旨い酒処に、旨い肴あり 日本まるごと 地酒×地肴

第5回 島根県・李白酒造
第5回 伝統の重みと、若い息吹。神々の地から世界へと放つ、酒造りの意地。
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柔らかい風が吹く、宍道湖のほとりを散策する東美樹さん。

「普段よく飲むのは焼酎とワイン。でも最近、日本酒の魅力を知りたいと強く思うようになって…」というタレントの東美樹(ひがしみき)さん。その理由は、自身の留学や、海外の旅レポ、世界中のビッグネームが集結するロックフェスのレポーターなどを通じて出会った、外国人の知人が多いことから。

お酒という文化を通じて、日本の伝統と挑戦を海外の人々にも知らせたい。そのためには自分自身が日本酒のことをもっと知りたい。ならば、訪問先はここ、島根、松江の李白酒造。明治時代に創業。先代の遺志を継ぎながら、意欲的に世界へ羽ばたく、若き社長、田中裕一郎さんが率いる蔵元だ。

古きよき時代の面影を残す松江の街。李白酒造の建物も、また、松江の街の顔の一つ。

「日本酒の酒蔵訪問は初めて」という東さん。精米所、井戸、麹室、貯蔵タンク、そのすべてに興味津々。最初に田中社長にご案内いただいた精米所でも、質問したいことが多すぎて、当初予定していた時間をはるかにオーバーするほどの熱の入りよう。

 精米所では、島根県産の酒米『五百万石』を使うプライドや、米の研ぎ方もあえてトレンドに逆らい「削り過ぎない」という選択をした経緯について、また井戸では、日本酒と水の関係、松江の文化と歴史における水の重要性などと様々なお話を伺う。

日本酒の知識があまりなかったという東さんも、田中社長の言葉の端々から感じられる酒造りへの情熱を通じて、その難しさと喜びを徐々に感じていく。

鮮やかに磨かれていく米、今も保存されている大切な井戸。ひとつずつ酒造りに触れていく東さん。

中でも東さんが興味を抱いたのは「守るべき伝統と変えるべきこと。その2つがある」ということ。

 洗米や蒸米という行程で、1分、いや1秒まで正確に、緻密に品質をコントロールするためには、自動化、IT化することが最適な方法だという田中社長。適切な温度管理にも最新技術の導入と設備投資は必須。確かにそこには多くの人が今なお日本酒作りに抱いている「伝統」のイメージはないかもしれない。

洗米の道具に触れながら、今と昔の酒造りの苦労を聞く。

 「しかし」と田中社長は語る。「やみくもに変えているわけではないんです。昔の職人の皆さんがやりたくてもできなかったこと。それがたくさんあった。温度管理にしても昔の設備ではコントロールしきれない。洗米にしても重労働の割にはムラが出てしまうこともあったと思います。それが今は、できる。情報量も圧倒的にある。つまり、今、酒造りをしている私たちが、昔の杜氏さんや酒造りに関わっていた人よりも、ちゃんとした酒造りができなきゃアカンのですよ」。

 田中社長の父親である先代社長をはじめ、先人たちが賢明に続けてきた酒造り。今の時代の自分たちが終わらせてはいけない。だからこそアクセルを踏むのだという。

「私、いまだに日本酒の蔵元さんって皆さん、ふんどし姿でお仕事されているのかと思ってました」と笑う東さんに田中さんも笑顔。東さんが若手の奥村さんに声をかける。「皆さん、お揃いのかっこいいポロシャツ。なんだか蔵の雰囲気も元気でいいですね」。

「はい。このポロシャツ、すごく気にいってます」と奥村さん。「社長は、とにかく酒造りを続けていきたい。そのためには僕たちのような若い世代の人間でもきちんと酒造りができるようにと努力されています。一握りの杜氏さんだけに頼っていてはダメなんですよね」と社長の心意気を代弁する。

これからの李白を支えていく一人、奥村さんとともに。社長がデザインしたおそろいのポロシャツには海外を意識する蔵元らしい英語でのポエムも。

「勘やセンスは大切です。それを生かした酒があっていい。李白も昔ながらの良いものは残す。でも、日本酒の伝統を残すためにも、李白をブランドとして残すためにも、新しい世代の人たちが同じ品質のものを造れるようにする。それが私の仕事でもあると思っています」と田中社長。

 東さんも改めて周囲を見渡し、「最新の機器がある一方で、アナログな道具ややり方も残されていて、モノづくりとしてとても面白いですね!」と感心。「あ、あの蒸米を計る温度計とかですね。デジタルでもいいんでしょうけど、どうしてもヴィジュアル的に安心感があって(笑)」。伝統と進取、その両面を追及する田中社長。

