熱い人と、冷たいビールの物語 クラフトビール物語

Vol.8 「クラフトビールとは何か?」を改めて問う。規模の大小ではない。どこまで情熱を注ぎ、「作品」をつくりあげるか。グランドキリンに見る、クラフトの本質。

今や全国で作られるようになったクラフトビール。マイクロブルワリーと呼ばれる小さな醸造所から、コンビニにも商品が並ぶ大手まで、その一つ一つにビール造りの哲学があり、ビールに込めた愛がある。一杯のビールの味わいに詰めこまれた、造り手たちの熱い、熱い情熱の物語を追いかけて、日本各地のブルワリーをめぐります。

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藤原ヒロユキさんと訪ねるクラフトビール物語の旅。今回はキリンビール株式会社の滋賀工場へ。ゴクゴク飲み干すのではなくゆったりと味わう。ここはキリンがそんな「新しいビールとの付き合い方」を提示した『グランドキリン』が生まれる場所なのだが、藤原さんは、この『グランドキリン』に、今、日本において間違った認識で広がりつつある「クラフトビール」への問題提起があるという。それはなにか? この前編では、滋賀工場でビール造りに関わる人々の情熱を通じて、後編では、マスターブリュワーの田山智広さんとの対談で探っていこう。

▲旧知の仲である藤原さんと田山さん。熱く、しかしたのしいお二人のクラフトビール論は後編で。

冬の雨があがった彦根駅でJRを降り、琵琶湖のきらめきを感じながら訪れたキリンビール滋賀工場。清涼飲料水などを扱うキリンビバレッジの工場が併設された広大な敷地は、「甲子園10個分の面積です」という案内に、西の風を感じつつ、藤原さんははやる心を抑えてまずは誰でも入場できる見学コースへ。キリンビバレッジの工場と一緒に子供たちも気軽に訪れ、夏休みの自由研究のテーマにもしていってくれるという。
「きれいで、たのしい雰囲気ですね。こうやってビールと接点を持ってもらえるのはうれしいですよ。それ以上に、僕はこういう場所が好きだなあ」と笑顔の藤原さん。

▲ホップや麦芽をじかに触れるコーナーや音と映像でビールの原料について学ぶことができるアトラクションに感心しつ つ、見学者特典の一番搾り麦汁の試飲に笑顔。
▲プロもたのしめる見学コース。夢中になっているところで、田山さん登場。笑顔で握手のあとはすぐにビール談義。醸造タンクの美しいレイアウトを見ながら早くも藤原さんの質問攻めが始まる。

ここに、グランドキリンの開発を担当するマスターブリュワー 田山さんが合流。まずは現場で醸造を担当する守川斉利部長を交え、グランドキリンを造る上での現場の話に耳を傾ける。

普段は東京と滋賀と場所は離れているが、田山さんと守川さんの絆は強い。田山さんが
「こちらはマーケティングの目線を含めて、こういうビールを造りたいという要望を出す。それは現場では決して楽なことではないと思います。大変な苦労をしている。製品化に向けていつも助けてもらっています」と言えば守川さんも
「確かに、グランドキリンはホップの考え方も製法も違いますし、通常のビールに比べて少量多品種のため気を遣うところも違う。チャレンジすることが多い。確かに苦労は多いです(笑)。でも、だからこそこの仕事ができる滋賀工場にいることがたのしいですし、とてもやりがいを感じています」と返す。
お互いに立場も役割も課せられた使命も違うが、実は田山さんが入社直後に配属されたのが滋賀工場。守川さんは元々マーケティング部に所属。お互いの苦労と、また逆に可能性もわかっているからこその激論がそこにある。
「田山さんたちのやりたいこともわかるから、やれない、という前にとことん話し合います。」という守川さんの力強い言葉に、藤原さんは頼もしそうに頷いた。
「規模の大小だけでクラフトか否かを語る風潮がありますけど、そうじゃないんです。大事なのは本当に美味しいビールのために真摯に取り組んでいるのか、自分の作品にしているのか。お二人にはそれがありますね」

