旨い酒処に、旨い肴あり 日本まるごと 地酒×地肴
第5回 島根県・李白酒造

第5回 松江の夜は心地良く。地肴から音楽まで、李白と楽しむ幸せな時間。

国宝松江城を擁する松江城山公園に佇む明治時代の洋館『興雲閣』。そのホールにて。和と洋が織りなす世界も松江の特徴。

「ずっと一人で訪れたいと思っていた街。そのひとつが松江だったんです」というタレントの東美樹(ひがしみき)さん。その念願の松江で、まずは当地のお酒「 李白 」の酒蔵を見学。李白酒造、田中社長の酒造りへの並々ならぬ情熱に触れ、より深く「李白」を知りたくなってしまった東さん、夜に再び田中社長と食事をしながら日本酒について教えていただく約束をし、ひとまず松江の街を歩いてみることに。

何はともあれ、まずは腹ごしらえから。ということで、田中社長おすすめの『 きがる 』にて、島根名物の割子そばをいただきます。東さん、その独特な食べ方にも、味にも大満足。「おそば自体もおいしいし、そば湯を飲んでこんなに美味しいって思ったのははじめて」と興奮しきり。

そばつゆをかけて食するのが割子そばのスタイル。李白のお酒とあわせて楽しめば、三段ともぺろり。

その後は、2015年に国宝指定された、松江のシンボルとも言える松江城や興雲閣、塩見縄手地区の武家屋敷を散策し、松江という土地に息づく空気をカラダに染み込ませていく。こちらも由緒ある茶室、明々庵では、美しい庭を眺めながら松江のもう一つの名物とも言える和菓子とお茶をいただく。街並みを楽しみ、お茶を楽しみ、その豊かな文化と歴史を堪能。しばし忙しい日常を忘れ、秋の堀端を抜けるやわらかな風を感じながら歩く。

松江城、武家屋敷、お茶の時間。築城以来、戦いよりも文化を選んで生きてきた、いにしえの松江の人々の営みが息づいているようだ。東さんもいつしか時間を忘れて…。

夕刻、田中社長が用意してくれた席は『はる』。以前は鮨屋で、現在は女将さんがそのまま小料理屋として引き継いだ。「小さい頃から、家族で鮨を食べに来るのはここでした」と田中社長も安心しておすすめする李白との関係も長いお店だ。こちらに、特別にいろいろなお酒を持ち込んで東さんの「日本酒の楽しみ方、海外を含む知人へのおススメの仕方を教えていただきたい」というリクエストに応えていただくことに。では、ここからはお二人の会話で。

「美味しく日本酒を飲む前に、ちょっと喉を潤したいですよね」と、どちらからともなくビールをチョイス。田中社長も日本酒だけでなく様々なお酒を楽しんでいる。それがまた酒造りのヒントにもなる。

田中社長:「いろいろな種類のお酒を飲む際に、高いものを最後に注文する傾向ってありますよね。ワインなどでもコースに合わせてだんだん重く、しっかりしたものとなって、最後にその日で一番高いものをオーダー。でも、日本酒の場合、食事に合わせるとすると、最初にお浸しや刺身など、繊細なものが登場するので、そこにあわせて繊細な、よい酒を飲む方が適しています。まあ、深まってくるとせっかくいいお酒なのに、飲みすぎて覚えていないということもありますのでね(苦笑)」

東さん:「確かに(笑)。それでは、李白さんで試飲した中だと…月下獨酌!」

田中社長:「そうですね。私も月下獨酌からはじめたい」
笑顔の田中社長。その『月下獨酌』にあわせるのは、松江ではよく知られた白身の高級魚「カナ」。関東ではマハタと呼ばれる魚のお造りだ。

子供のころから田中社長を知る女将さんの采配で松江の美味がリズムよく登場。カナのお造りと月下獨酌。軽やかながら贅沢な夜が始まる。

東さん:「お醤油が2種類ありますね?」

田中社長:「甘みのあるたまり醤油と、関東の方にもなじみの普通の醤油ですね。月下獨酌のような香り豊かな大吟醸でしたら、普通のお醤油が合いますね」

東さん:「うわー、このお魚、コリコリとした歯ざわりで、余韻はとてもエレガント。月下獨酌と合わせるととても心地良いです。このお酒、大事な人と…例えば両親とじっくり飲みたいなって思います」

田中社長:「シーンとお酒の関係もいいですね。では、今度は、同じお造りで生姜や葱となどの薬味とあわせて、秋限定の特別純米 ひやおろしを楽しみましょう」

東さん:「おなじお料理をいろいろなお酒とあわせるとキャラクターが見えてきてたのしいです!」

田中社長:「こちらのイカの麹漬け焼も、ひやおろしが合いますね。また、『やまたのおろち』の燗酒もおもしろい」

二人のお酒と食事のマリアージュ談義は止まらない。

多彩な料理に合わせてお酒を選ぶどうやら東さん、田中社長のナビゲートによって日本酒の楽しみ方に開眼し始めたようだ。

田中社長:「今度は『空月』。こちらは今年新たに作った生酒で、『李白 特別純米酒 生酒』という名で、一升瓶でも提供しています。

東さん:「ラベルがとても素敵です」

田中社長:「そうですね。デザインはまかせていたんですが、とてもいい仕上がりで、私も気に入っています。さて、飲んだ感じはいかがですか?」

東さん:「やわらかくてすっと入ってきます。それから酸味が爽やか。蔵での試飲でも感じたのですが、やはり食中にとてもあうお酒ですね」
田中社長:「この味わいは洋食でもあうと思うんですよ」

