旨い酒処に、旨い肴あり 日本まるごと 地酒×地肴
第4回 鹿児島県・さつま無双

第4回 全国に芋焼酎を広めた蔵の仕込み現場をいざ見学。

芋焼酎の魅力をより深く知るべく、鹿児島を訪れている東美樹さん。旅の初日は、観光名所の仙巌園を散策したのち、焼酎に使われるさつまいもの芋畑を見学。また、夜は鹿児島を代表する焼酎蔵、さつま無双のブレンダー、松元太さんと天文館の居酒屋「尚」で焼酎を飲み交わしながら、焼酎のおいしい飲み方や、土地のおいしい肴との合わせ方などを教えていただいた。

旅の2日目はいよいよ「さつま無双」の蔵へ、見学にうかがいます。

鹿児島湾に面した鹿児島地区に位置する「さつま無双」。先ほど、鹿児島を代表する、と説明したが、この蔵の歴史は、他の蔵のそれとは少し異なっている。

2000年代初頭に設立されたこの「無双蔵」には、直売店が併設されているが、この直売店のラインナップがとにかくすごい。「さつま無双」の自社製品はもちろん、鹿児島全土の蔵から集めた150以上の銘柄の他社製品の芋焼酎が並んでいるのだ。

この圧倒的な品揃えの理由は蔵の成り立ちにある。「さつま無双」の誕生は昭和41年。それまで鹿児島の、少なくとも九州の外では売れ行きどころか認知度さえも十分でなかった芋焼酎を日本中へ広めるために「鹿児島県酒造協同組合」が設立され、傘下に数多くの蔵が集まったのがきっかけだ。“鹿児島にふたつとない焼酎”を意味する「さつま無双」の名を付けられ売り出された芋焼酎は、いつしか鹿児島を代表する地の酒として全国に認知されるようになる。

その後訪れた焼酎ブームにも後押しされ、酒造協同組合に参加していた蔵々が自社ブランドの焼酎を全国で販売するようになると、「さつま無双」は当初の“焼酎を広める”ための集合体としての役割を終える。「さつま無双」単体としてのビジネスの規模も縮小、一時は商売自体を畳んでしまおうかという声もあったほどだと言う。

しかし2004年、岩元則之社長が就任。ここから、「さつま無双」の新たな歴史がスタートする。現在会長を務める岩元さんが、この「無双蔵」と直売店を設立、利幅の少ないプライベートブランド商品を廃止して、原酒のセレクトにこだわった商品造りを推し進め業績のV字回復を成し遂げたのだ。直売の割合を増加させることになったこの改革から生み出された「さつま無双 もぐら」や「さつま無双 黒さそり」などのプレミアム焼酎は、現在も高い人気を誇っている。

直売店に他社製品も大量に並べているのは、「鹿児島県酒造協同組合」のころの名残りであり、今再び鹿児島を代表するブランドであろうという「さつま無双」の気概といってもいいのかもしれない。

さて、見学のため蔵までやってきた東さん。この日は、特別に蔵の中まで入らせていただき、作業を見せていただくことになっているのだ。

焼酎作りの一日の作業は、朝一番に届くさつまいも(この日の仕込みに使われたのは黄金千貫)を選別しながら蒸し器へ送るところからはじまる。

続けて、麹に酵母と地下湧水を加えて酵母を培養する一次仕込みと、そこに蒸したサツマイモを加えて発酵させる二次仕込み。この行程で使われる46個の甕壺は、地中に埋めることで外気温の影響を受けにくくなり、品質を一定に保つことができるという。

訪れたこの日は、ちょうどこの年の芋の仕込み(二次仕込み)の初日、ということで、蒸しあげられ、粉砕された芋を加え櫂入れする作業を東さんもお手伝いさせていただくことになった。 「最初は大丈夫と思っていたけど、お芋がどんどん流れ込んできて重くなってきた…これは大変なお仕事ですね。」(東さん)

写真上・コンパクトなスペースの中に仕込みの設備が集約されている。手前に並ぶのが、二次仕込みの甕壺。写真中左・茹で上がった芋を食べてみる。「甘さは弱めだけど、さつまいもの味!」(東さん)写真中右・茹でられた芋が粉砕されてタンクに送り込まれる。写真下・コツを教わりながら、東さんも櫂入れ作業に参加。

