熱い人と、冷たいビールの物語 クラフトビール物語

Vol.8 「クラフトビールとは何か?」を改めて問う。多彩なビアスタイルを日本へ。伝統を守り、常識を超えていくグランドキリンの痛快を味わう

今や全国で作られるようになったクラフトビール。マイクロブルワリーと呼ばれる小さな醸造所から、コンビニにも商品が並ぶ大手まで、その一つ一つにビール造りの哲学があり、ビールに込めた愛がある。一杯のビールの味わいに詰めこまれた、造り手たちの熱い、熱い情熱の物語を追いかけて、日本各地のブルワリーをめぐります。

  • facebook
  • twitter

キリンビール滋賀工場で、グランドキリンにかける職人たちの誇りと取組みを目の当たりにした藤原さん。場所を彦根駅前のバルに移し、マスターブリュワーの田山さんとグランドキリンを酌み交わしながら、自然と「そもそもクラフトビールとはなんぞや」という深いテーマに入っていく。

▲まずは乾杯。さあ、ビールの達人同士のたのしい火花が散る瞬間か。

藤原さん:グランドキリンは味、香り、口あたりなど、ハーモニーが素晴らしいですね。甘み、旨みも存分に感じられます。
田山さん:一般的なたのしみ方でいえば、ビールに香りなんてあったっけ? 結局喉越しじゃない?
という方も多くて、そこにひとつ壁はあるのかなとは思いますが、多くの方にこうしたハーモニーを感じていただければと思います。
藤原さん:さて、クラフトビールの定義というのを改めて考えてみましょう。「トラディショナル(伝統)」「インディペンデント(独立)」「スモール(小規模)」というのが一般的ですかね。僕はそこに「ストーリー(物語)」というのを加えたい。
田山さん:スモールといってもアメリカの規模と比較すると…
藤原さん:キリンさんでもアメリカの定義だとスモールですからね(笑)。小さくてコツコツやっているからといってそれだけでクラフトではない。うまいビール、ちゃんとしたビールを造らなければ、それはクラフトビールではないでしょう。そしてそこにはそのためのビール造りの物語があるはずです。

▲少し温度を上げて、専用グラスで味わう。クラフトビールがもたらす大人の豊かな時間だ。グラスの絞った部分でリチャージ(泡が再度立ち上がる)され、ホップの香りと麦芽の旨みのハーモニーを堪能できる。リチャージの瞬間の音までたのしい。

田山さん:トラディショナルという部分では、伝統に敬意を払うのはクラフトの良さですが、一方でクリエイティブに挑戦していくこともクラフトの良さだと思うんです。敬意を払いつつ、そこから何をしていくのか。
藤原さん:僕は物心ついたときから絵が好きでした。伝統的なものの模写も尊いものだけれど、それだけでは自分の作品にはならない。そのビールは「自分の作品」といえるのか?まずはその問いかけが大切だと思うんです。
田山さん:道を究める際に「守・破・離」という考え方があると思います。まず「守」というところからすべて始まる。それは先人たちが築いてきたものを謙虚に捉え、習得すること。その次に「破」がある。これは自分なりの新しいチャレンジ。そして、最終的に、別次元の何かを生む「離」に到達する。そこで誰にもできないオリジナルな作品を生み出せるのではないかと思うんです。造るときの自分なりの思い、本当に表現したいことは、「守・破・離」の考え方で初めて実現できるんじゃないかと、若い連中ともディスカッションしています。

▲グランドキリンの裏ラベルに書かれた顔は、実は田山さんのイラスト。ご本人は「なんでこんなことしちゃったのか。恥ずかしいですよ」と照れ笑いだが、藤原さんは「これも物語じゃないですか」と笑顔。

藤原さん:グランドキリンはまさにそうして生まれたビール。作品としての自由度が高い。でも偶然できましたというものでもない。年中ビールのことを考えて、考えて、考え抜いた人たちが集まって、こだわって生まれたまさしくクラフトビールでしょう。どこにいっても、何をやっても、何を食べても、ビールのこと考えている。ギタリストもずーっとギター触ってるでしょう? だからいい作品になる。物語がありますよ。
田山さん:四六時中ビールのことを考えている奴が造っているのがクラフトビール。それはわかりやすい考え方ですね。
藤原さん:そうだ。さきほどの「守・破・離」をグランドキリンに当てはめるとどういうことになりますか?