東さん:「確かに!トマトやオニオンのしっかりと酸味のあるマリネとあわせても美味しいと思います」

田中社長:「それはうれしい提案ですね。やっぱり、東さん、本質的なところでお酒の味を理解してらっしゃる。では、東さんは外国人の知人も多いということで、李白の2つの海外ブランドも飲んでいただきましょう」

ここで登場したのが純米吟醸の『ワンダリングポエット~Wandering Poet』。今や、李白酒造の海外ブランドの主力だが、和訳すれば、さすらいの詩人。もともと屋号となった李白は放浪の詩人。酒を飲み、詩を綴って生きたその人生へのオマージュともいえるのがこのお酒だ。

そしてもうひとつは、特別純米のにごり酒『ドリーミークラウド~Dreamy clouds』。こちらは、夢心地の雲、とでも訳すべきか。この夢心地の雲を作るのは蔵人。そう、「くらうど」も、飲む方の笑顔を広げることを夢見て。東さんはこのにごり酒で少々夢見心地に。

『ドリーミークラウド』という名のとおりの夢見心地なふわふわ感に驚く東さん。そしてこの後、盃も会話も止まらなくなる。

東さん:「名前がポップでキャッチーですよね。にごりという言葉よりもいいですし、おいしいです、これ…。これは女友達と飲みたいですね」

田中社長:「料理は幅広くいけます。スパイスやハーブをきかせた焼き魚などでも」

東さん:「軽やかでふわふわなテイスト。あ、たこ焼きパーティもいいかも。ふわふわ感が合うし、チーズを入れたりしてもいいなぁ」

料理、シーンと来て、二人の会話は東さんの仕事でもあり趣味でもある音楽の話へ。

東さん:「例えばアメリカの人気ポップアーティスト、ケイティ・ペリーの『Last Friday Night (T.G.I.F.)』を聞きながら金曜日の夜に女友達とドリーミークラウド。『Firework』を聞きながらワンダリングポエット…。イメージが広がります!」

田中社長:「そういう女子会にいってみたいなあ。もちろんお酒を持ってですよ(笑)」

東さん:「今日と同じラインナップで、ぜひお願いしたいです(笑)」

この日、二人が楽しんだ李白のお酒たち。

田中社長:「李白に出会ってなければ私はろくでもない人間になっていたかもしれません。勉強嫌い。たまたま出会った漫画がきっかけで、醸造学を学ぶために大学へ行きましたが、私から日本酒を取ったらただのつまらない人間になる自信がある(苦笑)。でもそんな自分でも、日本酒にたまたま出会ってぶつかってくれた人に、日本酒を、李白を好きになっていただきたいですし、そうなるようにがんばっていきたいと思っています」

東さん:「貪欲に酒造りに取り組まれて、海外を含めてファン拡大にもがんばっていらっしゃる。私の酒蔵デビュー、そしていつか訪問したかった松江をおいしく、楽しく堪能できてうれしかったです」

地元で愛される地元料理。取材途中から押し寄せてきた常連さんが肩の力を抜いて楽しんでいる声も、味のあるBGM。

松江名物の飾らないおでんや、しじみの赤出汁など、酒に合う料理を堪能しお店を出れば、ほろ酔いの頬に、やさしい宍道湖からの涼風。静かな松江の空の月を見上げれば、つい、さすらいの詩人よろしく、一遍の詩が浮かびそうな気分。もう1杯、月下獨酌に戻るのも悪くないな。月を見上げる東さんの顔には、そう書いてあったように見えました。

李白酒造

蔵しぼり生酒 空月 特別純米酒
720ml

李白の酒造りの哲学をそのままに、月夜をあしらった美しいラベルがテーブルを美しく飾ります。心地良い酸味でイタリアンなど洋食にも合います。

李白酒造

李白 特別純米酒 生酒
1800ml

酒造好適米「五百万石」を低温でじっくり醸した生酒。
味とフレッシュな味わいがバランス良く、のど越しの良いお酒です。

李白酒造

特別純米 辛口 やまたのおろち
720ml

「八つの頭を持つ大蛇を酔いつぶした」という出雲神話をモチーフにした、すっきりとしながらも旨みを味わえるお酒です。冷やからぬる燗まで楽しめます。

李白酒造

李白 大吟醸 月下獨酌
720ml

「山田錦」を38%まで研ぎ込み、低温長期発酵させた鑑評会出品クラスの大吟醸酒です。穏やかな香り、繊細な旨み。キレながらも優しい余韻が心地良く感じられます。

今回の旅人 東美樹

ひがし・みき 福岡県出身のタレント、WOWOW「WOWOWぷらすと」などのエンターテイメント番組をはじめ、旅番組などへの出演でも活躍中。海外への留学経験から英語も堪能で、海外ミュージシャンへのインタビューも難なくこなす。オーガニック料理ソムリエの資格を有し、ヨガや乗馬、ダイビングを愛するスポーツ好きの一面も。BSフジ「スーパーフォーミュラ」2017年ピットレポーター。レギュラー出演中※第1戦~第7戦まで生中継。