▲言葉一つひとつの中にビール造りの情熱があふれ出す守川さん。滋賀工場の醸造家は、グランドキリン専用の機器は手造りで組み立てた。最新鋭の工場の中でも職人魂を忘れない。

麦芽本来の香りへのこだわりやホップの可能性への挑戦。こうした「中身」へのこだわりも、実はボトルの形状の計算や衛生管理の徹底などが怠られると台無しになりかねない。グランドキリンのもうひとつの注目ポイントはパッケージだ。それを担当する片山利彦さんにもお話を聞いた。

▲ 片山さんから、洗浄、壜詰め、ラベル貼り、出荷までの一連の作業の説明を受ける。徹底した衛生管理、品質管理に驚く藤原さん。

「パッケージングのラインとしてはグランドキリンも他のビールも一緒です。しかし、グランドキリンの壜は国内最軽量(140g)と軽く、高さも違い、飲み口の口径も広い。それをどう、正確に、安全に、スピードを落とさずできるか、ということを徹底的に考えました」と片山さん。

▲ ラベルの材質、糊付けの仕方が変わればそれ用に部品も揃える。軽量化された壜を割らずに、傷つけずに送っていくラインもグランドキリン用にカスタマイズされたもの。造るだけではなく、いかにお客さまに安全に安心してお届けできるか。

醸造過程で理想的なビールができたとしても、それだけでは完成品とはいえない。飲み口のサイズの違いだけで、一度に喉に流れる量、広がるアロマ、口あたりの柔らかさなどに驚くほどの違いが出る。そこまでこだわり、徹底するからこそ藤原さんが言うところの「作品」となる。パッケージは作品の重要な一部なのだ。藤原さんがよく口にする「クラフトを規模で語るべからず」、「クラフトだからモノによってぶれがあっててもいいということにはならない」という言葉は、この行程を見ると実に重く感じることができる。職人たちが、それぞれの立場、役割で徹底的にビールという作品作りに取り組む。大手だから小規模だからということではなく、今やれることのすべてをビールに注ぎ込む。これが、クラフトビールの魂でもある。

▲ オートマティック化された大規模なラインも、随所に職人魂が込められた集合体。片山さんの話を聞くとそれがよくわかる。整然と出荷準備に進むグランドキリンの完成品を感慨深く見つめる藤原さん。

「ここに至るまでにはもしかしたら音をあげそうな局面もあったかもしれませんね。でも、グランドキリンはこうあるべき、ということで皆さんが一体となってがんばっていらっしゃる。それを目の当たりにしてから飲むグランドキリンはまた格別でしょうね。早く飲みたくなってきましたよ」
ビール造りの情熱に敬意を抱きつつ、その熱気で喉も心地良く渇いてきた藤原さん。場所を移して、今度はグランドキリンを飲みながら、田山さんと改めて、クラフトビール論をぶつけあう。
その様子は後編で。

▲きれいにパッキングされたグランドキリン。クラフトビールにかける人たちの想いが結実して、ここから全国に旅立っていく。

グランドキリン

330ml

ホップの味わいを最大限に引き出す独自の「ディップホップ」製法を採用。
選び抜いた素材と革新的手法の組み合わせで、クラフトビールの新しいカタチを提案する
キリンの自信作。

詳細はこちら

※掲載されているグランドキリンは、2016年12月時点の商品となります。
※2017年3月28日に『グランドキリン』の商品名・味覚・パッケージをリニューアルいたします。また包装形態を12本ハーフトレイ(シュリンクフィルム)から12本ケースカートンに変更いたします。

(>後編へつづく)

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藤原ヒロユキ

今回の旅人 藤原ヒロユキ

ふじわら・ひろゆき ビアジャーナリスト、ビール評論家、イラストレーター。1958年生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てフリーのイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、一般社団法人 日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。季刊「ビール王国」編集主幹。ビールに関する各種資格を取得、ワールドビアカップをはじめ欧米の国際ビアコンテストの審査員を務める。日本外国特派員協会会員。ビールにまつわる著書多数。主な著書に「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎)、「BEER HAND BOOK」(ステレオサウンド)など。