蒸留には杉が香る木樽の単式蒸留器を使い、蒸気によって熱を加えて芋由来の甘みとまろやかな味を引き出す。蒸留が終わった原酒は素焼きの甕に詰められ、貯蔵・熟成の段階へ移っていく。熟成を終え、まろやかになった焼酎はその後、ブレンドしたり、加水することで味を整えられ、瓶詰めされてようやく製品になる。

写真左上、右上・木樽の蒸留器。ここでどんな作業が進んでいるのかを真剣に質問する東さん。写真下・こちらがしぼりたての原酒、”初垂れ”。

「蒸留の初期に蒸留器から垂れる焼酎の原酒を“初垂れ(はなたれ)”と呼ぶんですが、これがステンレスの桶と木桶では味わいが全然違うんです。うちの木桶の“初垂れ”を冷凍庫でキンキンに冷やすと、アルコール度数が高いので凍らずにトロットロになるんです。よろしければ試飲してみませんか?」
ブレンダー松元さんの言葉に導かれて、直売店に移動。いよいよお待ちかねの試飲タイムだ。

まずは、お話にあった“初垂れ”から。冷凍庫から取り出されたキンキンに冷えたボトルから小さなカップに注いでいただく。
「わ、本当だ!すごくトロッとしてますね。そのおかげか、アルコール度数が高いはずなのに、アルコールの香りよりも芋の香りを先に感じます!」(東さん)

続いて東さんが見つけたのが、透明のボトルに緑色の大きな葉っぱのラベルが貼られた「つわぶき紋次郎」。
「こんなきれいなデザインの焼酎があるんですね。贈り物にも喜ばれそう」と東さん。濃厚にして品の良い芋の香りとまろやかな旨味に「とってもきれいなお味で、クイクイ飲んでしまいます」(東さん)。「この焼酎は、昔はラベルがわりに本物のつわぶきの葉っぱを張っていたんですよ」と松元さんが教えてくれる。

芋焼酎好きの東さんへのおすすめとしてもう一種飲ませていただいたのが、紅さつまの焼き芋を原料に作る焼き芋焼酎「火焔山 紅」。「重厚さはあるけれどキリッとした味わいですね。香ばしい香りも漂って美味しい!」(東さん)

「昨日の夜いただいた『もぐら』はもちろん、『つわぶき紋次郎』も『火焔山 紅』も、すごく個性的で味わい深くて、びっくりしています。いままでも芋焼酎は好きだったけど、ますます深く知りたくなってしまいました!」(東さん)

“薩摩焼酎”と名付けられるほど、鹿児島の地の酒として浸透している芋焼酎について今回の旅を通して知り、見つめ、その魅力にどっぷりはまった東さん。鹿児島名物の「かるかん」や「地鶏炭火焼」などのお土産に加えて、数種類の芋焼酎を購入して東京への帰路についたのでした。

さつま無双

本格焼酎 芋焼酎 もぐら 荒濾過
720ml

黄金千貫芋(コガネセンガン)の特徴を最大限に生かし、芋の香りと甘みが心地よく感じられる人気の芋焼酎です。

さつま無双

つわぶき紋次郎
720ml

黒麹焼酎の特性の中でも特にまろやかな旨味が最大限に引き出された逸品です。

さつま無双

火焔山 紅
900ml

紅さつまの焼き芋を原料にした芋焼酎。焼き芋焼酎独特の濃縮された甘さとコクと香ばしさをご堪能いただけます。

今回の旅人 東美樹

ひがし・みき 鹿児島県生まれ、福岡県出身のタレント、WOWOW「WOWOWぷらすと」などのエンターテイメント番組をはじめ、旅番組などへの出演でも活躍中。海外への留学経験から英語も堪能で、海外ミュージシャンへのインタビューも難なくこなす。オーガニック料理ソムリエの資格を有し、ヨガや乗馬、ダイビングを愛するスポーツ好きの一面も。BSフジ「スーパーフォーミュラ」2017年ピットレポーター。レギュラー出演中※第1戦~第7戦まで生中継。