しみになる。

巨大な光圀像が千波湖から見つめるものは?

さて、今夜の地肴を楽しむ場として吉久保社長が推薦したのは、『たのしいお酒.jp』の『六酒仙』にも登場いただいている酒場の達人・吉田類さんも訪れた人情酒場。切り盛りするのは女将さんを筆頭に、60代70代のおかあさんたち。吉久保社長はこの店にずいぶん長く通っているというが
「間違いなくうまいです。うちの酒もいつもあるし、いい店ですよ。でもね、さっき東さんが僕たちのことをかっこいい海賊団なんてほめてくれましたけど、それでいえばここは、超大物の女海賊団の隠れ家。『あんた、なにやってんの!』なんてずいぶん叱られましたよ(笑)」
まさに、地元の人情酒場。
東さん、その言葉を聞いて、腰が引けると思いきや、若い海賊団を叱りとばすという女将さんに会うのにむしろわくわくという様子。

手前が噂の女海賊団の大ボス(失礼!)。素敵な笑顔で迎え入れてくれた女将さんが仕込んでいるのは、意外にもアヒージョ。新しいメニューにも意欲的。

水戸が初冬の夕闇に包まれる頃、年季の入った赤い大きな提灯に灯がともる。
社長とともに仕事の手をしばし止めてくれた5人も女海賊の隠れ家、いや、人情酒場に集合。まずは、『しろうさぎ 特別純米酒 生酒』で乾杯。やさしい口当たりと飲み口で仕事の疲れを癒し、緊張がほどける。ほどけるのだが「酛(もと)屋」の添田さんから
「お酒では気分はほどけますけど、ふだん、こんな近くに東さんのような美女はいないんで緊張がほどけません」とポツリと。「あたしがいるじゃないか!」という女将さんの罵声が飛ばないかひやひやしつつ、「しろうさぎ」がすすんでいく。
次第に東さんも、リラックスした表情に。

まずはお女将さんにごあいさつしつつカウンターで乾杯。18歳はもちろんウーロン茶で。

「では、そろそろ水戸の名物を食べますか」という社長の采配で運ばれてきたのは、かつおの刺身。東さんは「水戸でかつお?ちょっと結びつきません」と不思議そうな表情。社長は、ここに水戸の気質との関係があると紹介する。
「水戸の昔の人たちは、カツオを生で食べることを、自分たちの心意気を表すものとしてやっていたようです。足の早い食べ物の代表的なものだったんでしょうね。その伝統で水戸ではカツオの刺身が好まれますけど、今は単に美味しいから食べていますね(笑)」
水戸といえばよく言われるのは、「理屈っぽい、怒りっぽい、骨っぽい」の3ぽい気質。水戸藩士から受け継がれるという、水戸流の男気だ。

水戸気質のエピソードを聞きながら、かつおの刺身に舌鼓。怒りっぽいようには見えないが、東さんも酒造りの現場での骨っぽさは実感。

「それから味の濃いものもあえていきますね。うめぼしに醤油をかけてわざび。ひどいでしょ(笑)。でもこれが意外とはまるし、うちの酒にも、ばっちりあう」
おそるおそるうめぼしのつまみに箸をつける東さん。
「???? あれ? 意外とさっぱりしていて美味しい」
そして、吉久保酒造の『純米吟醸 一品』を
「お、おぉー。合う! 合います! え、えっ〜」
東さんの驚きに、「海賊団」も、「女海賊団」もしてやったりと笑顔。

意外な組み合わせのメニューに驚いた東さんも最後には箸もグラスも止まらなくなる。ちなみに持っているグラスは茨城県酒造組合オリジナル日本酒グラス。描かれた山の高さで注がれた量が分かるなどの粋な工夫が随所に

「まずは地元で愛される酒、笑顔になってもらえる酒。これを造るのが僕らの喜びなんですよ。そこから日本、世界に広がっていければ」という社長。
地元の高校の卒業生。年代は違っても同じ想いを共有できる仲間たちと挑むものづくり。1年中顔をつきあわせているからこそできることがある。

40歳の杜氏・鈴木さんと18歳の新人・軍地さんが酒席の間に一瞬見せた真剣な表情。いつも一緒にいるからこそ伝わるものがある。

「酒蔵で見たスピード溢れる場面、呼吸がぴったり合った場面。あの一体感も、このチームワークから生まれるんですね」と東さん。
杜氏の鈴木さんが続ける。
「ビジョンを共有できているんだと思います。こういう酒を造るんだと決まると、全員が同じ方向を向いて酒造りができる。ブレずに新しいチャレンジもできる。僕だけは体育会系ではないですが(笑)、このチームでよかったなと実感しています」

「家族以上に一緒にいる関係。酒蔵の濃厚な時間と酒蔵ではないゆるやかな時間、どちらも充実している。

「地元で愛され、地元で愛されている酒で世界でも愛されたい。それが真の地酒のありかた」。
その思いで、ひとつになる。ひとつになれる。
水戸発の心優しい若き海賊団。彼らが水戸という母港から進むブルーオーシャンは、美しく、広大だ。

最後に、さらなる挑戦に向けて乾杯!

吉久保酒造

しろうさぎ 特別純米酒 生酒
1800ml

米と米麹のみで醸し、米の旨みをすっきりとした辛口で楽しめるお酒。 吉久保酒造チームが思い描いた優しくロマンティックな世界。料理と一緒に楽しめる穏やかな飲み口も特徴です。

詳細はこちら

蔵しぼり生酒 風流人(ふうりゅうびと) 特別純米酒
720ml

米の旨みを楽しめる辛口の日本酒。
お料理と一緒に楽しめる香り穏やかな食中酒です。

詳細はこちら

純米吟醸 一品
1800ml

山田錦を50%精米。繊細すぎず、ほど良く、心地良く、芳醇な香りが広がります。
きめこまやかな口当たりと喉越し、さらりと切れていく余韻のあと、
しっかり飲み応えも感じられます。

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今回の旅人東美樹

ひがし・みき 福岡県出身のタレント、WOWOW「WOWOWぷらすと」などのエンターテイメント番組をはじめ、旅番組などへの出演でも活躍中。海外への留学経験から英語も堪能で、海外ミュージシャンへのインタビューも難なくこなす。オーガニック料理ソムリエの資格を有し、ヨガや乗馬、ダイビングを愛するスポーツ好きの一面も。BSフジ「スーパーフォーミュラ」2017年ピットレポーター。レギュラー出演中※第1戦~第7戦まで生中継。