古くからの道具と最新鋭の機器、精密なデータと長年の勘。相反する要素が融合するのが李白の酒造りだ。

「ただ、暴走しすぎているのかなあ、という心配はいつもあって。一番怖い夢は、先代が枕元に立って『体調戻ってきたから、また社長をやろうかな』っていうもの。いや、今戻ってこられたらむちゃくちゃやっているから激怒されるだろうなって、冷や汗ですよ。でもこれがまた、よく見るんですよ(苦笑)」。(田中社長)

 とはいえ、実は先代も伝統と進取の人。李白が積極的に推進する海外への展開も先代の遺志のひとつ。「最初は25年前の香港。それからフランスのワインイベントへの出展なども続けてきて、現在、アメリカでは全米50州すべてで流通しています。李白の売上の3割は海外なんです」(田中社長)。

 東さんも「それなら海外の知人にも紹介しやすいですね」と笑顔。李白の歴史を振り返れば、昭和3年、若槻礼次郎元首相にその名を命名され、氏自身がロンドンでの大切な国際会議の際に李白を持ち込んだという物語があり、当時から海外との接点はあるお酒。伝統へのこだわりとこれからへの挑戦。神々の国島根から世界へと、その想いを現在でも広げている。

李白の歴史をひしひしと感じる東さん。若槻礼次郎元首相から贈呈された見事な書も、伝統の重みを感じさせてくれる。

ひととおり蔵を見せていただいた後は、お待ちかねの試飲。このほど新たに作られた「蔵しぼり生酒 空月 特別純米酒」や、李白を象徴する一本とも言える「特別純米 辛口 やまたのおろち」、「李白 大吟醸 月下獨酌」などをいただく。

蔵見学のあとはやはり試飲。思わずこぼれる笑みは、お気に入りと出会った証拠。

東さんの好みは、「月下獨酌」。「でも、食事が進んでくると飲みたくなるのは、『空月』かも」。田中社長も、この一言に、「東さん、相当お酒の味わかってますね」と満足げ。そこで東さんからこんな提案が。「李白のモノづくりの面白さは海外の友人に話しても理解してもらえるし、喜んでくれると思います。あとは、どうやってこのお酒を楽しめばいいのか、社長にアドバイスをいただきたいです」。

 田中社長、もちろんこの提案を快諾。「では、李白のお酒を飲みつつ、食事やシーンと合わせた楽しみ方を、私のお気に入りのお店でお話ししましょう。お酒のことを知る上で、松江の食文化についても知っていただきたいですし」。

 ということで、後編では、『空月』や『月下獨酌』をはじめとした「李白のお酒×社長直伝の楽しみ方」を紹介します。

試飲した李白のラインナップを前に、東さんはいい酒との出会いに、田中社長は東さんからのうれしいコメントに、まさに「ご満悦」という表情。

李白酒造

蔵しぼり生酒 空月 特別純米酒
720ml

李白の酒造りの哲学をそのままに、月夜をあしらった美しいラベルがテーブルを美しく飾ります。心地良い酸味でイタリアンなど洋食にも合います。

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李白酒造

李白 特別純米酒 生酒
1800ml

酒造好適米「五百万石」を低温でじっくり醸した生酒。
旨味とフレッシュな味わいがバランス良く、のど越しの良いお酒です。

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李白酒造

特別純米 辛口 やまたのおろち
720ml

「八つの頭を持つ大蛇を酔いつぶした」という出雲神話をモチーフにした、すっきりとしながらも旨みを味わえるお酒です。冷やからぬる燗まで楽しめます。

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李白酒造

李白 大吟醸 月下獨酌
720ml

「山田錦」を38%まで研ぎ込み、低温長期発酵させた鑑評会出品クラスの大吟醸酒です。穏やかな香り、繊細な旨み。キレながらも優しい余韻が心地良く感じられます。

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今回の旅人東美樹

ひがし・みき 福岡県出身のタレント、WOWOW「WOWOWぷらすと」などのエンターテイメント番組をはじめ、旅番組などへの出演でも活躍中。海外への留学経験から英語も堪能で、海外ミュージシャンへのインタビューも難なくこなす。オーガニック料理ソムリエの資格を有し、ヨガや乗馬、ダイビングを愛するスポーツ好きの一面も。BSフジ「スーパーフォーミュラ」2017年ピットレポーター。レギュラー出演中※第1戦~第7戦まで生中継。