旨い酒処に、旨い肴あり 日本まるごと 地酒×地肴
第6回 秋田県・秋田清酒

第6回 秋田県・秋田清酒 一瞬で酔わせる。余韻でも酔わせる。大曲の職人が魅せる、心と技にまた酔う。

大曲の花火師集団『和火屋』の皆さんと。酒造りとも共通する職人たちの誇り。その様子は、前半の動画とあわせてどうぞ。

大曲といえば花火。毎年、夏の終わりに大曲で開催される『 全国花火競技大会 』は、長岡、土浦とともに「日本三大花火大会」とも呼ばれ、その中でも「最も権威のある大会」とも評されている。全国からトップどころの花火師たちが集結し、その腕を競いあう大イベントだ。、日本酒の世界に強く興味を持つようになったタレントの東美樹(ひがしみき)さん。次にもっと知りたいと考えたのが、米と水。そう、日本酒の大切な原料について。

この大会期間だけではなく、大曲では、毎月のように花火イベントが開催され、毎日、街のどこかで試し打ちの花火があがるという。この地において花火は、水、米とともに大いなる誇りであり、くらしと産業を支える大切な宝物でもある。

危険な材料を扱うための細心さと度胸。大空に花開く瞬間を思い描きながらの辛抱強い作業が続く。

この権威あるイベントで優勝した経験を持ち、オープニングを飾る花火も演出する花火師集団『和火屋』。ここは 秋田清酒 に訪問する前に、タレントの東美樹さんが訪れたかった場所だ。

「精米されて削られた米糠が、花火の紙を張り合わせる糊に使われていると聞きました。地域の大切な資源が循環していることに興味を感じました。」

そう、この米糠を使った糊は、接着力も強く、乾きが早く、コストも安いという。さらに、上空で花開いたあとは、落下して土に還っていく。サスティナブルという最近よく聞く横文字を使わなくともいい。それはこの地の伝統として息づいてきたのだ。「俺たちが使っているもの、道具にしても材料にしても、どこにでも売っているもんじゃないんです。できるだけ工夫をして、地元のものも使っていく。それも俺たちの仕事です」という花火師さんの言葉も頼もしい。

米粕が接着剤に。酒から花火へと米の力が引き継がれていく。「お酒もたくさん召し上がるんですか?」という質問に「いやぁ、酒と女性には弱いんですよ」と照れ笑いの会長。

「考えてみれば…」と東さん。「確かにお酒も花火も、華やかに開いて、そしてすぐに消えていって、でも余韻と思い出は残る。なんだか共通する世界があるようです」としみじみ。

夕暮れの秋田の秋風は少しひんやり。ここからは、郷土料理を秋田清酒のお酒でたのしむ時間だ。秋田清酒の伊藤社長と大曲駅近くの『和台所 花』へ向かう。

テーブルに運ばれる郷土料理は、「いぶりがっこ」や「きりたんぽ」、「比内地鶏の塩焼き」といった全国的に知られたものから、なれ寿司の一種である「ハタハタ寿司」に「川がに味噌」、「ヤツメウナギ」などの珍味までさまざま。

序盤はこのとりあわせから。田舎味噌とかに味噌を和えた「川がに味噌」は、大曲の春と秋の訪れを告げる風物詩でもある。川がにの味噌自体は、春はあっさりとした風味で、秋はこってりと脂がのる。

最初の取り合わせは、先ほど蔵でいただいた『出羽鶴 松倉』といぶりがっこ。「おつけものなのに、みずみずしくてシャキシャキしてます!」と東さんが驚いた花さんのいぶりがっこ。『松倉』の熟成感とスモーキーなテイストが見事な相性を見せ、大吟醸では負けてしまういぶりがっこ、この濃い芳香にも、特別純米の松倉なら絶妙なバランスでマッチする。

東さんも意外な組み合わせに喜びの声。「蔵でいただいたときの松倉のよさと、今、郷土料理と合わせていただく松倉のよさ、どちらも好きです!」

「川がに味噌のかぼちゃのポタージュのような濃厚なクリーミーさに、松倉の優しいまったり感がとてもいいですねぇ」と満足気な東さん。

伊藤社長が次に提案するのは『刈穂 吟醸酒 六舟』とハタハタ寿司との組み合わせ。「ハタハタは秋田の県民魚的存在。ぜひ味わっていただきたいです」。前編で紹介したように『出羽鶴』とは違う蔵、違う水を使う『刈穂』。その水はすでに味わった東さん。さてお酒の方は…

改めて刈穂の水をじっくりと味わう。

六舟とハタハタ寿司の組み合わせ。口当たり、歯ざわり、旨みのコラボレーション。

「香りがしっかりしています! でもドライで、癖がなくすーっと体に入っていきますね。先ほどの『出羽鶴』がまろやかなら、こちらはさっぱりでしょうか?」との東さんの感想に、伊藤社長は「水の力で、お酒の旨みを閉じ込めていますので、キレがいいんです」と笑顔。「お酒のきれいな酸味と、あとから溢れ出てくる旨み。これと、ハタハタ寿司の甘酸っぱさと、噛むごとに出てくる旨みとの相性も抜群ですね」。東さんは、言葉もお酒も、そして箸も止まらない。