田山さん:「守」はIPA(インディアペールエール)的であること。そしてラガーのよさをハイブリッドしたIPL(インディアペールラガー)であること。これはやや「破」かもしれませんが(笑)。そこで、苦味、香りが強すぎて飲みやすさが損なわれ、たくさん飲めないという部分を、より飲みやすくしていくのが「破」。トライアル&エラーでしたが、日本人の繊細な味覚に合うものがようやくできたかなと思います。
藤原さん:それに滋賀工場の皆さんを始め、いろいろな皆さんが取り組んだわけですね。物語ですよ、それは。
田山さん:みんな愚直に、製造ラインから積み上げて、ディスカッションを重ねて…。一人だけでできることではありません。
藤原さん:ある意味、クラフトビールのイメージというのは過激なものと捉えられがちですね。それはクラフトビールが広がる最初の段階で印象的だったから。パンクミュージックがはやったときでもロンドンの人たちがみんな過激だったわけじゃないですよね。同じようにクラフトビールの会社が4,000社あって、みんながアバンギャルドなことをやっているわけではない。
田山さん:過激さを競うというか、エクストリーム競争は存在しています。それも楽しいのかもしれないですが、醸造のプロとしての立場からすれば、そこからは距離を置きたい。

藤原さん:過激さを競う競争の中で偶然できたものじゃダメなんですよ。さて、グランドキリンに対して僕が思うのは、今後もどんどんいろんな銘柄を出していって欲しいということ。いろんなスタイルを日本に広めて欲しいんです。絵画でいえばまだ多くの人は印象派しか知らない。日本のビールはそういう現状だと思う。ポップアートも欲しい。多彩なスタイルを提案していただければ。
田山さん:試行錯誤しています。親しみを持ってさまざまなビアスタイルを知っていただきたい。ネーミングも含めてそれをグランドキリンの限定では、楽しみながらやっていきたい。
藤原さん:飲むほうもビアスタイルの原理主義に陥ってはいけない。残念ながらそういう傾向があるけれど、本来はもっと広いものですから。
田山さん:ヴァイツェンと銘打てば、これはヴァイツェンじゃないという声があがる。でも、それぞれ好きなヴァイツェンがあっていい。グランドキリン本体の進化もあわせて、原理主義ではないビアスタイルを広げて、クラフトビールをもっとたのしんでいただきたいですね。
藤原さん:そう、ビアスタイルなんてのは後からカテゴライズされたもの。ぜひ、IPAならぬGKS、グランドキリンスタイルを広げていってください!

▲ 熱い会話の後は冷えたビールとうまいメシ。この店自慢のラムチョップのハーバルな風味ときれいで甘い脂はグランドキリンと相性もぴったり。最後はクラフトビールの今後を祝して固い握手でフィナーレ。

撮影協力
彦根バル やぶや食堂

「居酒屋感覚で洋食の文化を地元に広げたい」というコンセプトの食堂。気軽にフレンチ、イタリアン、スペインなど多彩な料理とお酒が堪能できる。カジュアルな立ち飲み、落ち着けるテーブルと、気分やシーンに応じて使い分けることができる。
※通常メニューにグランドキリンはありません。


グランドキリン

330ml

ホップの味わいを最大限に引き出す独自の「ディップホップ」製法を採用。
選び抜いた素材と革新的手法の組み合わせで、クラフトビールの新しいカタチを提案する
キリンの自信作。

詳細はこちら

※掲載されているグランドキリンは、2016年12月時点の商品となります。
※2017年3月28日に『グランドキリン』の商品名・味覚・パッケージをリニューアルいたします。また包装形態を12本ハーフトレイ(シュリンクフィルム)から12本ケースカートンに変更いたします。

  • facebook
  • twitter
藤原ヒロユキ

今回の旅人 藤原ヒロユキ

ふじわら・ひろゆき ビアジャーナリスト、ビール評論家、イラストレーター。1958年生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。季刊「ビール王国」編集主幹。ビールに関する各種資格を取得、ワールドビアカップをはじめ欧米の国際ビアコンテストの審査員を務める。日本外国特派員協会会員。ビールにまつわる著書多数。主な著書に「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎)、「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド)など。