女将さんの軽快な秋田弁トークでたのしいきりたんぽの時間へ。この地の秋の恵みが一堂に集結。

メインは郷土料理のきりたんぽ。そしてお酒は『北の醸し家 純米吟醸生酒』へ。「東さん、実はこのお酒は、今年の春に初めて造った、新しい自信作なんですよ。加熱殺菌していない、蔵で搾りたての生酒を飲むのと同じような感覚でたのしんでいただこうというお酒です」と伊藤社長がボトルをテーブルに置くと、「うわー、かわいらしい、ユニークなラベルですね!」と東さんはまずそのルックスに注目しつつ、眼を輝かせて注がれるのを待つ。

社長のお話、『北の醸し家』、きりたんぽの三位一体で、豊かな時間が流れていく。

待ちきれない様子で香りを確かめ、そして一口。「香りが甘やかで、その甘やかさが華やかに広がりますね。そのあとにしっかりお酒の強さを感じられて、それが、とろっとゆるやかな舌触りとともに、体にしみ込んでいきます。あぁ、余韻でも、香りが鮮やかに広がる。これ、女性が好きな味わいのような気がします」と東さん。

「伊藤社長はちょっと驚きの表情。「実はこの酒は、2015年、秋田で生まれた『 AKITA雪国酵母 』という酵母を使っているのですが、この開発にかかわったのが女性研究員なんです。感じられるんですねぇ」

東さんも驚いた様子。「そうなんですか! それにしても特別な酵母を使ったりしながらの新しい挑戦。いろいろご苦労もされたのではないでしょうか?」

「はい、3月後半に搾ったものを、1年中、生酒として発売するためには、品質保持が難しいんです。味が変わっちゃったらダメ。とにかく低温、0℃よりも少し低い温度で品質を守る。そのために米も酵母も考え抜きました」(伊藤社長)

社長自身が「北の醸し家」。お酒に関してはつい話も熱気を帯びる。

かわいらしいラベルに込められた蔵人の思い。秋田の米、秋田の水、秋田の酵母で挑戦する。その名のとおり、北の醸し人の努力と情熱がそこにあった。伊藤社長の話を聞きながら味わうきりたんぽは、秋田では1年中食べられる郷土料理のように思われるが、実は、この時期が旬。新米が収穫できたことを祝い、きのこ、野菜など秋の味覚とともにたっぷりと味わう。つまりは祝祭の料理でもある。

出汁と具の旨みを吸い込んだきりたんぽはもちもち、ほくほく。それを頬張り、『北の醸し家 純米吟醸生酒』を味わう東さん。

「食事の邪魔をしないだけではなく、それぞれの食材を引き立てるお酒ですね。新米の季節、お酒造りのはじまりと、美味しいきりたんぽ。その土地の素晴らしい季節に、その土地のお酒と料理をいただいて、その土地の魅力を知る。いい旅ですよね。幸せしかない」。静かに語りながら、もう1杯。

すっかりお酒と大曲の美味にはまった東さん。温かく、楽しい時間は続く。

秋田清酒

北の醸し家 純米吟醸生酒
1800ml

料理を引き立てるなめらかで引き締まった香味とのど越しが特徴。秋田の風土ならではの長期低温発酵で米の旨みを醸し出します。

秋田清酒

蔵しぼり生酒 風の奏鳴曲(ソナタ) 純米吟醸
720ml

グラスを傾ける楽しみを感じさせるフレッシュな香りと口当たり、料理の味わいを引き立てるなめらかで引き締まった香味とのど越しが特徴。

秋田清酒

刈穂 吟醸酒 六舟
720ml

地場の酒米を丁寧に磨き、独自の中硬水で醸した淡麗で、きめ細かな旨味をのせた吟醸酒です。
伝統の六つの酒槽じっくりと搾りました。

秋田清酒

出羽鶴 松倉
720ml

無農薬あきたこまちを全量使うという意欲作。米本来の力強さ、生命力、旨みを引き出すことに注力し、秋田の米の魅力、大曲の土地の豊かさを感じられる1本に仕上げられています。

今回の旅人 東美樹

ひがし・みき 福岡県出身のタレント、WOWOW「WOWOWぷらすと」などのエンターテイメント番組をはじめ、旅番組などへの出演でも活躍中。海外への留学経験から英語も堪能で、海外ミュージシャンへのインタビューも難なくこなす。オーガニック料理ソムリエの資格を有し、ヨガや乗馬、ダイビングを愛するスポーツ好きの一面も。BSフジ「スーパーフォーミュラ」2017年ピットレポーター。レギュラー出演中※第1戦~第7戦まで生中継。